平成21年 No.7 週間火山概況 (平成21年2月6日 〜 平成21年2月12日)

【火山現象に関する予報及び警報の状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項に変更はない。

表1 火山現象に関する予報及び警報の発表履歴(2月6日〜2月12日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布状況

表2 2月12日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 当該火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 浅間山、桜島、口永良部島
レベル2(火口周辺規制) 雌阿寒岳、三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、草津白根山、御嶽山、富士山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(新燃岳)、霧島山(御鉢)
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(2月12日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


雌阿寒岳 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 ポンマチネシリ火口の噴煙はやや多い状態が続き、火口縁上200〜400mで推移した。
 振幅が小さく継続時間の短い火山性微動が時々発生し、また火山性地震が一日あたり50回前後とやや多い状態で推移した。
 GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。
 雌阿寒岳では今後もごく小さな噴火が発生する可能性があり、ポンマチネシリ火口から500m程度の範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)に注意が必要である。

1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 9日07 時46 分頃に山頂火口でごく小規模な噴火が発生し、その後、断続的に噴火が発生した。噴煙高度の最大は、10日04時50分に観測された火口縁上1,400mであった。これらの噴火に伴い、山頂火口の南東側にあたる軽井沢町内の一部の地域で微量の降灰が確認された。
 12日に行った現地調査では、二酸化硫黄放出量が一日あたり3,700〜4,400トン(前回2月4日、2,000〜3,100トン)と多い状態で推移しており、夜間には高感度カメラ2)により微弱な火映が時々観測されるなど、熱活動の高まった状態が続いている。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 傾斜計では火山活動によると認められる特段の変化は観測されていない。
 浅間山では、火口から4kmの範囲に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があると予想されるので、これらの地域では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。


図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2008年4月1日〜2009年2月12日)


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上200〜400mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 今期間、現地調査を行っていないが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 三宅島では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で予想される地域では火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には泥流にも注意が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 独立行政法人防災科学技術研究所及び国土地理院の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過しているが、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動は、現在も継続している。
 硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、従来から小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、観測は行われなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測で、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
 福徳岡ノ場では引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 昭和火口ではごく小規模な噴火が時々発生した。南岳山頂火口では噴火の発生はなかった。
 9日に行ったガス観測では、二酸化硫黄の放出量は一日あたり1,200〜1,500トンと、前回(2月2日実施、600〜1,600トン)と同様にやや多い状態が続いている。
 火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。
 国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いているが、桜島直下にマグマが新たに移動したことを示す地殻変動は観測されていない。
 桜島では、引き続き南岳山頂火口及び昭和火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)( 火山れき3))にも注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に注意が必要である。

3)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。

薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上50〜500mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島では、硫黄岳火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要である。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 火山性地震および火山性微動は少ない状態で推移した。島内に設置した遠望カメラでは、噴気が時々観測され、高さは火口縁上50〜100mで推移した。
 GPSによる地殻変動観測では、2008年9月以降新岳火口浅部の膨張を示す変化が続いているが、その変動に鈍化の傾向が認められる。
 口永良部島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があるため、火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では11日に小規模な噴火が発生した。火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 諏訪之瀬島では、御岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


箱根山 [噴火予報(平常)]

 8日に、駒ケ岳付近の浅部を震源とする地震がまとまって発生した。最大の地震は02時31分に発生したマグニチュード1.6(暫定値)であった。箱根山では、これまでにも時々地震の多発があり、最近では2008年9月に発生している。
 その後、地震活動は静穏に経過し、気象庁が湯河原に設置している体積歪計4)や神奈川県温泉地学研究所の傾斜計5)による地殻変動観測では、今回の地震活動に関連した変化はなかった。また、環境省インターネット自然研究所の箱根・大涌谷カメラでは、大涌谷などの噴気等の表面現象にも特段の変化はみられない。
 箱根山では引き続き火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候はみられない。

4)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。
5)地面の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。


 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。





【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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