伊豆東部の地震活動の予測手法について

 伊豆東部の地震活動が始まった初期の段階で、地震活動の見通しを予測する手法について説明します。


群発地震と地殻変動から推定される地下のマグマ活動

地下のマグマ活動との概念図

 伊豆東部で繰り返す地震活動の原因については、この地域が火山地帯であることから、 マグマの動きと関係あるのではないかと考えられていました。  1989年6月から7月にかけて発生した地震活動の最中、伊東市の東約3km沖合の手石海丘で海底噴火が発生し、伊豆東部の地震活動の原因が地下のマグマ活動であることが裏付けられました。すなわち

  1. 地下のマグマが、岩盤を押し広げながら上昇を始める(マグマの貫入)。
  2. 岩盤に押し広げられる力が加わり、周辺の岩盤が変形する(地殻変動)。
  3. 岩盤に押し広げられる力が加わり、地震が多発する(地震活動)。

という関係があり、地震活動と地殻変動がマグマ貫入という現象を通じて結びつけられることがわかったのです。


予測手法の概要

予測手法の概要図

 マグマの貫入の程度を表す地殻変動の大きさから、いくつかの段階を経て、 マグニチュード(M)1以上の地震の発生回数、最大地震の規模(M)、 伊東市で震度1以上を観測する地震の回数、及び活動期間の長さといった 地震活動の規模を予測します。


マグマ貫入に伴う地殻変動を検知してマグマ貫入量を推定

ひずみ変化量とマグマ貫入量との関係

 伊豆東部の地下にマグマが貫入すると、地震発生と共に周辺地域で地殻変動が観測されます。 この地殻変動をひずみ計等で検知します。
 過去の事例から、東伊豆奈良本観測点のひずみ変化量と総マグマ貫入量との間に相関があることがわかっています。
 東伊豆奈良本観測点のひずみ変化量を監視し、 ひずみ変化量の最大から総マグマ貫入量を推定します。
 過去の地震活動においては、東伊豆奈良本のひずみ変化量の最大は活動の初期に現れることが多く、地震活動の規模を活動の早い段階で予測できることになります。


推定したマグマ貫入量から、地震回数を予測

マグマ貫入量とM1地震回数との関係

 過去の事例から、総マグマ貫入量と群発地震活動で発生するM1以上の総地震回数との間に 相関があることがわかっています。総マグマ貫入量が同じでも、 マグマが深いところで留まる場合と、浅いところまで上昇する場合では、 発生する総地震回数は大きく異なり、後者の方が多くなります。 発生している地震の震源の深さからマグマ活動の深さを推測し、 それに応じた関係式を用いて、M1以上の地震発生数を予測します。


最大規模の地震のマグニチュードと震度及び震度1以上を観測する地震の回数を予測

マグニチュードと地震発生数との関係

 一般に地震活動全体では、規模の大きな地震ほど発生数が少なく、 マグニチュードが1大きくなると発生数はおよそ10分の1になります。 この関係式(グーテンベルク・リヒターの式:G-R式)を用いて、 M1以上の地震発生数から、最大規模の地震のMを予測します。 震源域と伊東市との間の距離と合わせて考えることにより、 この地震による伊東市における震度を求めることができます。
 また、同じ関係式を用いて、伊東市において震度1以上を観測する 地震の回数を予測することができます。


主たる活動期間を予測

地震活動の期間の頻度

 過去の事例から、1回のマグマ貫入に伴って地震が多発する、主たる地震活動期間は概ね4日、長くて1週間程度です。 そこで、見通し情報では活動期間は4日~1週間程度と発表します。 引き続きひずみ変化を監視し、2回目以降のマグマ貫入があれば、 さらに4日~1週間程度地震活動が継続すると予測することになります。


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