箱根山 有史以降の火山活動

有史以降の火山活動(▲は噴火年を示す)

 火山活動は静穏であるが、大涌谷等で噴気活動がみられる。
 群発地震活動を繰り返しており、2001年にはダイク貫入による地殻変動と地震活動が観測された。その後も2006年及び2008~2009年、2015年、2019年には地殻変動を伴う群発地震活動が観測されており、2015年には噴火が発生した。群発地震活動は地下深部からの流体供給が引き金になっているという見方もある。

年代 現象 活動経過・被害状況等
▲12世紀後半から13世紀ごろ 水蒸気噴火 3回の火砕物降下。噴火場所は大涌谷付近。
1933(昭和8)年 噴気・温泉異常 2月。大涌谷の噴気孔の移動、姥子(うばこ)温泉湧出量減少。
1933(昭和8)年 噴気 5月10日。大涌谷の噴気孔で大音響とともに噴出、死者1名。
1934(昭和9)年 鳴動、熱 2月。駒ヶ岳付近で鳴動、山麓一帯、地温上昇し、樹木枯死、土塊の盛上り。22日午後4時頃、駒ヶ岳北西の神山との鞍部で噴気が発生し、噴気の高さは200mに及ぶ。翌日まで活動。
1953(昭和28)年 (山崩れ) 7月26日。早雲 (そううん)地獄で山崩れ、死者10名、負傷者16名。全壊家屋1棟。翌日も時々山崩れ。火山活動との関係不明。
1974~78(昭和49~53)年 噴気 74年9月~78年2月。大涌谷噴気地帯の移動。樹木枯死。
2001(平成13)年 地震・地殻変動 6~10月(最大M2.8小田原市久野で震度2)。箱根山を中心に膨張を示す地殻変動。また、群発地震発生直後から、大涌谷から上湯場付近にかけて噴気地帯が拡大し、大涌谷にある数箇所で、蒸気井の噴出の勢いが増した(暴噴)。
2008(平成20)年 地震・地殻変動 4月駒ヶ岳付近で一時的に地震増加(最大M2.6)。9月湖尻付近および芦ノ湖北部で一時的に地震増加(最大M2.5)。12月駒ヶ岳付近で一時的に地震増加(最大M2.8)。6月より、箱根山を中心に膨張を示す地殻変動。
2011(平成23)年 地震 3月~4月。東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)以降、駒ヶ岳から芦ノ湖付近、金時山付近、大涌谷北部での地震活動が活発化。有感地震多発。3月11日15:08 M4.6(震度5弱)、3月21日23:14 M4.2(震度2)。
▲2015(平成27)年 ごく小規模水蒸気噴火 4月26日から地震増加、有感地震多発、5月初め頃からは大涌谷温泉供給施設の噴気が増大した。
6月29日から7月1日にかけてごく小規模な噴火が断続的に発生。6月29日07:32に火山性微動を観測した後、地震活動がさらに活発化し、降灰や空振を観測。また同日の現地調査にて新たな噴気孔(15-1火口)を確認、その後数日でさらに3つの新たな噴気孔を確認。
これ以降、10月頃まではたびたび噴出現象を確認、また地震の多い状態も継続した。
2019(令和元)年 地震・地殻変動 大涌谷周辺の想定火口域で活発な噴気活動が継続するなか、3月中旬から山体浅部と深部それぞれの膨張を示すと考えられる地殻変動を観測。4月下旬頃から火山性地震がやや増加し、5月中旬に急増(最大M2.6)したが、9月以降、地震活発化の前の状態になる。

日本活火山総覧(第4版)(気象庁編、2013)及び最近の観測成果による。
噴火イベントの年代、噴火場所、噴火様式等については、(国研)産業技術総合研究所の活火山データベース(工藤・星住, 2006)を参考に、文献の追記を行った。
なお、噴出物量については、降下火砕物、火砕流、火砕サージ、溶岩流、溶岩ドーム等を加えた重量(単位は「ton」)またはマグマ噴出量(DRE km3)で記載している。また、噴出物量が既知である場合については、産業技術総合研究所作成の活火山データベースから参照し、VEI(火山爆発指数)も付している。詳しくは有史以降の火山活動についてを参照のこと。



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