南海トラフ地震の予測可能性の現状と「南海トラフ地震に関連する情報」の運用開始に至る経緯

 政府は、南海トラフ地震が発生した際に想定される被害を少しでも軽減する観点から、平成28年6月に、中央防災会議防災対策実行会議の下に「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応検討ワーキンググループ」(以下、「ワーキンググループ」という)を設置し、地震発生予測の現状を踏まえた防災対応の検討を開始しました。

 ワーキンググループでは、まず、最新の科学的知見に基づく地震発生予測の現状を整理するため、「南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性に関する調査部会」(以下、「調査部会」という)がワーキンググループの下に設置されました。調査部会が平成29年8月に公表した報告では、地震発生予測の現状について以下のとおり指摘されました。

  • 地震の規模や発生時期の予測は不確実性を伴う。
  • 現時点において、地震の発生時期や場所・規模を確度高く予測する科学的に確立した手法はない。
  • 南海トラフ地震の想定震源域であるプレート境界の固着状態の変化を示唆する現象を検知すれば、定性的には地震発生の可能性が高まっていることは言える。

 この調査部会の報告を受けて、平成29年9月に公表されたワーキンググループの報告では、南海トラフ地震の予測可能性の現状を踏まえた防災対応のあり方について以下のとおり指摘されました。

  • 地震発生予測に関する現在の科学的知見を防災対応に活かしていくという視点は引き続き重要である。
  • 南海トラフ沿いで異常な現象が発生した際に速やかに防災対応を実施するためには、南海トラフ沿いの観測データの分析・評価結果について適時的確な情報の発表が重要である。そのためは、気象庁に、迅速に対応できる学識経験者による評価体制の整備が必要である。
  • 地震発生予測の現状を踏まえた新たな防災対応の検討を計画的に着実に実施する必要がある。また、この防災対応が決まるまでの間にも、南海トラフ沿いで異常な現象が観測される可能性があるため、当面の暫定的な防災体制を、国・地方公共団体はあらかじめ定める必要がある。

 以上を踏まえ、気象庁では、新たな防災対応が定められるまでの当面の対応として、平成29年11月1日から以下の対応を実施しています。

  • 「南海トラフ地震に関連する情報」の発表・・・南海トラフ全域を対象として、異常な現象を観測した場合や地震発生の可能性が相対的に高まっていると評価した場合等に「南海トラフ地震に関連する情報」の発表を行う。なお、これに伴い、東海地震のみに着目した従来の「東海地震に関連する情報」の発表は行わない。
  • 「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の開催・・・南海トラフ全域を対象として地震発生の可能性を評価するにあたって、有識者から助言いただくために、「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を開催する。

 その後、平成30年12月に中央防災会議の有識者会議において「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応のあり方について」がとりまとめられ、平成31年3月には、内閣府が「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン(第1版)」を公表し、防災対応をとるべき3つのケースごとの具体的な防災対応が整理されました。

 気象庁では、これら防災対応が国が示す基本計画(南海トラフ地震防災対策推進基本計画)に位置づけられた令和元年5月より、南海トラフ地震に関連する情報を「南海トラフ地震臨時情報」と「南海トラフ地震関連解説情報」として発表しています。

 この対応を実施するため、気象庁では、国土地理院、海上保安庁、国立研究開発法人防災科学技術研究所、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人東京大学、国立大学法人名古屋大学、及び静岡県などの関係機関の協力を得て、南海トラフ全域の地震活動や東海地域とその周辺の地殻変動の観測データを24時間体制で監視しています。



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