平成21年 No.36 週間火山概況 (平成21年8月28日 〜 平成21年9月3日)

【火山現象に関する予報及び警報の状況】

いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項に変更はない。

表1 今期間(8月28日〜9月3日)における火山現象に関する警報及び予報の発表履歴

発表日時 火山名 警報・予報 概要
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布状況

表2 9月3日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 当該火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
レベル2(火口周辺規制) 浅間山、三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(新燃岳)、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(9月3日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口からの噴煙量はやや多い状態が続き、噴煙高度は火口縁上200mで推移した。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 GPSによる地殻変動観測では、2008年7月初め頃からの深部へのマグマ貫入を示す伸びの傾向は、2009年7月頃から鈍化している。
 浅間山では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、山頂火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では、降灰及び風の影響を受ける小さな噴石1)にも注意が必要である。なお、火山ガス放出量の多い状態が続いているので、風下側にあたる登山道等では火山ガスにも注意が必要である。

1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上概ね100〜200mで推移した。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 三宅島では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過している。国土地理院の観測によると、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動は、2009年5月中旬頃から隆起の傾向が鈍化している。
 硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、観測は行われなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測で、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
 福徳岡ノ場では引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 昭和火口では、爆発的噴火が21回発生した。このうち28日20時51分、1日11時42分、2日21時08分の爆発的噴火では、大きな噴石1)が4合目(昭和火口から800〜1,300m)まで達した。また、昭和火口では夜間に高感度カメラ2)で確認できる程度の微弱な火映が、時々観測された。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
 火山性地震は少ない状態が続いている。また、噴火に伴う火山性微動は発生している。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による変化が引き続き観測されているが、地下深部に蓄積したマグマが桜島直下へ移動したことを示す変化は観測されていない。
 桜島では、南岳山頂火口及び昭和火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石及び火砕流に対する警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき3))にも注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。

2)九州地方整備局大隅河川国道事務所の黒神河原上流設置カメラ等による。
3)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや高まった状態が続いており、噴煙高度は火口縁上200〜600mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島では、硫黄岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、小規模な噴火が時々発生した。27日22時00分頃(期間外)、噴火に伴い振幅の大きな火山性微動が発生した。28日に、京都大学及び気象庁機動調査班(JMA-MOT)が鹿児島県の協力を得て合同で行った上空からの観測では、御岳火口の北西側に多量の火山灰が堆積しているのを確認した。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 諏訪之瀬島では、今後も御岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


樽前山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 2日早朝、別々川(山頂溶岩ドームの南南東約12km)に設置している遠望カメラで、A火口の西側にこれまで認められていない噴気が確認された。同日午後に現地調査を行ったところ、従来からごく弱い噴気と変色が見られていたドーム南東亀裂の東縁及び同亀裂延長上(A火口の西側)に新たな噴気孔を確認した。
 A火口、B噴気孔群、E火口の噴煙活動及び地震活動に特段の変化はなく、GPS及び傾斜計による地殻変動観測では火山活動によると考えられる変化は認められていない。
 樽前山では、今後これらの活動が高まった場合には、火口原内への噴出等の現象が発生する可能性があるため注意が必要である。

図2 樽前山 遠望カメラによる噴気の状況

図2 樽前山 遠望カメラによる噴気の状況(9月2日04時44分)



秋田駒ケ岳 [噴火予報(平常)]

 27日、女岳(めだけ)東北東斜面に植生が枯死している領域が存在するとの情報が寄せられた。
 28日に現地調査を行ったところ、幅約5m、長さ約12mの楕円状の範囲で植生の枯死域が確認され、ごく弱い噴気が認められた。また、赤外熱映像装置による観測では、枯死域のほか、その上部斜面で地熱の高まりが認められた。
 3日に岩手県の協力により実施した上空からの観測では28日に確認された枯死域およびその上部斜面の地熱の高まりに変化は認められなかった。
 地震活動には特段の変化はなく、従来から認められている女岳山頂北部の地熱域では、表面温度分布に特段の変化はなかった。

秋田駒ケ岳 女岳東北東斜面の植生の枯死域

図3 秋田駒ケ岳 女岳東北東斜面の植生の枯死域(8月28日12時24分)





 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。





【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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