大分県の大雨のポイント
~これだけは知っちょってほしい!~
近年、毎年のように大雨災害が発生しています。令和5年7月10日、大分県では梅雨前線の影響で、日田市と中津市に大雨特別警報を発表しました。山国川が氾濫するなど、県内各地で浸水や洪水、土砂災害が発生しました。
そこでこのページでは、今後も起こる可能性が高い大雨に関する知識を身に付け、いざという時にどのような防災気象情報に注目すれば良いのかをご紹介していきます。
大分県で発生する大雨は、主に2パターンに分類されます。一つ目は
南西風パターン、二つ目は
南東風パターンです。大雨のパターンごとにメカニズムや災害の発生しやすい地域に違いがありますので、パターンごとにご紹介いたします。
1. 南西風パターン
★ 南西風パターンは、梅雨の時期に多い、大分県西部を中心に大雨となるパターンです。前線が対馬海峡~九州北部付近に位置している場合に起こりやすく、南西から暖かく湿った空気が次々と流れ込み、大分県西部を中心に大雨となります。
★ 具体的には、令和2年7月豪雨や、平成24年7月豪雨が挙げられます。この時の、人的被害・社会的被害は甚大なものとなりました。
①令和2年7月豪雨(令和2年7月6日から8日にかけての大分県の大雨)
大雨の概要
令和2年7月3日から8日にかけて梅雨前線が九州付近に停滞し線状降水帯が複数発生するなど、九州各県の広範囲で記録的な大雨となりました。
大分県は、7月6日から8日にかけて記録的な大雨となり、甚大な被害をもたらす災害となりました。
当時の被害状況について
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日田市の被害状況 (日田市HPより引用) |
日田市の三隈川の様子 (日田市HPより引用) |
九重町の被害の様子 (九重町HPより引用) |
アメダス椿ヶ鼻(日田市)における令和2年7月6日0時からの1時間降水量と、積算降水量を示しています。
水色の棒グラフが1時間毎の降水量で、赤色の線で描いたのが7月6日0時からの積算降水量です。
そして、ピンク色で示したのが、7月における1か月の降水量の平年値です。
7月6日から8日にかけての2, 3日の間に、平年で1か月かけて降る雨が一気に降ってきたことが分かります。
このような極端な降水に見舞われると、上に示した日田市や九重町における大雨被害が発生します。
死者:5名 (由布市4名, 日田市1名)
負傷者:5名(別府市1名, 日田市2名, 竹田市2名)
床上浸水:129棟
大分県庁 「令和2年7月豪雨」に関する災害情報(最終報)
大分県は、特に7月6日から8日にかけて記録的な大雨となり、川の氾濫で6名の方が犠牲となるなど、甚大な災害となりました。
当時の気象状況について
梅雨時期によくみられる西部中心の大雨メカニズムでした。
この時期の九州に流れ込む暖かく湿った空気は2種類あります。一つは「太平洋高気圧を回る暖かく湿った空気」もう一つは「中国大陸からの暖かく湿った空気」です。
九州北部付近に梅雨前線が位置しているときに、東シナ海でたっぷりと水分を補給した二つの湿った空気が前線の南側で合流しています。
陸地等の影響でこの暖かく湿った空気が上昇し、大雨をもたらす雨雲が発生しました。
さらに、線状降水帯が発生し、同じ場所で猛烈な雨が降り続き、記録的な大雨となりました。
解析雨量(気象レーダーの観測値を雨量計で補正した降水量)
7月7日には日田市中津江付近と天瀬付近と玖珠町付近に、7月8日には竹田市竹田付近と豊後大野市緒方付近に、
それぞれ記録的短時間大雨情報を発表しました。
- 猛烈な雨とは, 1時間に80ミリ以上の雨で, 息苦しさや恐怖を感じるような雨です。
- 人が土砂降りだと感じる雨は1時間に20~30ミリであることを踏まえると, その凄まじさがわかります。
- 記録的短時間大雨情報は, 大分県では1時間に110ミリ以上の雨を観測した時に発表する情報です。
②平成24年7月九州北部豪雨(平成24年7月12日から14日にかけての大分県の大雨)
大雨の概要
11日午後に朝鮮半島付近に位置していた梅雨前線は、12日朝には対馬海峡まで南下しました。
前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだため大気の状態が不安定となり、熊本県や大分県を中心に、非常に発達した雨雲が次々と流れ込みました。
13日朝まで対馬海峡に停滞していた梅雨前線は、午後には朝鮮半島まで北上し、14日まで停滞。
14日には、福岡県、大分県を中心に発達した雨雲が次々と流れ込み、大雨となりました。
当時の被害状況について
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花月川夕田橋付近の越水(写真提供:国土交通省 九州地方整備局) |
耶馬渓橋付近の増水状況(写真提供:国土交通省 九州地方整備局) |
竹田市での被害状況(平成24年度 消防白書より) |
アメダス椿ヶ鼻(日田市)における平成24年7月12日から14日にかけての1時間降水量と、積算降水量を示しています。
水色の棒グラフが1時間毎の降水量で、赤色の折れ線で描いたのが7月12日0時からの積算降水量です。
そして、ピンク色で示したのが、7月における1か月の降水量の平年値です。
7月12日から14日に掛けて、平年であれば1か月かけて降る雨が一気に降ってきたことが分かります。
このような極端な降水に見舞われた結果、耶馬渓での河川の増水や竹田市での木材の流入などの被害が発生しました。
当時の気象状況について
平成24年7月九州北部豪雨も令和2年7月豪雨同様に、九州北部付近に梅雨前線が位置しているときに大雨が発生しています。
7月12日から14日にかけて大分県には暖かく湿った空気が流れ込み続け、同じ場所で猛烈な雨が降り続いたため記録的な大雨となりました。
解析雨量(気象レーダーの観測値を雨量計で補正した降水量)
12日未明から朝にかけて、大分県西部を中心に非常に激しい雨となり、13日は、昼前から昼過ぎにかけて、大分県の西部、北部、中部を中心に激しい雨となりました。
また、14日未明から昼前にかけて、大分県の西部、北部、中部を中心に激しい雨となり、その後も夕方まで断続的に強い雨が降りました。
- ここまでは、6月から7月にかけての梅雨時期に多い、南西からの暖かく湿った空気の流入による大雨を見てきました。
2. 南東風パターン
- 南東風パターンは、夏から秋にかけての南部を中心に大雨となるパターンです。
- 台風や低気圧が大分県の南部や西部にある場合に多い大雨のパターンで、南東から暖かく湿った空気が流れ込み、
大分県南部を中心に大雨となります。南東風が長時間続くと、総降水量が多くなりやすい特徴があります。

二つの大雨パターンがあるんだね むんむん
平成29年台風第18号による9月16日から17日にかけての大分県の大雨
大雨の概要
平成29年台風第18号は、9月9日にマリアナ諸島近海で発生し、13日に宮古島の東海上を通過して東シナ海へ進みました。
17日11時半ごろに鹿児島県南九州市を通過し、12時頃に鹿児島県垂水市付近に上陸。その後日向灘に抜け、17時頃に高知県宿毛市付近に再上陸しました。
台風第18号の経路図
断続的に猛烈な雨となり、記録的短時間大雨情報を、大分県内で計4回発表しています。
当時の被害状況について
9月16日から17日にかけてのアメダス臼杵における1時間降水量(青い棒グラフ)と、積算値(赤い折れ線)を示しています。
9月16日と17日のたった二日間で、普段なら9月の1か月かけて降る雨の1.7倍近い雨が降っていることがわかります。
また、17日の降水量はアメダス佐賀関(大分市)で334.0mmとなり年間の極値を更新し、アメダス佐伯(佐伯市)では356.5mmと9月の極値を更新しました。
当時の気象状況について
夏から秋にかけてよくみられる、南部を中心とする大雨メカニズムでした。
平成29年台風第18号の事例では、台風が徐々に大分県の西側から南西側へと移動してきました。
この時、大分県では南東風により、暖かく湿った空気が大分県南部に吹き続けることで、大雨をもたらしました。
天気図の中で、ピンク色の矢印で、台風による南東からの暖かく湿った空気が
大分県南部に向かって流入している様子を示しました。
解析雨量
大分県では、17日に
記録的短時間大雨情報を4回発表しています。
09時までの1時間:
佐伯市佐伯付近で約110ミリ
佐伯市鶴見付近で約110ミリ
佐伯市米水付近で約110ミリ
14時30分までの1時間:
津久見市付近で約120ミリ
佐伯市上浦付近で約110ミリ
15時40分までの1時間:
津久見市付近で約110ミリ
15時までの1時間:
佐伯市佐伯付近で約110ミリ
★まとめ★
大分県で発生する大雨は、主に2つのパターンに分類されます。
一つ目は南西風パターン、二つ目は南東風パターンです。
①南西風パターン:梅雨の時期に発生しやすく、西部を中心に大雨となることがあります。
②南東風パターン:夏から秋にかけての台風の時期に発生しやすく、南部を中心に大雨となることがあります。
★ 梅雨や台風などの大雨の時期には、気象台が段階的に発表する防災気象情報にご留意ください。
★ また、大雨の状況は時々刻々と変化しますので、常に最新の情報をご利用願います。
★ 何かご不明な点等ございましたら、いつでも気軽に気象台へとお問い合わせください。