2005年 No.23 火山の概況 (平成17年6月2日〜平成17年6月8日)
- 十勝岳及び樽前山では、噴煙の状況に変化はなく、火口の高温状態が続いていると推定される。
- 浅間山では活発な噴煙活動が継続し、微弱な火映がほぼ連日観測された。火山性地震及び微動のやや多い状態が続いている。火山活動度レベルは3(以下、レベルと記載)。
- 三宅島では多量の火山ガスの放出が継続している。
- 阿蘇山では、赤熱現象が観測される等、火口内の熱的な活動のやや活発な状態が続いている。レベルは2。
- 霧島山では御鉢の噴気活動がやや活発であった。御鉢のレベルは2、新燃岳のレベルは1。
- 桜島では爆発的噴火があった。レベルは2。
- 諏訪之瀬島では爆発的噴火が時々観測された。レベルは3。
図1 各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
表1 最近1か月に記事を掲載した火山(上)及び各火山のレベル(下)
注1 記号の意味
▲:噴火した火山
●:活動が活発な状態にあるか、もしくは観測データ等に変化があった火山
◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
◇:その他記事を掲載した火山
□:記事を掲載していないレベル対象火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
注2 記事は、▲、●及び◆(注1参照)に該当する火山及びレベル2以上の火山について掲載する。
その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。
注3 本文の火山名の後ろの[噴煙・噴気・地震・微動・空振・地殻変動・熱・火山ガス等]は、
変化があった観測データ項目を、数字は火山活動度レベルを示す。
◆ 雌阿寒岳
7日に札幌管区気象台が実施した調査観測によると、ポンマチネシリ96-1火口の温度は、約300℃であった1)。ポンマチネシリ96-1火口は高温状態が続いていたが、2000年以降徐々に低下傾向が認められていた。今回の観測値は前回(2004年10月:約340℃)よりさらに約40℃低下し、同火口の温度としては平常時のレベルまで下がったと考えられる。
噴煙活動に特に変化はなく、火山性地震及び微動の発生状況も静穏な状態が続いている。
1) 赤外放射温度計による。赤外放射温度計は物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
● 十勝岳 [噴煙・熱]
62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、高温の状態が続いていると推定される。 監視カメラ2)による噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。
2) 62-2火口の北北西約6㎞に設置。
● 樽前山 [熱]
A火口およびB噴気孔群の噴煙の状況に変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。
● 浅間山 [噴煙・火映・熱・地震・微動] レベル:3 (山頂火口で小〜中噴火の可能性)
今期間、噴火は観測されなかった。
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、最高で火口縁上500mまで上がった。また、微弱な火映が4日と8日を除く毎日、山麓の監視カメラ3)で観測された。
7日に行った上空からの観測4)では、雲や多量の噴煙のため山頂火口内の詳細な状況は確認できなかったが、火口底中央部には昨年9月の噴火活動に伴い噴出したとみられる固結した溶岩が引き続き確認され、その周辺には広範囲に硫黄昇華物の付着が確認された。赤外熱映像装置5)による観測では、火口内の最高温度は383℃(前回観測した2月9日は465℃)で、依然として高温状態が続いていた。
火山性地震及び微動の回数はやや多い状態が続いており、期間中それぞれ1日あたり30〜65回、0〜5回であった。
3) 高感度カメラ。気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が山麓に設置。
4) 群馬県の協力により、気象庁と産業技術総合研究所が共同で実施。
5) 赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
● 三宅島 [火山ガス・噴煙]
7日に上空から行った観測6)では、山頂火口内の状況は雲のため確認できなかった。火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたりに換算して2,500〜4,300トン(前回は5月24日4,200〜5,400トン)で、依然として多量の火山ガス放出が継続している。なお、三宅村の火山ガス濃度観測でも、山麓でたびたび高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
期間中の火山性地震の回数は少なく、1日あたり2〜6回であった。火山性微動は1回観測された。山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、最高で火口縁上500mまで上がった。
6) 警視庁の協力による。
● 阿蘇山 [赤熱7)・熱・土砂噴出・微動・地震] レベル:2 (やや活発な火山活動)
中岳第一火口では、赤熱現象7)の領域がやや拡大し、湯だまり量が減少する等、熱的な活動は前期間より活発になっているが、火山性連続微動は6日未明から振幅が小さくなった。
福岡管区気象台及び阿蘇山測候所が2〜4日及び8日に実施した現地観測によると、3日夜及び8日夜の観測で中岳第一火口底の北側噴気孔付近のごく一部に赤熱現象が確認され、8日の赤熱領域は3日よりもやや拡大していた。北側噴気孔付近の温度は194〜218℃1)と高温であった。中岳第一火口内の湯だまり量は減少傾向にあったが、8日にはそれまでの約2割から約1割に減少していた。湯だまりの色は引き続き黒灰色、表面温度は68〜71℃1)と依然として高い状態で(前期間は76℃1))、湯だまりの中央部付近で高さ約5m、その他で高さ2〜3mの多数の土砂噴出が引き続き観測された。
4月16日から振幅の大きくなっていた火山性連続微動は、6月6日未明から振幅が小さくなった。孤立型微動の発生回数は461回で前期間(554回)よりやや減少し、火山性地震の発生回数は、5月以降は一週間あたり100回未満で推移しており、今期間は54回であった(前期間は31回)。
噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。
7) 赤熱現象は、地下から高温の火山ガスなどが噴出する際に、周辺の地表面が熱せられて赤く見える現象。阿蘇山では、赤熱域が拡大すると、火孔が開孔し、噴火活動が活発化したことがある。
● 霧島山 [噴気] レベル:御鉢:2 (やや活発な火山活動)・新燃岳:1 (静穏な火山活動)
御鉢火口の噴気活動はやや活発で、監視カメラ8)による観測で、2日に火口縁上200mの高さの噴気が観測された。地震活動は静穏で、その他の観測データにも特に変化はなかった。
8) 御鉢火口の南西約5kmに設置。
▲ 桜島 [噴火・爆発・降灰] レベル:2 (比較的静穏な噴火活動)
今期間、爆発的噴火(以下、爆発)が1回観測された。爆発は2日07時36分に発生したが、噴煙等は夜間のため不明であった。爆発が観測されたのは今年1月23日以来であった。この爆発の他、ごく小規模な噴火は時折発生しており9)、鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で、8日に降灰量0g/㎡が観測された10)。同気象台で降灰が観測されたのは今年1月23日以来であった。
地震活動等その他の観測データには特に変化はなかった。
9) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。
10) 降灰量は前日09時〜当日09時の総量を観測している。0g/㎡は、1㎡あたり0.5g未満の微量であったことを示している。
◇ 薩摩硫黄島 レベル:2 (やや活発な火山活動)
地震活動、噴煙活動等の観測データには特段の変化はなかった。
◇ 口永良部島 レベル:2 (やや活発な火山活動)
地震活動、噴煙活動等の観測データには特段の変化はなかった。
▲ 諏訪之瀬島 [噴火・爆発・微動] レベル:3 (小規模な噴火が発生) (期間外の記述を含む)
5月30日(前期間)から活発であった噴火活動は6月3日まで続き、爆発的噴火が今期間も2日に2回、3日に1回観測された。5月30日〜6月3日の爆発回数は合計20回であった。その後、爆発は7日にも2回観測された。
今期間は天候不良等のため噴煙の状況は不明であった11)。また、十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、集落(御岳の南南西約4km)で降灰はなかった。
火山性連続微動が、期間の初めから3日朝まで断続的に観測された。
11) 噴煙の観測は、御岳の北北東約25kmの中之島に設置した気象庁の監視カメラ及び十島村役場諏訪之瀬島出張所からの報告による。
火 山 名 | 情報の種類及び号数 | 発表日時 | 概 要 |
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浅 間 山 | 火山観測情報第156号 ↓(1日1回発表) 火山観測情報第162号 |
2日16:00 ↓ 8日16:00 |
前日及び当日00時〜15時の活動状況(噴火はなし、噴煙・火映・地震・微動・地殻変動の状況・上空からの観測結果(161号)及び上空の風の予想)。レベルは3。 |
三 宅 島 | 火山観測情報第303号 ↓(1日2回発表) 火山観測情報第316号 |
2日09:30 ↓ 8日16:30 |
前日15時〜当日09時もしくは当日09〜15時の活動状況、及び上空の風の予想。 |
阿 蘇 山 | 火山観測情報第29号 | 3日11:20 | やや活発な火山活動が継続(火口底の一部高温)。レベルは2。 |
諏訪之瀬島 | 火山観測情報第4号 | 6日11:10 | 活発な噴火活動収まる。レベルは3。 |