平成25年 No.52 週間火山概況 (平成25年12月20日〜12月26日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

 27日(期間外)、阿蘇山に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げました。その他の火山については、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(12月20日〜12月27日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
12月27日 10時00分
阿蘇山 火口周辺警報 噴火警戒レベル2(火口周辺規制)へ引上げ
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 12月27日現在の噴火警報・予報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島
火口周辺危険 西之島※、硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島
平常 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(12月27日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴煙高度は、火口縁上100〜300mで経過しました。
 火山性地震は、少ない状態で経過しました。
 25日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり300トン(前回12月6日、400トン)とやや少ない状況でした。
 三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。


西之島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 西之島では、活発な噴火活動が続いています。
 20日に毎日新聞社の協力により東京大学地震研究所が実施した観測及び、24日と26日に海上保安庁が実施した観測によると、いずれの観測でも噴火の継続が確認されました。噴火は複数の火口で約30秒〜1分間隔で発生し、高さ50〜100mの灰白色や茶色の噴煙が観測されました。また、溶岩流により新島の大きさは拡大しており、26日の観測では、新島と西之島が2ヶ所で接続し、両島は一体となっているのが確認されました。
 西之島では、今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島付近では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
 国土地理院の観測によると、地殻変動は2013年9月頃からほぼ停滞していましたが、11月頃から沈降に転じています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(旧噴火口等)及びその周辺では噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これらの機関によるこれまでの上空からの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


阿蘇山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]←27日(期間外)に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)に引上げ

 阿蘇山では、20日頃から火山性微動の振幅が次第に大きくなり、27日(期間外)も継続しています(図2)。孤立型微動及び火山性地震は少ない状態で経過しています。
 24日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,100トンと前回(12月12日、700トン)よりも増加しました(図2)。
 また、25日に実施した中岳第一火口の現地調査では、湯だまりの量は1割以下で、火口内の中央付近では、高さ10m程度の土砂噴出を確認しました(図3)。
 以上のように、中岳第一火口の火山活動は高まっており、火口から概ね1kmの範囲に大きな噴石2)を飛散させる噴火が発生する可能性があると判断し、27日10時00分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げました。
 阿蘇山では、中岳第一火口から概ね1kmの範囲で、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石に注意してください。

阿蘇山 平均振幅(中岳西山腹地震計)及び二酸化硫黄放出量経過図

図2 阿蘇山 平均振幅(中岳西山腹地震計)及び二酸化硫黄放出量経過図(2013年6月1日〜12月26日)



阿蘇山 中岳第一火口内の状況

図3 阿蘇山 中岳第一火口内の状況



霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制規制)]

 新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
 火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
 傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
 国土地理院の広域的な地殻変動観測によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は2011年12月以降鈍化・停滞しています。一部の基線で、2012年5月頃からわずかな縮みの傾向がみられ、同年9月頃から停滞しています。
 新燃岳の火山活動は落ち着いた状態が続いています。しかし、火口内に溜まった溶岩は依然高温状態にあり、火口周辺に影響のある小規模な噴火が発生する可能性は残っています。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続いています。
 大隅河川国道事務所の有村観測坑道及び京都大学防災研究所のハルタ山観測総合坑道に設置している傾斜計及び伸縮計では、19日頃から山体の膨張と考えられるわずかな変化が継続しています。昭和火口では、爆発的噴火が3回発生し、大きな噴石2)は最大で4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。
 南岳山頂火口では、24日12時22分にごく小規模な噴火が発生し、噴煙が火口縁上500mまで上がりました。南岳山頂火口での噴火は2013年11月22日以来です。
 24日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり、1,700トン(前回12月10日、1,800トン)とやや多い状況でした。  GPS連続観測では桜島島内の基線で、2013年2月頃からわずかな伸びの傾向がみられましたが、同年7月頃から停滞またはわずかな縮みの傾向がみられます。国土地理院の地殻変動観測結果によると、鹿児島(錦江)湾を挟む一部の基線では、長期的な伸びの傾向が続いていましたが、6月頃から停滞気味です。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 諏訪之瀬島では活発な噴火活動が続いています。
 御岳(おたけ)火口では、26日に爆発的噴火が10回発生しました。遠望カメラでは山頂に雲にかかっているため、噴煙を確認することができませんでした。諏訪之瀬島で爆発的噴火が発生したのは、2013年11月27日以来です。
 同火口では、夜間に高感度カメラで確認できる程度の火映を観測しました。
 火山性地震は少ない状態で経過し、26日に一時的に火山性微動を観測しました。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。

1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
2)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
  


【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。

※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。


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