薩摩硫黄島 有史以降の火山活動

 硫黄岳では、歴史時代に相当する500~ 600 年前にも、火砕流を伴うマグマ噴火が発生している。 1934 年には薩摩硫黄島の東近海で溶岩の流出を伴う海底噴火があり、昭和硫黄島が誕生した。

有史以降の火山活動(▲は噴火年を示す)

年代 現象 活動経過・被害状況等
▲15~16世紀 水蒸気噴火 降下火砕物,火砕流。噴火場所は硫黄岳山頂火口。
▲1934~35(昭和9~10)年 大規模:マグマ噴火 1934年9月~35年3月。噴火場所は昭和硫黄島。9月6日から地震群発。9月20日に東方2kmの海底で噴火。12月に硫黄島新島(昭和硫黄島)生成し現存。
マグマ噴出量は0.276 DREkm 3。(VEI4)
1936(昭和11)年 地震、噴煙 10月26日~。硫黄岳の噴煙増加、火口底で鳴動。この活動により島が30cm沈下。
1988(昭和63)年 噴煙? 1月18日。4回にわたって噴煙を上げた(火口内崩落物の巻き上げか)。
1996(平成8)年 地形変化 10月の観測で、山頂火口南東部の道路上に北東-南西方向開口性割れ目を確認。
1997(平成9)年 噴気孔生成 火口底部に直径約20mの急傾斜の火孔を確認。
▲1998(平成10)年 水蒸気噴火? 噴火場所は硫黄岳。
島内に設置している地震計では、4月に入ってから人体に感じない微小な火山性地震が急増し、それまで1日あたり数回だった地震回数が60~80回になり、100回を超える日もあった。 6月に入ると次第に減少し、6月下旬以降は日に20回以下で推移した。9月からは再び増加し、10月下旬には日に80~110回となった。 一時、11月上旬には日に数回まで減少したが、11月中旬以降、60~100回程度に増加した。
5月初旬の現地調査では火口周辺に厚さ5mm程度の火山灰が堆積していた。4月下旬から5月初めにかけて火山灰噴出があったと推察される。 地質調査所(現、独立行政法人産業総合技術研究所)の火山灰分析によると、火山灰の主な成分は珪化変質した硫黄岳溶岩の破片であり、新鮮なマグマ物質は大量には含まれていなかった。
三島村役場によると、5月14日に灰混じりの雨が降ったほか、8月に入ってから島内で時々弱い降灰があり、8月11日には竹島でも降灰があった。 鹿児島中央警察署硫黄島駐在所によると、10月には少量の降灰が数回あった。
地質調査所が11月に行った現地調査では、火口から時々火山灰が放出され、展望台付近(硫黄岳南東側中腹)まで降灰を確認している。
▲1999(平成11)年 噴火 噴火場所は硫黄岳山頂。
三島村役場によると、1、2、5~8、11月に島内で少量の降灰があり、有色噴煙が時折観測された。
▲2000(平成12)年 噴火 噴火場所は硫黄岳山頂。
三島村役場によると、1、5、6、7、9~12月に島内で降灰があった。
▲2001(平成13)年 噴火 噴火場所は硫黄岳山頂。
三島村役場によると、2、4~12月に島内で降灰があった。
▲2002(平成14)年 噴火 噴火場所は硫黄岳山頂。
5~7月にかけて火山活動がやや活発化し、集落(硫黄岳の西約3km)では降灰が度々確認された。
▲2003(平成15)年 噴火 噴火場所は硫黄岳山頂。
6~10月にかけて火山活動がやや活発化し、時々噴火が発生。それ以外の期間は、噴火が4月に2回、5月に1回発生したが比較的穏やかな状態で経過
▲2004(平成16)年 噴火 噴火場所は硫黄岳山頂。
3、4、6、8~10月に時々噴火が発生。集落で時々降灰が確認された。
▲2013(平成25)年 噴火 噴火場所は硫黄岳山頂。
6月3日から5日にかけてごく小規模な噴火が時々発生。島内で少量の降灰が確認された。
▲2019(令和元)年 噴火 噴火場所は硫黄岳山頂。
硫黄岳火口で、11月2日17時35分に噴火が発生。噴火に伴う灰白色の噴煙が火口縁上1,000mをわずかに超える程度まで上がったが、火砕流や噴石は観測されなかった。この噴火以外、噴火は発生していない。微弱な火映を時々観測。
▲2020(令和2)年 噴火 噴火場所は硫黄岳山頂。
硫黄岳火口で、4月29日及び10月6日に噴火が発生。4月29日06時09分の噴火は同日06時50分まで継続し、噴火に伴う灰白色の噴煙が火口縁上1,000mまで上がった。10月6日07時57分の噴火では、噴火に伴う灰白色の噴煙が火口縁上200mまで上がった。これらの噴火に伴う火砕流や大きな噴石、空振は観測されなかった。これらの噴火以外、噴火は発生していない。
2021(令和3)年 火映 硫黄岳火口では、噴火は観測されなかった。硫黄岳火口では、白色の噴煙が概ね火口縁上 1,000m以下の高さで経過した(最高:1,400m以上)。夜間に高感度の監視カメラで火映を観測した。
2022(令和4)年 火映・噴出現象 硫黄岳火口では、噴火は観測されなかった。硫黄岳火口では、白色の噴煙が概ね火口縁上 500m以下で経過したが、時折、火口縁上 1,000mを越えた。(最高:1,300m以上)。概ね年間を通して夜間に高感度の監視カメラで火映を観測した。12 月 21 日 23 時 22 分に、硫黄岳火口付近が一時的に青白く発光する様子を確認し、色不明の噴煙が火口縁上 200mまで上がり南東に流れていくのを観測した。
2023(令和5)年 火映・噴出現象 硫黄岳火口では、噴火は観測されなかった。硫黄岳火口では、白色の噴煙が概ね火口縁上 1,000m以下の高さで経過した。夜間に高感度の監視カメラで火映を観測した。

日本活火山総覧(第4版)(気象庁編、2013)による。2012年以降は火山活動解説資料(年報)による。
噴火イベントの年代、噴火場所、噴火様式等については、(国研)産業技術総合研究所の活火山データベース(工藤・星住, 2006)を参考に、文献の追記を行った。
なお、噴出物量については、降下火砕物、火砕流、火砕サージ、溶岩流、溶岩ドーム等を加えた重量(単位は「ton」)またはマグマ噴出量(DRE km3)で記載している。 また、噴出物量が既知である場合については、産業技術総合研究所作成の活火山データベースから参照し、VEI(火山爆発指数)も付している。 詳しくはこちらを参照のこと。



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