平成21年 No.41 週間火山概況 (平成21年10月2日 〜 平成21年10月8日)

【火山現象に関する予報及び警報の状況】

3日17時20分に、桜島の降灰予報を発表した。
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項に変更はない。

表1 今期間(10月2日〜10月8日)における火山現象に関する警報及び予報の発表履歴

発表日時 火山名 警報・予報 概要
10月3日17時20分 桜島 降灰予報 3日16時45分の噴火に伴う降灰地域予想
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布状況

表2 10月8日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 当該火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
レベル2(火口周辺規制) 浅間山、三宅島、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(新燃岳)、霧島山(御鉢)
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(10月8日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口からの噴煙量は4月以降大きな変化はなくやや多い状態が続き、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 GPSによる地殻変動観測では、2008年7月初め頃からの深部へのマグマ貫入を示す伸びの傾向は、2009年7月頃から鈍化している。
 浅間山では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、山頂火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では、降灰及び風の影響を受ける小さな噴石1)にも注意が必要である。なお、火山ガス放出量の多い状態が続いているので、風下側にあたる登山道等では火山ガスにも注意が必要である。

1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 三宅島では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過している。国土地理院の観測によると、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動は、2009年5月中旬頃から隆起の傾向が鈍化している。
 硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、観測は行われなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測で、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
 福徳岡ノ場では引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 南岳山頂火口では、3日16時45分に爆発的噴火が発生し、噴煙が火口縁上3,000mまで上がり、大きな噴石1)が4合目(南岳山頂火口から1,300m〜1,700m)まで達した(南岳山頂火口の爆発的噴火は2009年2月22日以来)。この爆発的噴火に対して17時20分に降灰予報を発表した。噴火後に行った聞き取り調査及び気象庁機動調査班(JMA-MOT)が行った降灰調査では、同火口の北東から南東に位置する宮崎県宮崎市や鹿児島県鹿屋市などの広い範囲で、降灰を確認した。
 昭和火口では、爆発的噴火が17回発生し、噴石が最大で4合目(昭和火口から800m〜1,300m)まで達した。また、同火口では夜間に高感度カメラ2)で確認できる程度の微弱な火映が時々観測された。
 火山性地震および火山性微動は少ない状態が続いている。
 8日に行った現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり3,100トン(前回9月24日、一日あたり2,800トン)と、多い状態で経過した。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による変化が引き続き観測されている。
 桜島の昭和火口及び南岳山頂火口から2km程度の範囲では、大きな噴石及び火砕流に対する警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき3))にも注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。

2)九州地方整備局大隅河川国道事務所の黒神河原上流設置カメラ等による。
3)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動は高い状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島では、硫黄岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 9月27日に火山性地震が増加し、その後次第に減少しているが、地震増加前と比べてやや多い状態が続いている。火山性微動は時々発生した。
 口永良部島では、新岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があるため、火口から1km程度の範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。



図2 口永良部島 火山性地震の時間別回数(2009年9月25日〜2008年10月8日)

諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、小規模な噴火が時々発生した。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 諏訪之瀬島では、今後も御岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】






 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。





【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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