平成20年 No.31 火山の概況 (平成20年7月25日 〜 平成20年7月31日)
【火山現象に関する予報及び警報の状況】
28日、桜島に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベル2(火口周辺規制)からレベル3(入山規制)に引き上げた。その他の火山は、噴火に関する予報警報事項の変更はない。
表1 火山現象に関する予報及び警報の発表履歴(7月25日〜31日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 | |
28日07時30分 | 桜島 | 降灰予報 | 28日07時05分の噴火に伴う降灰地域予想 | |
28日10時55分 | 桜島 | 降灰予報 | 28日10時10分の噴火に伴う降灰地域予想 | |
28日11時05分 | 桜島 | 火口周辺警報 | 噴火警戒レベルを3(入山規制)に引上げ | |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布状況 |
表2 7月31日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 当該火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、草津白根山、浅間山、御嶽山、富士山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢、新燃岳)、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
*噴火警戒レベルは、その活用が地域防災計画等で予め定められており、レベル毎の防災対応がキーワードで示されている。
図1 7月31日現在の火口周辺警報及び噴火警報発表中の火山の噴火警戒レベル等の状況
【各火山の活動状況及び予報警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
今期間、現地調査を行っていないが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
三宅島では山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口周辺では噴火に対する警戒が必要である。また、風下にあたる地区では火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には泥流にも注意が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
海上自衛隊の協力を得て行った、29日の上空からの観測及び30日の現地調査では、2006年11月28日の調査結果と比べて、島内の噴気、地熱等の状況に大きな変化は認められなかった。
独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると地震活動は落ち着いた状態で経過している。
国土地理院の観測によると、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動が継続している。
硫黄島では火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、従来から小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
29日に、海上自衛隊の協力を得て行った上空からの観測では、福徳岡ノ場付近の海面に変色水及び浮遊物は確認されなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測では、福徳岡ノ場付近の海面に、長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
福徳岡ノ場では引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]←28日に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)から引上げ
昭和火口では、28日07時05分と10時10分に噴火が発生し、噴煙がそれぞれ火口縁上3,300m及び3,200mの高さまで上がった。これらのうち10時10分の爆発的噴火1)では、弾道を描いて飛散する大きな噴石2)が4合目(昭和火口からの水平距離で800mから1,300m)まで達した。
このため、桜島の噴火活動は活発化する傾向にあると判断し、28日11時05分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを3(入山規制)に引き上げた。
当日、この2回の噴火に対してそれぞれ07時30分と10時55分に降灰予報を発表し、降灰地域を予想した。噴火後に行った降灰調査では、桜島の北側にあたる鹿児島県加治木町、熊本県球磨村などで降灰を確認した。
28日、九州地方整備局の協力を得て行った上空からの観測では、南岳山頂火口及び昭和火口の形状に特段の変化はなかった。また、同日行った現地調査では、二酸化硫黄放出量は一日あたり700〜1,300トン(前回10日、1,300〜2,800トン)と多い状態が続いている。
昭和火口では25日から27日にかけてもごく小規模な噴火が発生しているが、29日以降、噴火は確認されていない。
国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いている。桜島の昭和火口の噴火活動は、2006年6月の噴火以降、長期的には次第に活発化している傾向がみられている。
南岳山頂火口及び昭和火口から2km程度の範囲では、大きな噴石2)及び火砕流に引き続き警戒が必要である。また、風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石2)(火山れき3))にも注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に注意が必要である。
1)桜島では、噴火のうち、爆発音、噴石の火口外への飛散、一定基準以上の空振等を観測した場合に爆発的噴火としている。 2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、それより小さく風の影響を受ける噴石は、例えば「風の影響を受ける小さな噴石」という表現を用いる。
3)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙は火口縁上100〜500mの高さで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
薩摩硫黄島では硫黄岳山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口周辺では噴火に対する警戒が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、29日、30日及び31日に御岳(おたけ)火口で小規模な噴火が発生した。
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島では今後も御岳火口から半径約1kmの範囲に大きな噴石2)を飛散させる程度の小規模な噴火が発生すると予想されるので、噴火に対する警戒が必要である。
上記以外の火山では、火山活動に特段の変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす(この範囲に入った場合は生命に危険が及ぶ)噴火の兆候はみられない。
【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード | 海底火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 | 周辺海域警戒 |
レベル4(避難準備) | |||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 | |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | ||
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 | 平常 |