2005年 No.47 火山の概況 (平成17年11月18日 〜 平成17年11月24日)

【噴火が観測された火山】

桜 島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等は観測されなかった。

(*:桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。)

諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
18日、19日及び23日に噴火が観測された。

【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】

十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
山頂火口内の高温状態、火山性地震及び火山性微動のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いている。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内では熱的活動のやや活発な状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
火口縁を超える噴気が時折観測されており、火山活動はやや活発な状態が続いている。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)


注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
 ◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
 ◇:その他記事を掲載した火山
 □:記事を掲載していないレベル対象火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
   その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山。◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山。◇:その他記事を掲載した火山。

● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 前期間の15日に体に感じない微小な火山性地震が一時的に増加した(日回数179回)。今期間も18日に日回数が29回となるなどやや多い状態が続いた。震源は山頂ドーム直下の浅部(深さ1km付近)と推定され、樽前山で通常発生している場所である。
 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていたと推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。また、山麓の高感度カメラ1)で捉えられる程度の微弱な火映が時々観測されており、火口内は依然として高温状態が続いていると推定される。
 21日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり200〜600トン(前回11月8日500〜1,000トン)とやや多い状態が続いている。
 火山性地震は19日夜からやや多い状態となり、20〜23日の地震回数は1日あたり54〜70回で推移した。火山性微動はやや多い状態が続いており1日あたり0〜6回であった。

1) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。
 22日に上空から行った観測2)では、火口内の最高温度は約270℃(赤外熱映像装置3)による)と依然として高温状態が続いていた(前回11月17日約200℃)。二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,700〜5,200トンと依然として多量の火山ガスの放出が続いている(前回11月17日5,600〜6,300トン)。また、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 期間中の火山性地震は、19日以降一時的な増加が時折みられ、地震回数は21日に日回数が38回となるなどやや多い状態であった。火山性微動は観測されなかった。

2) 東京消防庁の協力による。

3) 赤外放射温度計及び赤外熱映像装置は、物体が放射する赤外線を感知して温度もしくは温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 阿蘇山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 中岳第一火口(以下、火口)内では熱的活動のやや活発な状態が続いている。
 期間内は天候不良により現地観測が行えなかったため火口内の状況は不明であったが、25日(期間外)に行った現地観測では、火口内の湯だまり4)の表面温度は64℃(赤外放射温度計3)による)と前期間(57℃)よりやや高くなっていた。湯だまり量は約8割、色は乳緑色で変化はなく、湯だまり内では土砂噴出は観測されず、引き続き噴湯現象が観測されている。
 火山性連続微動の振幅は24日からやや大きい状態となっている。
 孤立型微動は発生状況に大きな変化はなく、火山性地震は少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データにも特段の変化はなかった。

4) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。


● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 今期間の活動は低調であったが、他の期間では火口縁を超える噴気が時折観測されており、火山活動はやや活発な状態が続いている。


▲ 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 期間中、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等5)は観測されなかった(前期間も爆発的噴火等5)はなし)。噴火に伴い観測された噴煙の最高は24日の火口縁上400m(灰白色)であった。期間中、鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で降灰は観測されなかった(前期間もなし)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。

5) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳火口から連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね300mで推移した(最高は19日の800m)。火山性地震及び火山性微動の発生状況には特段の変化はなかった。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間42回、前期間56回)。火山性微動は少ない状態が続いている。期間中、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。


▲ 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 18日、19日及び23日に噴火が観測された。爆発的噴火はなかった。
 十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、18日、19日及び23日に火山灰を含む噴煙が火口縁上400〜500mまで上がっているのが確認され、18日と23日には集落(御岳の南南西約4km)で降灰があった。
 火山性微動は19〜20日に連続的に観測され、23日以降も連続的に観測されている。火山性地震は少ない状態が続いている。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第197号 18日16:00 11日〜18日15時までの活動状況。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第567〜573号
(1日1回発表)
18日〜24日
16:30
前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。
阿 蘇 山 火山観測情報第53号 18日11:45 やや活発な火山活動が継続(湯だまり量約8割、湯だまり表面温度やや低い)。レベルは2。


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