有史以降の火山活動について

有史以降の火山活動について

 有史以降の火山活動に記載された解説文は以下のとおりです。

有史以降の火山活動

 産業技術総合研究所作成の活火山データベース、日本の第四紀火山カタログ、及び海上保安庁海洋情報部海域火山データベース、古文書等の記録に残っている火山活動史に加え最近の観測結果をもとに掲載した。噴火のみならず、地震、噴煙増加等の活動も掲載した。
 ここでは火山活動史と、主な史料の記録を列挙する両方の目的を兼ねている。従って、小さな活動でも史料があれば掲載しており、噴火規模や火山活動度を均質な基準で選んではいない。例えば記事が多数掲載されていることが、にわかに火山活動が活発なことを示しているわけではなく、史料が多数あったためということがあり得る。逆に記事がない時期に噴火がなかったということも言えず、むしろ、小さい噴火は、記録に残されていないものが多数あると考えるべきであろう。この項から単純に噴火回数の比較や噴火間隔の統計等を行わないようにお願いする。また、古文書の情報に加え、地質調査によって判明した活動内容を加えるよう努力した。
 大正時代頃以降は気象庁等による観測資料が大幅に増えるため、より小さな活動も掲載している。特に、最近の数十年は噴気の変化や地震活動等小さい火山活動の記事が大幅に増えるが、観測の精度が上がったためであり、活動の変化ではない。
 その他の留意点は下記の通りである。

  • 一連の活動と思われるものは、まとめて記述するようにしたが、見やすさを考え、近年の活動等記事が多いものは原則として年単位に区切って記載した。
  • 第3版では文章列記であったが、第4版では表形式とした。
  • 噴火と認定された場合は、噴火年の前に▲印を付した。なお、海底火山の変色等の現象については噴火ではないと判断し▲印を付していない。
  • 和暦から西暦への換算は「日本暦日原典(内田正男編著1975)」によった。文中の月日も原則として西暦に換算してある。
  • 和暦の「○○年間に活動(例 安永年間に活動)」を西暦で「○○~○○年に活動」と標記すると継続して火山活動があったと誤解されるため、本書では「和暦○○年間とは西暦○○~○○年」と付記した。 ・噴火という語については、主として大規模噴火・小規模噴火等の表現(5-9-3(4)参照)を用いた。規模が不明な場合は、単に「噴火」の表記とした。なお、ここでは、火山現象として、火口外へ固形物(火山灰、岩塊等)を放出または溶岩を流出する現象を噴火とすることで統一した。
  • 地震活動:可能な限りマグニチュードや活動期間を示した。気象庁をはじめ各機関の観測精度が上がっているので、近年ほど小さな活動でも検知される傾向にあるが、掲載の基準(マグニチュード、回数、場所等)を均一に設定することは困難であり、顕著と思われたものを載せた。また、火山からの距離・規模のデータを載せるよう努力した。
  • 噴出物量:地質調査による噴出物量資料を載せた。噴出物量、及びVEIについては、産業技術総合研究所作成の活火山データベースを参考とした。
  • 現象欄に記載されている用語は、出来る限り統一した。
  • 噴火活動史の記述で引用した文献について、有史以降の表の後に右肩に番号を付して記載した。

噴火活動史の記述について

(1)年代および表記法

 過去1万年間の噴火イベントの発生年代は「ka」、「西暦」および「和暦」で表記した。
「ka」は「1000年前」を意味し、1kaは1000年前を意味する。「ka」は西暦2000年を0kaとし、暦年較正(後述)されたものを掲載した。また、有史以降の火山活動の「西暦※」は年と月日、「和暦」は年のみを表記している。
 ※西暦の表記法については、早川・小山(1997)による提言に従い、1582年10月4日まではユリウス暦、その翌日の1582年10月15日以降は現行のグレゴリオ暦で表記した。

 1回の噴火イベントが、数年にわたって継続する場合と、噴火年代そのものがある年代幅で示される場合がある。それらを区別するために、以下のように表記する。

年代説明
ABA年からB年までの間,継続して起こった一連の噴火イベント
A←→BA年からB年までの間のどこかで起こった噴火イベント
AA年以降に起こった噴火イベント
AA年以前に起こった噴火イベント
A?A年に起こったらしいが,他の年代の可能性もある噴火イベント

(2)年代決定根拠

 年代は産業技術総合研究所活火山データベース、近代火山観測により噴火が記録されているもの、古文書などから記述した。産業技術総合研究所活火山データベースは、記録、層序、14C年代、K-Ar年代、考古学遺物および地形から年代を決定している。各噴火の年代値の決定方法は、活火山データベースを参照されたい。

(3)噴火の記録基準

 噴火は、火山現象として、火口外へ固形物(火山灰、岩塊等)または溶融物を放出または溶岩を流出する現象であるが、固形物または放出物が噴出場所から水平若しくは垂直距離概ね100~300mの範囲を超すものを噴火として記録している。ただし、それより小さな現象(阿蘇山の土砂噴出等)でも、記事として記載している場合もある。

(4)噴火規模について

 第4版刊行にあたり、有史以降の噴火活動について、気象庁がこれまでに使用してきた噴火規模表記について整理した。
 噴出物量については降下火砕物、火砕流、火砕サージ、溶岩流、溶岩ドーム等を加えた重量(単位は「ton」)またはマグマ噴出量(DRE km3*1で記載した。引用文献中に、噴出物量が体積としてのみ記載されている場合は、噴出物の密度を1.0(溶岩は2.5)と仮定して重量に換算した。また、噴火活動が長期にわたる場合は、トータルの噴出物量を使用した。なお、山体崩壊を伴う噴火については「崩壊量」を加えた総噴出物量から規模を区分していることに注意が必要である。
 また、噴出物量が既知である場合については、産業技術総合研究所作成の活火山データベースから参照し、VEI*2も付した。

*1マグマ噴出量(DRE km3)について
マグマ噴火およびマグマ水蒸気噴火による総噴出物を、マグマの容積に換算したもの。
*2VEI(火山爆発指数)について
表1 火山爆発し数(VEI)の定義
※ VEI は、降下火砕物の量から規模を推定するものであり、溶岩ドーム等や溶岩流の噴出物量は含まれないことに留意が必要である。

 噴出物量及びVEI に基づき、本稿に掲載する噴火規模の表記を以下により区分した。

ごく小規模: 104ton 未満 ( VEI ではおおむね 0  : 非爆発的)
小規模  : 104 ~ 106ton( VEI ではおおむね 1  : 小規模)
中規模  : 106 ~ 108ton( VEI ではおおむね 2と3 : 中規模およびやや大規模)
大規模  : 108ton 以上 ( VEI ではおおむね 4以上: 大規模以上)


 上記により区分した噴出物量、VEI と噴火規模の表記との関係を以下に示す。

図1 噴出物量により区分した規模表記


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