日本沿岸海況監視予測システムの導入について

令和2年11月10日
令和4年1月12日更新

日本沿岸海況監視予測システムの概要

  気象庁では沿岸域におけるより詳細な海流・海水温が把握可能な新たな海洋データ同化・予測システム(日本沿岸海況監視予測システム(以下、JPNシステム))を開発し、その運用を令和2年10月28日から開始しました(令和2年10月23日報道発表資料「きめ細かな海流・海水温の情報提供を開始~潮位情報の改善~を参照)。 JPNシステムでは、水平解像度を従来の10kmから2kmに高解像度化し、さらに、潮汐、気圧による海面の変化、河川水の流出など、沿岸域で重要となる様々な物理過程を新たに導入しました。 また、人工衛星、Argoフロート、船舶などによる観測値と海洋モデルを組み合わせて作成する実況の解析値の作成手法として、時々刻々と変化する観測の情報をより正確に扱う高度な手法(4次元変分法)を採用しています。 これにより、従来システムでは扱うことが難しかった沿岸域の水温、海流をより詳細に表現することが可能となり、気象庁HP「海洋の情報」において、沿岸域の詳細な流れや水温を提供開始しています。
  海洋の健康診断表で扱う日本近海、北西太平洋、太平洋の海域の表層水温・海流についても、令和2年11月10日よりJPNシステムのデータを導入しました。 海氷情報についても、令和3年12月1日よりJPNシステムのデータを導入しています。

JPNシステムの構成

  JPNシステムの構成は、図1に簡略化して示したとおり、全球モデル(解像度約100km)、北太平洋モデル(解像度約10km)、日本近海モデル(解像度約2km)からなります。 これらのモデルで解析と予測計算を行います。 予測計算は、予報発表日を1日目とすると日本近海モデルは10日先まで、北太平洋モデルは約1か月先まで行っています。

図1 JPNシステムの構成

図1 JPNシステムの構成

  なお、4次元変分法による解析は膨大な計算資源を使うため、北太平洋モデルの海域における解析では、日本近海以外の海域で北太平洋モデルの解像度10kmよりもやや粗い解像 度のモデル(北太平洋解析モデル)を使用しています。
  海洋の健康診断表の表層水温・海流データには、北太平洋モデル、北太平洋解析モデル、日本近海モデルの結果が利用されています。

表層水温の平年値の更新

  表層水温や親潮面積など平年値は長い期間のデータが必要となります。JPNシステムの4次元変分法による解析は膨大な計算資源を使うため、2008年以降のデータしかありません。 それ以前の期間は、衛星海面高度計データのある1993年から2007年までについて、4次元変分法に比べて計算量が少なくできる3次元変分法を北太平洋解析モデルに適用して解析計算を行いました。これらの解析値から1993年~2017年の25年間の平年値(統計量)を作成し、表層水温や親潮面積などの平年値として使用しています。

変更のあるコンテンツ

「海洋の健康診断表」のコンテンツのうち、変更するものは以下のとおりです。

◎表層水温・海流図(実況分布図)

日別図は2018年1月1日以降、旬・月平均図は1993年1月から更新しました。 また、平年値を1993-2017年の平均値としています。日本近海の日別図は日本近海モデル、北西太平洋の日別図は北太平洋モデル、旬・月平均図は全て北太平洋解析モデルによる図です。

表層水温図(分布図)

海流図(分布図)

北海道周辺、東北周辺海域など海域別ページの「各種資料」の分布図も同様に変更しています。次の海域別のメニューからご覧ください。

海域別のメニュー / [北海道周辺] [東北周辺] [関東・東海・北陸周辺] [近畿・中国・四国周辺][九州・山口周辺][沖縄周辺][日本海]

◎日本近海 海流予想図

「海洋の情報」のページのJPNシステムの海流予想図へのリンクとしました。

◎海面高度(沖縄周辺海域)の実況図・予想図

定期診断表「海面水温・海流(沖縄周辺海域)の参考図として掲載している海流・海面高度・表層水温(沖縄周辺海域)の実況図・予想図の図を、表層水温・海流の実況図と10日先の予測図は日本近海モデル、20日先と30日先は北太平洋モデルから作成しています。また海面高度は、実況から30日先まで北太平洋モデルから作成され、偏差は1993-2017年平年値からの偏差となっています。

◎親潮面積/対馬暖流の勢力の時系列

親潮面積及び対馬暖流の勢力の値は、北太平洋解析モデルと(一部北太平洋モデル)の半旬平均した100m深水温から計算しています。平年値などの統計量は1993-2017年の25年間で計算されています。

◎黒潮までの距離

黒潮流軸までの距離の値は、日本近海モデルの半旬平均した50m深海流から計算しています。

◎定期診断表・海面水温・海流1か月予報について

令和2年11月上旬の旬ごとの診断、令和2年10月の月概況、令和2年11月上旬発表の海面水温・海流1か月予報からJPNシステムの結果を利用した診断・予報となります。なお、診断についてはそれ以前に発表した期間についての変更は行いません。 日本近海と、北海道周辺、東北周辺海域など海域別の診断が対象となります。

【以下は令和3年12月1日より変更】

◎海氷情報

海氷に関する診断表、予報、データに含まれる以下の情報はJPNシステムの結果を利用しています。

その他、全般海氷情報・地方海氷情報の見通しにもJPNシステムの結果を利用します。

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