平成21年 No.44 週間火山概況 (平成21年10月23日 〜 平成21年10月29日)

【火山現象に関する予報及び警報の状況】

 27日に、秋田駒ケ岳に噴火予報を発表し、噴火警戒レベルを導入した(レベル1、平常)。
 30日(期間外)、口永良部島に噴火予報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(平常)に引き下げ、火口周辺警報を解除した。
 その他の火山は、噴火に関する予報警報事項に変更はない。

表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(10月23日〜10月30日(期間外含む))

発表日時 火山名 警報・予報 概要
10月27日10時00分 秋田駒ケ岳 噴火予報 噴火警戒レベル導入(レベル1、平常)
10月30日11時00分 口永良部島 噴火予報 噴火警戒レベルを1(平常)に引下げ
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布状況

表2 10月30日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 当該火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
レベル2(火口周辺規制) 浅間山、三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(新燃岳)、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(10月30日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口からの噴煙量は4月以降大きな変化はなく、やや多い状態が続き、噴煙高度は火口縁上100〜300mで推移した。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 29日に行った現地調査では、二酸化硫黄放出量は一日あたり500〜1,000トン(前回10月22日、400〜700トン)と、2009年2月の噴火以降、減少傾向がみられるが、2008年7月以前と比べて多い状態が続いている。
 GPSによる地殻変動観測では、2008年7月初め頃からの深部へのマグマ貫入を示す伸びの傾向は、2009年7月頃から鈍化している。
 浅間山では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、山頂火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では、降灰及び風の影響を受ける小さな噴石1)にも注意が必要である。なお、火山ガス放出量の多い状態が続いているので、風下側にあたる登山道等では火山ガスにも注意が必要である。

1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 三宅島では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過している。国土地理院の観測によると、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動は、2009年5月中旬頃から隆起の傾向が鈍化している。
 硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、観測は行われなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測で、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
 福徳岡ノ場では引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 昭和火口では、爆発的噴火が31回発生し、大きな噴石1)が最大で4合目(昭和火口から800m〜1,300m)まで達した。また、同火口では夜間に高感度カメラ2)で確認できる程度の微弱な火映が時々観測された。
 南岳山頂火口では噴火は観測されなかった。
 火山性地震および火山性微動は少ない状態が続いている。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による変化が引き続き観測されている。
 桜島の昭和火口及び南岳山頂火口から2km程度の範囲では、大きな噴石及び火砕流に対する警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき3))にも注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。

2)九州地方整備局大隅河川国道事務所の黒神河原上流設置カメラ等による。
3)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動は高い状態が続いている。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島では、硫黄岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル1、平常)] ←30日(期間外)に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)から引下げ

 9月27日から火山性地震が一時的に増加したが、9月30日以降は少ない状態で経過している。火山性微動は10月7日以降観測されていない。GPSによる地殻変動観測でも、新岳火口浅部の膨張を示す変化は認められない。
 これらのことから、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められなくなったと判断し、30日に噴火予報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(平常)に引き下げ、火口周辺警報を解除した。
 新岳火口内では引き続き噴気や火山ガスの噴出等がみられ、火口内等では警戒が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、小規模な噴火が時々発生した。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 諏訪之瀬島では、今後も御岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


樽前山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 23日02時07分頃から継続時間約2分30秒の振幅の小さな火山性微動が発生した。火山性微動の発生に伴い、傾斜計(C点:山頂ドームの北約1.5km)にわずかな変化(山上がり)が観測されたが、噴煙の状況に特段の変化は認められなかった。火山性微動の発生は、今回と同様に山上がりの傾斜変動を伴った2009年10月16日以来である。火山性地震は少ない状態で経過した。
 24日に実施した現地調査では、噴出等の痕跡は認められず、火口周辺に特段の変化はなかった。
 A火口及びB噴気孔群では高温の状態が続いており、また、山頂溶岩ドーム付近の局所的な膨張を示す地殻変動が、2006年以降継続している。
 地震活動や噴煙活動は低調な状態であるが、今後の火山活動の推移に注意する必要がある。

図2 樽前山 火山性地震と火山性微動の経過(1967年7月〜2009年10月29日)

図2 樽前山 火山性地震と火山性微動の経過(1967年7月〜2009年10月29日)




 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。





【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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