平成20年2月29日発表
気象庁地球環境・海洋部
診断（2007年）
- 1990年代初めまでは、黒潮大蛇行が頻繁に発生していましたが、それ以降は2004年7月〜2005年8月を除き、非大蛇行の状態が続いています。
- 2007年の黒潮は、九州の東から潮岬にかけては、1月〜6月に離岸する時期がありました。また、潮岬以東では、2月〜6月に、東海沖を蛇行して流れました。
東海沖における黒潮流路の最南下緯度の経年変動（1961年1月〜2007年12月）
東海沖（東経136〜140度、図左の赤枠内）における黒潮流路の月ごとの最南下緯度（※注1）を細線で、13か月移動平均値を太線で示しています。オレンジ色は黒潮大蛇行の期間（下記「黒潮大蛇行とその判定基準について」を参照。）を表しています。黒潮流軸の最南下点が北緯32度より安定して南（左図の赤枠内）に位置していることが、黒潮大蛇行を判定する基準のひとつです。
（※注1）上図では1961年以降の表層水温客観解析値（0.25度格子）をもとに東海沖において深さ200mで15℃の等値線を黒潮流路としています。
串本と浦神の潮位差（串本の潮位から浦神の潮位を引いたもの）の経年変動（1961年1月〜2007年12月）
串本と浦神の月ごとの潮位差を細線で、5か月移動平均値を太線で示しています。オレンジ色は黒潮大蛇行の期間（下記「黒潮大蛇行とその判定基準について」を参照。）を表しています。潮岬で黒潮が離岸している（潮位差が小さい値に安定している）ことが、黒潮大蛇行を判定する基準のひとつです。
解説
長期変動
黒潮は、1960年代半ばから1970年代半ばまで、非大蛇行の状態でした。それ以降1990年代初めまでは黒潮大蛇行が頻繁に発生していました。その後再び、非大蛇行の状態が2004年前半まで続いていました。最近では、2004年7月〜2005年8月に大蛇行が発生しましたが、その後は、非大蛇行の状態が続いています。
2007年
2007年は、1月に黒潮は四国の南で離岸して流れていました。その後、離岸をもたらした波動は東進して、2月に黒潮は潮岬で離岸して流れるようになりました。2月下旬には、波動は東海沖に達し、黒潮は東海沖を蛇行して流れるようになりました。
4月には、東海沖の黒潮の最南下位置は北緯31度以南に達し、6月中旬まで、東海沖で蛇行して流れる状態が続きました。ただし安定した大蛇行流路とならず、6月下旬には蛇行していた黒潮の南端部が切り離され、東海沖を北緯33度に沿って東に流れるようになりました。
7月以降は、時折通過する波動の影響により、流路は三宅島と八丈島の南の間で変動しました。
黒潮大蛇行とその判定基準について
本州南方を流れる黒潮の流路には、大きく分けて2種類の安定したパターンがあります。一方は、東海沖で南へ大きく蛇行して流れる 「大蛇行流路」、他方は、四国・本州南岸にほぼ沿って流れる「非大蛇行流路」と呼ばれているものです。 「非大蛇行流路」はさらに、関東近海で小さく蛇行する「非大蛇行離岸流路」と、東海沖を直進し八丈島の北を通過する「非大蛇行接岸流路」に分けられます。「大蛇行流路」を「黒潮大蛇行」と呼んでいます。 黒潮大蛇行を判定する基準として、以下の2つの条件を設定しています。
（1）潮岬で黒潮が離岸している（串本と浦神の潮位差が小さい値に安定していることで判定）。
（2）東海沖（東経136〜140度）での黒潮流軸の最南下点が北緯32度より安定して南に位置している。
この基準によると、過去の黒潮大蛇行の期間は、以下のようになります。
- 1975年8月から1980年3月まで
- 1981年11月から1984年5月まで
- 1986年12月から1988年7月まで
- 1989年12月から1990年12月まで
- 2004年7月から2005年8月まで