展示室3 二酸化炭素濃度解析の結果

 本ページは、地表面付近と高度約6kmにおける大気中の二酸化炭素濃度の特徴について解説しています。 解説の内容やグラフは、大気の流れに伴う物質の輸送を計算するモデルを用いて、観測データから世界中の濃度分布を数値シミュレーションで推定した結果に基づいています。

二酸化炭素濃度は年々増加しています

 地表面も上空も大気中の二酸化炭素濃度の年平均値の推移をみると、年々増加しています。
これは主に人間活動による化石燃料の使用などにより大気中に排出された二酸化炭素が増加しているためです。地表面から排出された二酸化炭素の一部は植物や海洋によって吸収されていますが、残りは大気中に蓄積されます。
全球の二酸化炭素濃度の年平均値の推移
地表面付近(赤)と高度約6km(青)における全球の二酸化炭素濃度の年平均値の推移
(観測データを用いた数値シミュレーションによる推定値)

二酸化炭素濃度には季節変動があります

 二酸化炭素濃度の月平均値の推移をみると、濃度が夏に減少し冬には増加するという、1年周期で繰り返される季節変動がみられます。これは主に、植物が光合成や呼吸を介して大気と二酸化炭素のやり取りをする様相が、季節によって変化するためです。このようなやり取りは地表面付近で行われますが、大気の流れによる輸送によって上空の二酸化炭素濃度にも季節変動が反映されます。


全球の二酸化炭素濃度の月平均値の推移

植物活動による二酸化炭素のやりとり
地表面付近(赤)と高度約6km(青)における全球の二酸化炭素濃度の月平均値の推移
(観測データを用いた数値シミュレーションによる推定値)

植物活動による二酸化炭素のやりとり

北半球と南半球では二酸化炭素濃度の変動の特徴が異なります

 地表面と上空の二酸化炭素濃度を、北半球と南半球でそれぞれ平均したものを比較します。

 北半球と南半球を比べると、北半球の方が人間活動が活発なので人為起源の二酸化炭素の排出も活発です。また北半球の方が陸地が広く分布しており光合成を行う植物が多いため二酸化炭素濃度の季節変動が大きくなります。


北半球と南半球の地理分布

北半球と南半球の地理分布


 二酸化炭素濃度の推移を見ると、1年周期で繰り返される季節変動をしています。北半球の季節変動の幅は大きくて、秋から春にかけて高い濃度となり夏に低い濃度になっています。その一方、南半球ではその季節変動の幅は小さくなっています。

 陸地が広く分布し、光合成を行う植物が多い北半球は、1年のうちで春に二酸化炭素濃度が最大となり、その後急激に濃度が下がっています。これは春になり植物の光合成が活発になると大気中の二酸化炭素を吸収し始めて、常に行われている植物等の呼吸や人間活動に伴う二酸化炭素排出による濃度上昇分を上回るためです。二酸化炭素は大気の流れにより地表面から上空へ時間をかけて徐々に運ばれていくため、上空で濃度が最大となる時期は地表面よりも少し遅くなっています。

 また植物の光合成などによる二酸化炭素の放出・吸収による季節変動の幅は、陸地が少ない南半球では小さくなります。南半球の上空で若干地表面より濃度が高い傾向があるのは、相対的に高い濃度である北半球の空気が上空から入ってくることを示唆しています。

北半球の地表面と上空(高度約6km)二酸化炭素濃度の月平均値の推移 南半球の地表面と上空(高度約6km)二酸化炭素濃度の月平均値の推移
北半球(左)及び南半球(右)での地表面付近(赤)と高度約6km(青)における二酸化炭素濃度の月平均値の推移
(観測データを用いた数値シミュレーションによる推定値)

 二酸化炭素濃度の年平均値の北半球と南半球の差は、地表面に比べて上空の方が小さくなっています。これは、二酸化炭素の放出・吸収のやりとりは陸地の地表面付近や海面でなされているため、陸地が多くて人間活動が活発な地域が多くある北半球の地表面付近で、二酸化炭素の排出の影響を最も強く受けやすく高濃度になっているためです。

地表面の年平均濃度の推移
北半球(丸)及び南半球(三角)での地表面付近(赤)と高度約6km(青)における二酸化炭素濃度の年平均値の推移
(観測データを用いた数値シミュレーションによる推定値)