画像特性(バンド8からバンド10)

バンド8(6.2μm)

バンド8は6.2μmに中心波長を持ち、水蒸気バンドのうちもっとも短い中心波長をもちます。荷重関数では、標準大気で300~400hPa付近にピークが見られます。バンド8は、水蒸気による吸収が多い特性を持つことから水蒸気画像と呼ばれ、画像における明暗がバンド8では主に対流圏上層(ただし特定の高度のみではない)の水蒸気の多寡に対応します。また、AHI搭載の水蒸気バンドのうち、従来利用されてきたひまわり6号・7号における水蒸気センサの観測波長(6.8μm)ともっとも特性がよく似た波長域であり(Murata et al.,2015)、従来からの水蒸気画像の利用者はバンド8画像を後継の水蒸気画像として利用しています。

バンド9(6.9μm)

バンド9は6.9μmに中心波長を持ちます。荷重関数では、標準大気で400~500hPa付近にピークが見られ、バンド8のピークに対応する高度よりやや低くなります。このような特性からバンド9画像ではバンド8画像よりやや低い対流圏上中層の水蒸気の多寡を捉えることができます。

バンド10(7.3μm)

バンド10は7.3μmに中心波長を持つ、水蒸気バンドのうちもっとも長い中心波長を持ちます。荷重関数では、標準大気で500~600hPa付近にピークが見られ、水蒸気画像のなかでは最も低くなります。そのためバンド10画像ではバンド9よりもさらに低い対流圏中層付近の水蒸気の多寡を捉えることができます。 また、バンド10は大気中の水蒸気だけでなく、二酸化硫黄による吸収の影響があるため、二酸化硫黄が含まれる火山性ガスの識別と追跡にも用いることができます。

図1,2,3はカムチャツカ半島のツパノフスキー火山の噴煙の事例(2016年2月9日10UTC)です。バンド10画像(図1)で噴火に由来すると考えられる噴煙が確認できます。バンド8画像(図2)でも噴煙が見られますが不明瞭です。バンド8とバンド10の差分画像(図3)ではバンド10の二酸化硫黄による吸収の影響が寄与するため噴煙が明瞭です。また、バンド11(8.6μm)でも二酸化硫黄による吸収があり、画像で噴煙が明瞭でした。

図1 バンド10画像(2016年2月9日10UTCのカムチャツカ半島のツパノフスキー火山の噴煙の事例)
図2 バンド8画像(2016年2月9日10UTCのカムチャツカ半島のツパノフスキー火山の噴煙の事例)
図3 バンド10とバンド8の差分画像(2016年2月9日10UTCのカムチャツカ半島のツパノフスキー火山の噴煙の事例)