2005年 No.17 火山の概況 (平成17年4月21日〜平成17年4月27日)

雌阿寒岳十勝岳及び樽前山では、噴煙の状況に変化はなく、火口の高温状態が続いていると推定される。
浅間山では噴煙活動が継続し、地震、微動のやや多い状態が続いている。火山活動度レベル(以下レベルと記載)は3。
三宅島では、多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。
阿蘇山では、振幅のやや大きな微動が観測される等活動の活発な状態が続いている。レベルは3。
霧島山では御鉢の噴気活動が一時やや活発になった。御鉢のレベルは2、新燃岳のレベルは1。
諏訪之瀬島では噴火があった。レベルは3。
硫黄鳥島では白色の噴煙が確認された。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)


表1 最近1か月に記事を掲載した火山(上)及び各火山のレベル(下)
表1(上) 最近1か月に記事を掲載した火山

表1(下) 最近1か月の各火山のレベル


注1 記号の意味
 ▲:噴火した火山
 ●:活動が活発な状態にあるか、もしくは観測データ等に変化があった火山
 ◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
 ◇:その他記事を掲載した火山
 □:記事を掲載していないレベル対象火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注2 記事は、▲、●及び◆(注1参照)に該当する火山及びレベル2以上の火山について掲載する。
   その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。

注3 本文の火山名の後ろの[噴煙・噴気・地震・微動・空振・地殻変動・熱・火山ガス等]は、
   変化があった観測データ項目を、数字は火山活動度レベルを示す。


雌阿寒岳 [熱]

 ポンマチネシリ96-1火口の噴煙の状況に変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


十勝岳 [噴煙・熱]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、高温の状態が続いていると推定される。遠望カメラによる噴煙の高さは火口縁上おおむね200mで推移した。


樽前山 [熱]

 A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


浅間山 [噴煙・火映・火山ガス・地震・微動] レベル:3 (山頂火口で小〜中噴火の可能性)

 今期間、噴火は観測されなかった。
 白色噴煙は山頂火口より連続して噴出しており、最高で火口縁上約900mまで上がった。また、微弱な火映が27日に山麓の高感度カメラ1)で観測された。27日に行った火山ガスの観測では、二酸化硫黄の放出量は1日当たり約800トンで、前回(3月29日)の約2,300〜4,700トンに比べ少ない状態であった。
 火山性地震及び微動は依然としてやや多い状態が続いており、それぞれ1日当たり50〜79回、0〜4回観測された。
 27日に行った上空からの観測2)では、火口底には昨年9月の噴火活動に伴い噴出したとみられる直径約150mの溶岩があり、その中心にはその後の爆発的噴火で噴き飛ばされたとみられるくぼみが確認された。また、くぼみの中心には数カ所の噴気孔が確認された。火口底の深さや溶岩の大きさは、昨年10月の観測以降大きな変化はみられていない。また、くぼみとその周辺部の比較的広範囲に硫黄昇華物3)と思われる黄色い付着物が確認された。
1) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が山麓に設置。
2) 長野県消防防災ヘリコプターにより、気象庁及び東京大学地震研究所が共同で実施。
3) 火山内部から噴気孔を通じて放出された気体の硫黄成分が冷えて固着したもの。硫黄昇華物の固着した部分は比較的温度が低いと考えられる。


三宅島 [噴煙・火山ガス]

 白色噴煙は山頂火口から連続して噴出しており、最高で火口縁上約500mまで上がった。
 火山性地震は少ない状態が続き、1日当たり3〜22回観測された。
 今期間は火山ガス放出量の観測は行わなかったが、三宅村の火山ガス濃度観測によると山麓ではたびたび高濃度の二酸化硫黄が観測されており、また、噴煙活動に特に変化が見られないことから、依然として火口からの多量の火山ガス放出が継続していると推定される。


阿蘇山 [熱・土砂噴出・微動・地震] レベル:3 (小規模な噴火の可能性)

 期間中、噴火は観測されなかった。
 阿蘇山測候所が21、22及び25日に実施した現地観測によると、中岳第一火口内の状況は、前期間と比べ大きな変化はなかった。湯だまりの色は黒灰色、量は約2割、表面温度は66〜75℃と高い状態であった。湯だまり内では土砂噴出が数ヶ所で発生し、高さは中央部及び北側で約5m、その他では2〜3mであった。火口底北側にある噴気孔からは引き続き勢いよく高温の火山ガスが噴出していた。赤熱現象は観測されなかった。
 火山性連続微動は期間を通して継続し、26日後半から27日朝にかけて振幅がやや大きくなった。孤立型微動の発生回数は1155回で、前期間(1304回)よりやや減少したが依然としてやや多い状態であった。火山性地震の発生回数は94回でやや減少した(前期間は153回)。
 地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。


霧島山 [噴気] レベル:御鉢:2 (やや活発な火山活動)新燃岳:1 (静穏な火山活動)

 御鉢火口の噴気活動は一時やや活発で、監視カメラによる観測で、25日に火口縁上約200mの高さの噴気が観測された。地震活動等その他の観測データに特に変化はなかった。


桜島 レベル:2 (比較的静穏な噴火活動)

 期間中、噴火はなかった(前期間もなし)。噴煙活動も低調で、鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で降灰は観測されなかった(前期間もなし)。


薩摩硫黄島 レベル:2 (やや活発な火山活動)

 地震活動、噴煙活動等の観測データには特段の変化はなかった。


口永良部島 レベル:2 (やや活発な火山活動)

 火山性地震及び微動の少ない状態が続いている。監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測で27日にごく少量の噴気が観測されたが、噴気活動も概ね低調であった。


諏訪之瀬島 [噴火・降灰・微動] レベル:3 (小規模な噴火の発生)

 噴火が23、25〜27日に観測された。
 十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、23及び25〜27日に火山灰を含む噴煙が高さ火口縁上約500〜1,000mまで上がっているのが確認された。26日午前中に切石港4)で、同日夕方には集落4)でも降灰が確認された。
 火山性連続微動が、23日から断続的に観測された。
4) 御岳の南南西約4km。


硫黄鳥島 [噴煙]

 25日17時30分頃、硫黄鳥島の南東約65kmにある沖永良部島の住民から、北西方向に噴煙が見えたとの目撃情報があった。
 26日に海上保安庁第十一管区海上保安本部が上空から行った観測によると、硫黄鳥島の北側及び中央部の火口内の噴気孔から白色の噴煙が上がっており、北側の噴煙は火口縁上の高さ約500mまで上がっていた。
 海上保安庁によると、硫黄鳥島では昨年8月及び9月の観測で噴煙が確認されている。なお、11月の観測では噴煙は確認されなかった。



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第114号
↓(1日1回発表)
火山観測情報第120号
21日16:00

27日16:00
前日及び当日00時〜15時の活動状況(噴火はなし、噴煙・火映・鳴動・地震・微動・地殻変動の状況、上空からの観測結果(120号)及び上空の風の予想)。レベルは3。
三 宅 島 火山観測情報第219号
↓(1日2回発表)
火山観測情報第232号
21日09:30

27日16:30
前日15時〜当日09時もしくは当日09〜15時の活動状況、及び上空の風の予想。
阿 蘇 山 火山観測情報第19号 22日11:30 火山活動は活発な状態が継続(15日以降噴火はなし、連続微動継続)。レベルは3。
火山観測情報第20号 25日11:10
口永良部島 火山観測情報第18号 22日14:30 やや活発な火山活動が継続。レベルは2。


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