平成26年 No.05 週間火山概況 (平成26年1月24日〜1月30日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年1月24日〜1月30日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
27日 02時19分 桜島 降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 1月30日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島
火口周辺危険 西之島※、硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島
平常 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(1月30日)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴煙高度は、火口縁上100〜200mで経過しました。
 火山性地震は、少ない状態で経過しました。
 28日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日当たり平均400トン(前回1月17日、平均400トン)で、やや少ない状態でした。
 三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。


西之島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 29日に海上自衛隊の協力により実施した上空からの観測によると、新たに形成された陸地の北側の火口内部で赤熱を確認しました。そこからは、約1分間隔で間欠的に薄灰白色の噴煙が約800mの高さまで噴出し、噴石が数十m直上に飛散していました。また、南側の火口からは、連続的に青白色の噴煙が約100mの高さまで噴出していました。さらに島の東側から南東方向約2kmにわたって、茶褐色の変色水を確認しました。
西之島では、今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島付近では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
 28日から31日(期間外)に海上自衛隊の協力により実施した現地調査では、阿蘇台陥没孔で従来溜まっていた水がなくなり、乾いた状態になっていました。その他、島内の噴気、地熱などに特段の変化は認められませんでした。
 国土地理院の観測によると、地殻変動は2013年9月頃からほぼ停滞していましたが、11月頃から沈降に転じています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(旧噴火口等)及びその周辺では噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁の観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


阿蘇山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制規制)]

 阿蘇山では、やや活発な火山活動が続いています。  27日及び29日には、中岳第一火口でごく小規模な噴火が発生し、灰白色の噴煙が最大で火口縁上500mまで上がりました。阿蘇山で噴火が発生したのは1月13日以来です。
 火山性地震の回数は21日頃から増加し、24日には1,262回、25日には1,249回、26日には1,269回発生し、多い状態でしたが、27日以降徐々に減少し、27日には949回、28日は436回、29日は249回、30日は227回発生しました。孤立型微動1)は19日頃から一時的に増加しましたが、28日以降は少ない状態で経過しています。
 29日に実施した現地調査では、中岳第一火口の湯だまりの量は1割以下でした。また、火口底中央部付近で高温(約318度)の噴気孔を確認し、噴気孔から噴出された火山灰を含む噴煙が火口縁を超えているのを観測しました。同日夜間に実施した現地観測では、火口底中央部で火炎現象2)を観測しました。また、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,300トン(前回22日1500トン)と多い状態が継続していました。
 期間を通して、夜間には高感度カメラで火映を観測しました。
 阿蘇山では、中岳第一火口から概ね1kmの範囲で、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石3)に注意してください。

阿蘇山 火山活動経過図

図2 阿蘇山 火山活動経過図


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制規制)]

 新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
 火山性地震及び火山性微動は観測されませんでした。
 傾斜計4)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
 国土地理院の広域的な地殻変動観測によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は2011年12月以降鈍化・停滞しています。一部の基線で、2012年5月頃からわずかな縮みの傾向がみられ、同年9月頃から停滞しています。
 新燃岳の火山活動は落ち着いた状態が続いています。しかし、火口内に溜まった溶岩は依然高温状態にあり、火口周辺に影響のある小規模な噴火が発生する可能性は残っています。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき5))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続いています。
 昭和火口では、爆発的噴火が7回発生し、大きな噴石3)が最大で4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
 GPS連続観測では桜島島内の基線で、2013年2月頃からわずかな伸びの傾向がみられましたが、同年7月頃から停滞またはわずかな縮みの傾向がみられます。国土地理院の地殻変動観測結果によると、鹿児島(錦江)湾を挟む一部の基線では、長期的な伸びの傾向が続いていましたが、6月頃から停滞気味です。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき5))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 諏訪之瀬島の御岳(おたけ)では、やや活発な噴火活動が続いています。
 御岳火口では、24日11時28分に小規模な噴火が発生し、灰白色の噴煙が最大で火口縁上1,200mまで上がりました。また、ごく小規模な噴火が時々発生しました。
 期間を通して、夜間には高感度カメラで火映を観測しました。
 火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動を時々観測しました。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


十和田 [噴火予報(平常)]

 27日10時過ぎから22時にかけて、十和田湖の中湖(なかのうみ)付近、深さ4〜7㎞を震源とする地震(最大のマグニチュード:2.8)が増加し、地震計で観測される地震回数は17時台と18時台に1時間あたり100回を超えました。その後、地震活動は収まり、地震回数は少ない状態となっています。
 この期間に気象庁が震度情報の発表に使用する震度計で、震度1以上を観測する地震はありませんでしたが、地元への聞き取り調査で、27日の12時以降、複数回の体に感じる揺れ(震度3〜1相当)があったとの情報が得られました。この情報と発生した地震のマグニチュードの比較により、震央付近では概ねマグニチュード2.3程度の地震で揺れを感じているものと推測されます。
 低周波地震、火山性微動は観測されていません。地元への聞き取り調査では表面現象に関する異常もないとの事です。
 国土地理院の広域的な地殻変動観測結果でも、十和田付近の地殻変動に変化は認められていません。
 以上のことから、火山活動に特段の変化はなく、噴火の兆候は認められません。

十和田 十和田付近の時間別地震回数グラフ

図3 十和田 十和田付近を震源とする時間別地震回数

 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。

1)阿蘇山特有の微動で、火口直下のごく浅い場所で発生しており、周期0.5〜1.0秒、継続時間10秒程度で振幅が5μm/s以上のものを孤立型微動としています。
2)熱せられた噴出物が炎のように見える現象です。 3)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
4)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
5)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
  


【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。

※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。


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