クラウドクラスター

一般には独立して存在することが多いCbが、集合して巨大な塊を形成することがあり、この塊をクラウドクラスターあるいはCbクラスターと呼ぶ。クラウドクラスターは様々なサイズや発達段階の対流雲で構成され、水平スケールは数百kmに達する。レーダー画像で認識できるメソ対流系システムとしてスコールラインやマルチセルなどが知られているが、クラウドクラスターは衛星画像で認識できるスケールの大きな対流系システムで、熱帯や夏の大陸上で見られることが多い。

Maddox(1980)は、北アメリカ大陸上で竜巻・ひょう・雷雨など激しい現象をもたらすメソαスケールの対流システムとして、MCC(MesoscaleConvectiveComplex)を衛星から定義した。MCCは-32℃より低い雲頂温度の領域が10万k㎡(直径およそ350km)以上の面積を持ち、6時間以上持続するほぼ円形(長径と短径の比が0.7以上)をした雲域と定義される。MCCは大陸上で発達するクラウドクラスターの典型の一つで、大気成層は不安定であるが総観スケールの対流強制が弱いとき、夕方遅くから夜にかけ形成されやすい。図1および図2はひまわり8号で観測されたMCCの例で、直径300km以上のほぼ円形のクラスター(図中Cの雲域)が中国大陸にある。

日本周辺については岩崎・武田(1993)がメソスケール雲クラスターと呼んで、梅雨期の出現特性を調査している。この中でメソスケール雲クラスターを、輝度温度が-50℃以下の雲域が円形ないし楕円形を呈し、その直径が100km以上であること、雲塊の縁(特に西側)で輝度温度の勾配が大きいこと、および中緯度で発生したこと、と定義した。調査によれば、日本周辺の梅雨期の雲クラスターの特徴として平均寿命は14時間未満、最大直径の平均は170kmであった。また、最大直径が大きいほど寿命が長いこと、最大直径が200km以上の大きな雲クラスターは大陸上に多く、小さい雲クラスターは海洋上で多く形成される傾向があった。日本付近で発生する大型のクラウドクラスターの多くは東シナ海で発生・発達し、九州地方に大雨をもたらすことがある。

図3は2016年6月20日12UTCの赤外画像で、九州西岸にほぼ円形の雲クラスターが見られる。この雲クラスターのスケールはやや小さいが、ほぼMCCに匹敵するもので、その後東進を続け、九州中部を通過後衰弱した。この雲域により、長崎県雲仙岳では1時間に124.5mm、熊本県甲佐町では150.0mm、山都町でも126.5mmなどの猛烈な雨が降った。図3-12-4は、そのときの地上天気図である。

バンド13による赤外画像 図1 2015年7月22日12UTCのバンド13による赤外画像

RGB(Night Microphysics)画像 図2 2015年7月22日12UTCのRGB(Night Microphysics)画像

バンド13による赤外画像 図3 2016年6月20日12UTCのバンド13による赤外画像

地上天気図 図4 地上天気図