海氷域面積の長期変化傾向(北極域)

平成23年10月20日発表
気象庁地球環境・海洋部

診断(2011年)

北極域の海氷域面積は、1979年以降、長期的に見ると減少傾向を示しています。特に、年最小値において減少傾向が顕著で、2011年までの減少率は8.5万平方キロメートル/年となっています。2011年の海氷域面積の年最小値は、446万平方キロメートルとなり、2007年に次いで2番目に小さい記録となりました。

北極域の海氷域面積の年最小値の経年変化(1979年~2011年)
北極域の海氷域面積の年最小値の経年変化(1979年~2011年)
青色の折れ線は北極域年最小値の海氷域面積の経年変化を示す。点線は変化傾向。


解説

北極域の海氷域面積(年最小値)の経年変化

北極域の海氷域面積は、1979年以降、長期的に見ると減少傾向を示しています。 特に、年最小値において減少傾向が顕著で、2011年までの減少率は 8.5 [6.7~10.4] 万平方キロメートル/年となっています(角括弧中の数字は95%の信頼区間を示す)。

2011年の北極域の海氷域面積の経過

北極域の海氷域面積は例年3月初め頃から減少に転じます(図:北極域の海氷域面積の推移)。 2011年は3月9日に年最大値(1489万平方キロメートル)となり、年最大値としては2006年に次いで2番目に小さい記録となりました。 これ以降、海氷域面積は減少に転じ、6月以降は海氷域の減少スピードが平年より上がり、特に7月はこの時期として海氷域面積がほぼ過去最小となりました。 7月下旬から8月初めは海氷域の減少スピードが鈍り、海氷域面積は2007年を上回るようになりました。その後は再び減少スピードが上がり、9月9日には年最小値となり、その後、海氷域面積は増加に転じました。
 2011年の海氷域面積の年最小値は446万平方キロメートルとなり、2007年に次いで2番目に小さい記録となりました。

海氷域面積年最小時の北極域の海氷分布

2011年の海氷域面積年最小時には、2007年と比べラプテフ海で海氷が少なくなりましたが、2010年の最小時と同様、東シベリア海から北極海中央部にかけて密接度が低いながらも海氷が残りました(図:海氷域面積年最小時の北極域の海氷分布)。 2011年の海氷域面積の最小時の分布を同時期の平年分布と比較すると、ボーフォート海からラプテフ海にかけての北極海の太平洋側で海氷域が顕著に減少しています。また、カナダの多島海付近やカラ海でも海氷域の減少が見られます。

2011年融解期の北極域の気象経過

海氷域面積の年最小値が過去最小となった2007年は、6月から9月にかけて海氷域を顕著に減少させる気圧配置のパターンが続きました。 その気圧配置のパターンは、ボーフォート海に高気圧の中心があり、シベリアからその沿岸に低気圧があるパターンです。この気圧配置では、北極海の太平洋側は、概ね南から北へ風が吹き海氷を北へ移動させ、また気温が平年より高くなり、海氷域を減少させる効果があります。
 2011年の6月から7月中旬までは概ね上記のような気圧配置となり、急速に海氷域が減少しました(図:北極域の月平均の海面気圧と925hPaの気温)。 7月下旬から8月初めは、北極海中央部に低気圧が広く存在し、海氷域を顕著に減少させるパターンではなく、海氷域の減少を鈍らせました。 8月は概ね北極海中央部に高気圧が広く存在しました。9月は上記パターンとは逆になり、シベリアからその沿岸に高気圧があり、北極海中央部に低気圧があって、海氷域の増加を促しました。 また、7月と8月の気温は、ラプテフ海付近やカナダの多島海付近で概ね平年より3度前後高く、海氷が融解しやすい状況だったと推定されます。
 なお、北極域における海氷域面積(年最小値)の年々変動の要因については、気象の影響の他に海氷の厚さや海洋の影響などがあり、各機関で研究が行われています。


備考

この「海氷域面積の長期変化傾向(北極域)」の診断は、NSIDC(アメリカ雪氷データセンター)提供の観測データを用いており、2011年4月1日以降はその速報値を用いて解析しています。観測や解析の方法については、北極域と南極域の海氷解析の解説を参照して下さい。

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