キーワードを入力し検索ボタンを押下ください。

深層循環の変動について

海洋の深層循環は、海水の水温と塩分による密度差によって駆動されており、熱塩循環と呼ばれています。 熱塩循環は、現在の気候において、表層の海水が北大西洋のグリーンランド沖と南極大陸の大陸棚周辺で冷却され、重くなって底層まで沈みこんだ後、世界の海洋の底層に広がり、底層を移動する間にゆっくりと上昇して表層に戻るという約1000年スケールの循環をしています(図1)。

地球温暖化等の気候変動の影響により、底層まで沈みこむような重い海水が形成される海域の海水の昇温や、降水の増加や氷床の融解などによる低塩分化によって、表層の海水の密度が軽くなり、沈みこむ量が減少し、深層循環が一時的であれ弱まるのではないかと考えられています。 北大西洋での深層水形成が弱まった場合、南からの暖かい表層水の供給が減り、北大西洋およびその周辺の気温の上昇が比較的小さくなることが指摘されています。

気候変動に関する政府間パネル第5次評価報告書(IPCC, 2013)は、大西洋の深層循環の変化傾向を示す観測上の証拠はないが、1992年から2005年の期間において3000mから海底までの層で海洋は温暖化した可能性が高いと報告しています。現在、観測によって大西洋の深層循環の変動をとらえるため、米国とイギリスが協力して北緯26.5度に沿った海域で共同観測を2004年から継続しており(http://www.rsmas.miami.edu/users/mocha/)、今後観測結果にもとづいたより詳細な変動が明らかにされることが期待されます(Cunningham et al., 2007; Kanzow et al., 2007; Johns et al., 2011)。 大西洋の深層循環の予測については、IPCC(2013)によると、深層循環が数十年規模の自然変動により強まる時期があるかもしれないが、21世紀を通じて弱まる可能性は非常に高いとされています。 また、21世紀中に突然変化または停止してしまう可能性は非常に低いものの、21世紀より後の将来については、確信度は低いが、大規模な温暖化が持続することで大西洋の深層循環が停止してしまう可能性を否定することはできないと報告しています。

深層循環の模式図

図1) 深層循環の模式図

海洋の循環を表層と深層の二層で単純化したもので、青い線は深層流、赤い線は表層流を示す。 (IPCC(2001)をもとに作成)

参考文献

  • IPCC, 2001: Climate Change 2001: Synthesis Report. A Contribution of Working Groups I, II, and III to the Third Assessment Report of the Integovernmental Panel on Climate Change [Watson, R.T. and the Core Writing Team (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge,United Kingdom, and New York, NY, USA, 398 pp.
  • IPCC, 2013: Climate Change 2013: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Stocker, T.F., D. Qin, G.-K. Plattner, M. Tignor, S.K. Allen, J. Boschung, A. Nauels, Y. Xia, V. Bex and P.M. Midgley (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 1535 pp.
  • Cunningham, S.A., T. Kanzow, D. Rayner, M.O. Baringer, W.E. Johns, J. Marotzke, H.R. Longworth, E.M. Grant, J.J.-M. Hirschi, J.M. Beal, C.S. Meinen and H.L. Bryden, 2007: Temporal variability of the Atlantic meridional overturning circulation at 26.5°N. Science, 317, 935-938.
  • Kanzow, T., S.A. Cunningham, D. Rayner, J.J.-M. Hirschi, W.E. Johns, M.O. Baringer, H.L. Bryden, L.M. Beal, C.S. Meinen and J. Marotzke, 2007: Observed flow compensation associated with the MOC at 26.5°N in the Atlantic. Science, 317, 938-941.
  • Johns W.E., M.O. Baringer, L.M. Beal, S.A. Cunningham, T. Kanzow, H.L. Bryden, J.J.-M. Hirschi, J. Marotzke, C.S. Meinen, B. Shaw and R. Curry, 2011: Continuous, array-based estimates of Atlantic Ocean heat transport at 26.5°N. Journal of Climate, 24, 2429-2449.

このページのトップへ