2005年 No.46 火山の概況 (平成17年11月11日 〜 平成17年11月17日)
【噴火が観測された火山】
【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】
- ● 十勝岳 [やや活発な状況]
- 噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
- ● 樽前山 [やや活発な状況]
- 15日に火山性地震が一時的に多発した。A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
- ● 浅間山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 山頂火口内の高温状態及び火山性微動のやや多い状態が続いている。
- ● 三宅島 [やや活発な状況]
- 多量の火山ガスの放出が続いている。。
- ● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 中岳第一火口内では、熱的活動のやや活発な状態が続いている。
- ● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)]
- 火口縁を超える噴気が時折観測されており、火山活動はやや活発な状態が続いている。
- ● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
- ● 口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
図1 各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。
注2 記号の意味
▲:噴火が観測された火山
●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
◇:その他記事を掲載した火山
□:記事を掲載していないレベル対象火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。
【各火山の活動解説】
● 十勝岳 [やや活発な状況]
62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。
● 樽前山 [やや活発な状況]
15日11時頃から22時頃にかけて体に感じない微小な火山性地震が一時的に増加した(15日の日回数179回)。震源は山頂ドーム直下の浅部(深さ1km付近)と推定され、樽前山で通常発生している場所である。地震の増加の前後で噴煙の状況等その他の観測データに変化はなかった。16日以降地震活動は静穏に経過している。1日あたりの地震回数が100回を超えたのは、2003年12月5日(122回)以来である。
今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。
● 浅間山 [やや活発な状況 (レベル2)]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。また、山麓の高感度カメラ1)で捉えられる程度の微弱な火映が時々観測されており、火口内は依然として高温状態が続いていると推定される。
火山性地震は10月下旬頃からはやや少ない状態が続いており1日あたり5〜27回であった。火山性微動はやや多い状態が続いており1日あたり0〜2回であった。
1) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。
◆ 伊豆大島 [静穏な状況 (レベル1)]
前期間の7日に島の西方海域で地震の一時的な増加がみられたが、地震活動はその後静穏に経過している。その他の観測データにも特段の変化はみられていない。
● 三宅島 [やや活発な状況]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね300mで推移した。
17日に上空から行った観測2)では、火口内の最高温度は約200℃(赤外熱映像装置3)による)と依然として高温状態が続いていた(前回11月8日約160℃)。二酸化硫黄の放出量は1日あたり5,600〜6,300トンと依然として多量の火山ガスの放出が続いている(前回11月8日1,400〜3,000トン)。また、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
期間中の火山性地震は1日あたり1〜7回と少ない状態であった。火山性微動は観測されなかった。
2) 海上保安庁の協力による。
3) 赤外放射温度計及び赤外熱映像装置は、物体が放射する赤外線を感知して温度もしくは温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
● 阿蘇山 [やや活発な状況 (レベル2)]
中岳第一火口(以下、火口)内では熱的活動のやや活発な状態が続いている。
15日に行った現地観測では、火口内の湯だまり4)量は約8割、色は乳緑色で変化はなかった。湯だまりの表面温度は57℃(赤外放射温度計3)による)と、量が約8割に増加した8日(前期間)以降やや低い値が観測されている(8日60℃、それ以前は70℃前後で推移)。湯だまり内では土砂噴出は観測されず、引き続き噴湯現象が観測されている。
火山性連続微動の振幅は小さい状態が続いている。
孤立型微動は発生状況に大きな変化はなく、火山性地震は少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データにも特段の変化はなかった。
4) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。
● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況 (レベル2)]
今期間の活動は低調であったが、他の期間では火口縁を超える噴気が時折観測されており、火山活動はやや活発な状態が続いている。
▲ 桜島 [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]
期間中、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等5))は観測されなかった(前期間は5日に爆発的噴火を1回観測)。噴火に伴い観測された噴煙の最高は16日の火口縁上400m(灰白色)であった。期間中、鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で降灰は観測されなかった(前期間もなし)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。
5) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。
● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]
噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳火口から連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した(最高は12日の400m)。火山性地震及び火山性微動の発生状況には特段の変化はなかった。
● 口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間56回、前期間54回)。火山性微動は少ない状態が続いている。期間中、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった(前期間もなし)。
▲ 諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)]
12日に噴火が観測された。爆発的噴火はなかった。
十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、12日に火山灰を含む噴煙が火口縁上500mまで上がっているのが確認された。
11月3日(期間外)から続いていた火山性微動の断続的な発生は11日未明まで続いた。その後、継続時間の短いものが13〜14日にやや多く発生した(日回数は13日19回、14日17回、その他の日は0〜4回)。火山性地震は少ない状態が続いている。
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
火 山 名 | 情報の種類及び号数 | 発表日時 | 概 要 |
---|---|---|---|
浅 間 山 | 火山観測情報第196号 | 11日16:00 | 4日〜11日15時までの活動状況。8日実施の火山ガス観測結果。レベルは2。 |
三 宅 島 | 火山観測情報 第560〜566号 (1日1回発表) |
11日〜17日 16:30 |
前日16時〜当日16時の活動状況、及び上空の風の予想。 |
阿 蘇 山 | 火山観測情報第52号 | 11日11:40 | やや活発な火山活動が継続(降水により湯だまり量約8割に増加、湯だまりの表面温度低下)。レベルは2。 |