2005年 No.33 火山の概況 (平成17年8月12日 〜 平成17年8月18日)

【噴火が観測された火山】

桜 島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)(注1)
ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等は観測されなかった。
(*:桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。)

【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】

十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
噴煙の状況に変化はなく、A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
山頂火口内の高温状態、火山性地震、火山性微動のやや多い状態が続いている。
箱根山 [やや活発な状況]
14日に一時的に地震がやや多く発生した。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いている。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内では、熱的な活動のやや活発な状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
御鉢火口の噴気活動がやや活発であった。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
今期間の活動は低調であったが、長期的にはやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震及び微動のやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
10日(前期間)から始まった活発な活動は12日まで続いた。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)


注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
 ◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
 ◇:その他記事を掲載した火山
 □:記事を掲載していないレベル対象火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
   その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山。◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山。◇:その他記事を掲載した火山。

● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化は見られていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化は見られていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、引き続き高温の状態が続いていると推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上300mであった。山麓の高感度カメラ1)で捉えられる程度の微弱な火映が13日と15日に観測されており、火口内は依然として高温状態が続いている。
 火山性地震及び火山性微動の回数はやや多い状態が続いており、期間中それぞれ1日あたり12〜28回、0〜1回であった。

1) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。


● 箱根山  [やや活発な状況]

 14日17時から21時にかけて、駒ケ岳付近の浅い所を震源とする地震がややまとまって発生し、14日の地震回数2)は12回となり、最大地震は19時59分に発生したM(マグニチュード)2.2(暫定値)であった。神奈川県温泉地学研究所によると、震源に近い箱根町強羅及び二ノ平では揺れや地鳴りもあったとのことである。その後、地震活動は落ち着いた状態に戻っている。気象庁が湯河原に設置している体積歪(ひずみ)計や神奈川県温泉地学研究所の地殻変動データには異常な変化は観測されなかった。また、15日に同研究所が行った調査によると、大涌谷の噴気活動に特に変化は見られなかった。
 箱根山では2004年2月4日にも大涌谷周辺を震源とする地震が多発した。2月4日の地震回数2)は50回で、最大地震(M3.0)により箱根町湯本で震度2を観測したが、大涌谷の噴気活動に変化は見られなかった。

2) 地震回数はM0.8以上の地震を計数した。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上1,000mであった。16日に上空から行った火山ガス観測3)では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり4,300〜4,900トン(前回は8月9日の同7,100〜8,800トン)で、依然として多量の火山ガスの放出が続いている。また、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 火山性地震の回数は少なく、1日あたり1〜9回であった。火山性微動は観測されなかった。

3) 航空自衛隊の協力による。


● 阿蘇山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 中岳第一火口(以下、火口)内では熱的な活動のやや活発な状態が続いている。
 12日未明及び16〜18日夜に監視カメラ4)で、火口底の一部に赤熱現象5)が観測された。
 18日に行った現地観測では火口内の状況に大きな変化はなく、湯だまりの量は引き続き約2割で、湯だまりの表面温度は69℃(赤外放射温度計6)による)と依然として高温であった(前期間71〜74℃)。湯だまり内では引き続き多数の土砂噴出が観測され、最高は約5mであった。
 火山性連続微動は振幅の小さい状態が続いている。
 孤立型微動の発生状況には特に変化はなく(今期間は1日あたり60〜122回、前期間は47〜138回で推移)、火山性地震は比較的少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。

4) 阿蘇火山博物館が中岳第一火口縁に設置。

5) 赤熱現象は、地下から高温の火山ガスなどが噴出する際に、周辺の地表面が熱せられて赤く見える現象。阿蘇山では、赤熱域が拡大すると、火孔が開孔し、噴火活動が活発化したことがある。

6) 赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 御鉢火口の噴気活動はやや活発で、18日に火口縁上100mの高さの噴気が観測された。地震活動は静穏で、その他の観測データにも特段の変化はなかった。


▲ 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 期間中、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等7)は観測されなかった(前期間も爆発的噴火等7)はなし)。15日にごく小規模な噴火による噴煙が観測され、高さは火口縁上300mであった。鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)では、降灰は観測されなかった(前期間もなし)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。

7) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 今期間の活動は低調であったが、長期的にはやや活発な状態が続いている。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震はやや多い状態が続いており、1日あたり10〜36回で推移した(前期間は同8〜24回)。火山性微動も継続時間の短いものがやや多く発生しており、1日あたり2〜7回で推移した(前期間は同1〜9回)。監視カメラ8)による観測では、噴気等は観測されなかった。

8) 新岳の北西約4kmに設置。


● 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 10日(前期間)から始まった活発な活動は12日まで続き、12日は火山性地震、火山性微動ともにやや多い状態であったが、13日以降は静穏に経過した。期間中に噴火は観測されなかった。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山(上)及び各火山のレベル(下)
表1(上) 最近1か月に記事を掲載した火山

表1(下) 最近1か月の各火山のレベル



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第183号 12日16:00 8月5〜12日15時の活動状況(噴煙量、地震及び微動やや多い、微弱な火映を時々観測、4日及び5日実施の調査観測結果)。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第445号〜458号
(1日2回発表)
12〜18日
(09:30及び
16:30)
前日16時〜当日09時もしくは当日09〜16時の活動状況、及び上空の風の予想。
阿 蘇 山 火山観測情報第39号 12日11:00 やや活発な火山活動が継続(赤熱現象を観測、湯だまり量が約3割から約2割に減少)。レベルは2。
口永良部島 火山観測情報第25号 15日14:00 火山性地震のやや多い状態継続。レベルは2。


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