2007年8月16日のペルー沿岸の地震で発表した津波注意報について
地震の概要
平成19年8月16日8時40分(日本時間)、ペルー沿岸でMw8.0(Ms7.9※1)の地震が発生した。この地震の発震機構(GlobalCMT※2)は東北東-西南西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、ナスカプレートと南米プレートの境界で発生した地震である。
この地震により津波が発生し、太平洋の広い範囲で津波を観測した。(地震及び海外で観測した津波の詳細は平成19年8月地震・火山月報(防災編)を参照)
※1 Msは、米国地質調査所(以下、USGSと表記)による表面波マグニチュードである。
※2 GlobalCMTは、米国の研究機関により、世界各地に設置された広帯域地震計の記録から求められたCMT解である。
震源時刻(日本時間) | 震央地名 | 緯度 | 経度 | 深さ | Ms | Mw |
---|---|---|---|---|---|---|
2007年8月16日 08時40分 | ペルー沿岸 | 南緯13度23.1分 | 西経76度36.1分 | 39km | 7.9 | 8.0 |
今回の地震の震央位置(左下、右)と周辺のテクトニクスの模式(左上)
右図で表示した地震は、1970年1月1日~2007年8月20日、深さ0~100km、M6.0以上のもの。震源はUSGSによる。発震機構はGlobalCMTによる。
発表した津波注意報の概要
この地震に対して発表した津波注意報は、以下のとおりである。
発表時刻 | 概要 | 発表予報区 | |
---|---|---|---|
北海道から沖縄にかけての太平洋沿岸(東京湾、伊勢・三河湾、淡路島南部を除く)及び伊豆諸島、小笠原諸島に津波注意報を発表 | 津波注意報:北海道から沖縄にかけての太平洋沿岸(東京湾、伊勢・三河湾、淡路島南部を除く)、伊豆諸島、小笠原諸島 →津波注意報発表予報区(地図、png形式) | ||
全ての津波注意報解除 | 全ての津波注意報解除 |
津波の観測
津波予報区 | 予想した津波の高さ | 予報区内で観測した津波の高さの最大 |
---|---|---|
北海道太平洋沿岸東部 | 0.5m | 15cm |
北海道太平洋沿岸中部 | 0.5m | 観測されず |
北海道太平洋沿岸西部 | 0.5m | 12cm |
青森県太平洋沿岸 | 0.5m | 15cm |
岩手県 | 0.5m | 15cm |
宮城県 | 0.5m | 13cm |
福島県 | 0.5m | 12cm |
茨城県 | 0.5m | (検潮所なし) |
千葉県九十九里・外房 | 0.5m | 7cm |
千葉県内房 | 0.5m | 10cm |
伊豆諸島 | 0.5m | 8cm |
小笠原諸島 | 0.5m | 10cm |
相模湾・三浦半島 | 0.5m | (検潮所なし) |
静岡県 | 0.5m | 11cm |
愛知県外海 | 0.5m | 10cm |
三重県南部 | 0.5m | 9cm |
和歌山県 | 0.5m | 8cm |
徳島県 | 0.5m | 11cm |
愛媛県宇和海沿岸 | 0.5m | 観測されず |
高知県 | 0.5m | 11cm |
大分県豊後水道沿岸 | 0.5m | (検潮所なし) |
宮崎県 | 0.5m | 11cm |
鹿児島県東部 | 0.5m | 観測されず |
種子島・屋久島地方 | 0.5m | 9cm |
奄美諸島・トカラ列島 | 0.5m | 14cm |
沖縄本島地方 | 0.5m | 7cm |
大東島地方 | 0.5m | 観測されず |
宮古島・八重山地方 | 0.5m | 15cm |
鹿児島県西部 | 11cm |
黄は「津波注意報」のグレードであることを示す。
詳細は、下記資料をご覧下さい。
- 津波の観測値(気象庁所管の検潮所:詳細)
(① 「表示年」で「2007年」を選択、② 「全地点表示」を選択、③ 「津波(全地点表示のみ)」を選択、④ 「各項目を入力してクリック」をクリックして表示させてください。)
津波予測の評価
量的津波予報システムによる津波警報・注意報の発表開始以来、遠地地震の場合に津波注意報を発表した初めての事例となった。日本への津波の到達は地震発生から約20時間後であったことから、津波予報データベースによる予測の他に、詳しい震源データや地震のメカニズムを用いた津波の数値シミュレーションを行い、その結果と海外の潮位データとを比較しながら日本での津波の高さを予測した。
ハワイのヒロ及びカフルイは、津波の波源と日本の間に位置していること、2001年にペルーで発生した地震による津波の記録と比較できることから、重点的に監視した。ヒロ及びカフルイで観測された津波の第一波の振幅はシミュレーション結果とほぼ一致しているが、後続波についてはシミュレーションよりもやや小さくなった(図1)。また、ヒロにおける津波の最初の部分の振幅は2001年と類似していた(図2)。
これらのことから、この地震による津波は2001年と同程度あるいはやや小さいと考え、日本沿岸における津波の高さは、数10cm程度を予想して津波注意報を発表し、実際にほぼ予想通りの津波が観測された。津波の数値シミュレーションの予測より観測された津波が小さかったのは、シミュレーションに用いた地震の震源が、実際には、その一部が陸地にかかっていたためと考えられる。
図1 ヒロおよびカフルイにおける津波シミュレーションと観測記録との比較
図2 2001年6月の地震による津波と今回の地震による津波の比較
上図は今回の地震による津波の波形(赤が原波形、緑は潮汐が除去された波形)、下図は2001年6月の地震による津波の波形。いずれも、ハワイのヒロで観測されたもの。
(米国の西海岸/アラスカ津波警報センターのウェブサイトより)