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地球温暖化と十年規模変動

世界の平均気温上昇の近年における停滞

世界の平均気温は長期的に上昇しています(世界の年平均気温)。IPCC第5次評価報告書は、人間による影響が20 世紀半ば以降に観測された地球温暖化の支配的な原因であった可能性が極めて高いとしています(IPCC, 2013)。しかし気温の変化には、自然変動によって数年~数十年程度の比較的上昇率が大きい期間と小さい期間があります(図1)。最近では2000年前後から2010年代前半にかけて気温の上昇率が小さい期間になっていました。この間も地球温暖化の主要な原因物質とされる二酸化炭素が増加を続け(地球全体の二酸化炭素の経年変化)、地球に入ってくる熱が出て行く熱よりも大きい状態が続いている(Loeb et al., 2012)ことにより地球が加熱され続けていました。

世界の年平均気温偏差

図1 世界の年平均気温偏差

細線(黒)は各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青)は偏差の5年移動平均、直線(赤)は長期的な変化傾向を示します。基準値は1981~2010年の30年平均値。

こうした気温上昇の停滞の原因について、IPCC第5次評価報告書では火山噴火の影響や11年周期の太陽活動が弱まる時期にあることにより地上に届く太陽放射が減少したことと、海面付近から海洋内部へ運ばれる熱が増えたことなど、自然変動によって地球表面の温度上昇が抑えられたという二つの可能性を指摘しています。

後者に挙げた自然変動については、海洋が重要な役割を果たしていると考えられています。海洋は、1971年から2010年の40年間で気温の上昇や氷の融解などを含む地球上のエネルギー増加量の約90%を蓄積して(海洋への熱の蓄積について)います。すなわち、自然変動によってより多くの熱が海面付近から海洋内部に運ばれると、海洋内部のわずかな水温上昇で世界の平均気温の上昇が抑えられることになります。

世界の平均気温上昇の停滞と海洋の十年規模変動 

世界の平均気温上昇の停滞が見られた2000年前後から2010年代前半にかけて、太平洋で貿易風の強い状態が持続し(de Boisséson et al., 2014)、平均的には太平洋赤道域の中部から東部で海面水温が低いラニーニャ現象に似た状態となっていました(Urabe and Maeda, 2014;貿易風とエルニーニョ/ラニーニャ現象の関係)。また、この時期、北太平洋では、太平洋十年規模振動(Pacific Decadal Oscillation : PDO)指数の負の値がおおむね続いていて、赤道域の海面水温がラニーニャ現象に似た状態にあることと対応しています。つまり、太平洋全体では海面水温において太平洋数十年規模振動(Interdecadal Pacific Oscillation : IPO)が負の指数となる状態がおおむね続いていました。England et al.(2014)はこのような時期は海面から海洋表層に熱が取り込まれやすく、地球温暖化による世界の平均気温の上昇が抑えられやすいと指摘しています。

一方、太平洋ではなく大西洋や南大洋での海洋内部への熱の取り込みが重要だという指摘もあります(Chen and Tung, 2014)。北大西洋の平均海面水温は60~100年程度の周期で上昇、下降を繰り返しており大西洋数十年規模振動(Atlantic Multidecadal Oscillation : AMO)と呼ばれています。1951年以降の地球温暖化全体へのAMOの寄与は非常に小さいものの(IPCC, 2013)、世界の平均気温の十年規模の変動に関連しているという指摘があります(Knight et al., 2005)。AMOは大西洋の南北循環(Atlantic meridional overturning circulation : AMOC)と関連していて、海洋内部へ運ばれる熱が増えることで地上付近の気温上昇を抑えることに寄与します(Katsman and Oldenborgh, 2011)。

2000年前後から2010年代前半にかけての世界の平均気温上昇の停滞の要因については、IPCC第5次評価報告書が公表されたあとも研究が続けられていて、総合的な結論はまだ得られていません(Medhaug et al., 2017; Hedemann et al., 2017 などを参照のこと)。しかし、実際に海洋内部の水温は上昇を続けており(表層水温の長期変化傾向(全球平均))、仮に自然変動による海洋内部への熱の輸送の増加が気温上昇停滞の一因だとすると、その変動の状況が反転したときには世界の平均気温の上昇速度が今度は増加することになります(England et al., 2014)。地球温暖化の進行を適確に検出するには、大気だけでなく、海洋を含めた気候システム全体を対象として捉えた上で、長期的な観点で変化傾向を監視することが重要です。

参考文献

  • Chen, X., and K. Tung (2014): Varying planetary heat sink led to global-warming slowdown and acceleration. Science, 345, 897-903, doi:10.1126/science.1254937.
  • de Boisséson, E., M. A. Balmaseda, S. Abdalla, E. Källén, and P. A. E. M. Janssen (2014): How robust is the recent strengthening of the Tropical Pacific trade winds? Geophys. Res. Lett., 41, 4398-4405, doi:10.1002/2014GL060257.
  • England, M. H., S. McGregor, P. Spence, G. A. Meehl, A. Timmermann, W. Cai, A. S. Gupta, M. J. McPhaden, A. Purich, and A. Santoso (2014): Recent intensification of wind-driven circulation in the Pacific and the ongoing warming hiatus. Nature Climate Change, 4, 222-227, doi:10.1038/NCLIMATE2106.
  • Hedemann, C., T. Mauritsen, J. Jungclaus, and J. Marotzke (2017): The subtle origins of surface-warming hiatuses. Nature Climate Change, 7, 336-339, doi:10.1038/nclimate3274.
  • IPCC (2013): Climate Change 2013: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Stocker, T.F., D. Qin, G.-K. Plattner, M. Tignor, S.K. Allen, J. Boschung, A. Nauels, Y. Xia, V. Bex, and P.M. Midgley (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 1535 pp.
  • Katsman, C. A., and G. J. van Oldenborgh (2011): Tracing the upper ocean's "missing heat". Geophys. Res. Lett., 38, L14610, doi:10.1029/2011GL048417.
  • Knight, J. R., R. J. Allan, C. K. Folland, M. Vellinga, and M. E. Mann (2005): A signature of persistent natural thermohaline circulation cycles in observed climate. Geophys. Res. Lett., 32, L20708, doi:10.1029/2005GL024233.
  • Loeb, N. G., J. M. Lyman, G. C. Johnson, R. P. Allan, D. R. Doelling, T. Wong, B. J. Soden, and G. L. Stephens (2012): Observed changes in top-of-the-atmosphere radiation and upper-ocean heating consistent within uncertainty. Nature Geosci., 5, 110-113, doi:10.1038/ngeo1375.
  • Medhaug, I., M. B. Stolpe, E. M. Fischer, and R. Knutti (2017): Reconciling controversies about the 'global warming hiatus'. Nature, 545, 41-47, doi:10.1038/nature22315.
  • Urabe, Y., and S. Maeda (2014) : The relationship between recent Japan climate and decadal variability. SOLA, 10, 176-179, doi:10.2151/sola.2014-037.

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