平成20年 No.33 火山の概況 (平成20年8月8日 〜 平成20年8月14日)

【火山現象に関する予報及び警報の状況】

 8日、浅間山に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベル1(平常)からレベル2(火口周辺規制)に引き上げた。
 その他の火山は、噴火に関する予報警報事項に変更はない。

表1 火山現象に関する予報及び警報の発表履歴(8月8日〜14日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
8日15時00分 浅間山 火口周辺警報 噴火警戒レベル2(火口周辺規制)へ引上げ
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布状況

表2 8月14日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
レベル2(火口周辺規制) 浅間山、三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、草津白根山、御嶽山、富士山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢、新燃岳)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

*噴火警戒レベルは、その活用が地域防災計画等で予め定められており、レベル毎の防災対応がキーワードで示されている。


図1  噴火警報発表中の火山

図1 8月14日現在噴火警報発表中の火山





【各火山の活動状況及び予報警報事項】


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)] ←8日に噴火警戒レベル1(平常)から引上げ

 7月以降、火山性地震及び火山性微動の回数がやや多い状態が続いていたが、8月に入ってさらに地震回数が増加した。また、8月6日頃から噴煙量も増加し始めるなど火山活動が高まってきた状況がみられたことから、今後、山頂火口から概ね2kmの範囲に大きな噴石1)が達するような噴火が発生する可能性があると判断し、8日に火口周辺警報を発表して噴火警戒レベルを1(平常)からレベル2(火口周辺規制)に引き上げた。
 その後、10日02時37分頃ごく小規模な噴火が発生し、噴煙が火口縁上400mまで上がった。噴火の発生は2004年12月9日以来である。10日に群馬県の協力により行った上空からの観測では、降灰は認められなかった。このほか11日、14日にもごく小規模な噴火が発生した。
 10日、11日及び14日に行った現地調査では、二酸化硫黄の放出量は一日あたり1,100〜2,900トンと多い状態であった(前回7月17日、100トン)。
 9日以降、夜間に高感度カメラ2)により微弱な火映が観測されている。
 火山性地震及び火山性微動は多い状態が続いている。
 浅間山では、依然として火山活動が高まっている状態が続いており、山頂火口から概ね2kmの範囲に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これらの地域では、大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では、降灰及び風の影響を受ける小さな噴石1)にも注意が必要である。

図2  噴火の画像

図2 高感度カメラ(長野県建設部佐久建設事務所が浅間山山頂の西約3kmの黒斑山に設置)による10日02時37分頃の噴火の画像。温度の高い部分が赤く見えている。


1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、それより小さく風の影響を受ける噴石は、例えば「風の影響を受ける小さな噴石」という表現を用いる。
2)長野県建設部佐久建設事務所の黒斑山設置カメラ及び国土交通省利根川水系砂防事務所の山麓設置カメラによる。

三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 今期間、現地調査を行っていないが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 三宅島では山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口周辺では噴火に対する警戒が必要である。また、風下にあたる地区では火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には泥流にも注意が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 独立行政法人防災科学技術研究所及び国土地理院の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過しているが、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動が継続している。
 硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、従来から小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間観測は行われなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測では、福徳岡ノ場付近の海面に、長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
 福徳岡ノ場では、引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]←28日に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)から引上げ

 昭和火口では10日に小規模な噴火が発生した。小規模な噴火の発生は7月28日以来である。
 8日に行った現地調査では、二酸化硫黄の放出量は一日あたり500〜900トンと前回(7月28日、700〜1,300トン)に比べて減少したもののやや多い状態が続いている。
 国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いている。桜島の昭和火口の噴火活動は、2006年6月の噴火以降、長期的には次第に活発化している傾向がみられている。
 桜島では、南岳山頂火口及び昭和火口から2km程度の範囲では、大きな噴石1)及び火砕流に引き続き警戒が必要である。また、風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石1)(火山れき3))にも注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に注意が必要である。

3)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。

薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙は火口縁上300〜600mの高さであった。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島では硫黄岳山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口周辺では噴火に対する警戒が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴火は観測されなかったが、御岳(おたけ)火口では長期にわたり噴火を繰り返している。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 諏訪之瀬島では今後も御岳火口から半径約1kmの範囲に大きな噴石1)を飛散させる程度の小規模な噴火が発生すると予想されるので、噴火に対する警戒が必要である。



 上記以外の火山では、火山活動に特段の変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす(この範囲に入った場合は生命に危険が及ぶ)噴火の兆候はみられない。




【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード 海底火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 周辺海域警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常 平常



このページのトップへ