かなとこ巻雲

最盛期から衰弱期の積乱雲(Cb)は、圏界面によって雲頂が抑えられ上層雲(Ci)が水平方向に流れ出し「かなとこ」状の構造を形成する。この上層雲を「かなとこ巻雲」と呼ぶ。 かなとこ巻雲は積乱雲から主に風下側に羽毛状にのび、その雲縁は毛羽立った形状を示す(図1)。かなとこ巻雲の雲頂高度は、積乱雲中心部と同程度であるが、強い雨を伴わないので、積乱雲中心部との識別が重要である。

図2及び図3は、千葉県の房総半島に発生した積乱雲とその中心から伸びるかなとこ巻雲を可視画像及び赤外画像で示したものである(2016年8月4日05UTC)。可視画像で雲域の表面がでこぼこしているように見える部分が積乱雲の中心となる。図4には、可視画像と同時刻のレーダーエコーを重ね合わせて表示した。積乱雲の中心部分は、降水を伴っており、レーダーエコーが観測されている。一方、積乱雲の中心から北東に伸びるかなとこ巻雲は上層雲であるためレーダーには写っていない。図5には、その時の様子を対岸の神奈川県から撮影した写真を示した。積乱雲の中心から左側手前に見えるのがかなとこ巻雲である。

かなとこ巻雲の模式図 図1 かなとこ巻雲の模式図

可視画像(B03) 図2 可視画像(B03)2016年8月4日05UTC
赤外画像(B13) 図3 赤外画像(B13)2016年8月4日05UTC
可視画像(B03)とレーダー合成図 図4 可視画像(B03)とレーダー合成図
2016年8月4日05UTC
積乱雲と推定される雲 図5 千葉県房総半島に発生した積乱雲 (対岸の神奈川県から撮影 )