平成20年 No.37 火山の概況 (平成20年9月5日 〜 平成20年9月11日)

【火山現象に関する予報及び警報の状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項に変更はない。

表1 火山現象に関する予報及び警報の発表履歴(9月5日〜9月11日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布状況

表2 9月11日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード* 当該火山
火口周辺警報 レベル2(火口周辺規制) 浅間山、三宅島、霧島山(新燃岳)、桜島、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、草津白根山、御嶽山、富士山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)
平常 上記以外の活火山

噴火警戒レベルは、その活用が地域防災計画等で予め定められており、レベル毎の防災対応をキーワードで示している。噴火警戒レベルを導入していない火山については、警戒事項をキーワードで示している。


図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(9月11日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴火は観測されなかったが、山頂火口の噴煙量はやや多い状態が続き、噴煙高度は火口縁上200〜300mで推移した。また、夜間に高感度カメラ1)により微弱な火映が時々観測されている。
 火山性地震及び火山性微動はやや多い状態が続いている。
 11日に行った現地調査では、二酸化硫黄放出量は一日あたり800〜1,300トン(前回8月20日、2,700〜3,300トン)と多い状態が続いている。
 なお、地殻変動には特段の変化はみられなかった。
 浅間山では、依然として火山活動が高まった状態が続いており、山頂火口から概ね2kmの範囲に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、これらの地域では大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では、降灰及び小さな噴石2)にも注意が必要である。また、火山ガス放出量の多い状態が続いているので、風下側にあたる登山道等では火山ガスにも注意が必要である。

1)長野県建設部佐久建設事務所の黒斑山設置カメラ、国土交通省利根川水系砂防事務所の山麓設置カメラ及び気象庁の追分カメラによる。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。


図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2008年7月1日〜2008年9月11日)

三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上概ね300mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 10日に行った現地調査では、二酸化硫黄の放出量は、一日あたり1,300〜1,700トン(前回8月19日、1,400〜1,500トン)と依然として多量の火山ガス放出が続いている。
 三宅島では、山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺では噴火に対する警戒が必要である。また、風下にあたる地区では火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には泥流にも注意が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 独立行政法人防災科学技術研究所及び国土地理院の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過しているが、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動が継続している。
 硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、従来から小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 10日の海上自衛隊による上空からの観測では、福徳岡ノ場付近の海面に変色水は確認されなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測で、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
 福徳岡ノ場では、引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴火は観測されなかったが、噴煙量の多い状態が続き、噴煙高度は火口縁上200〜900mで推移した。火山性地震の発生回数は減少しているが、地震回数が増加し始めた8月18日以前と比べてやや多い状態が続いている。
 新燃岳では、依然として火山活動が高まった状態が続いており、山頂火口から1km程度の範囲に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、これらの地域では大きな噴石2)に警戒が必要である。また、風下側では小さな噴石2)に注意が必要である。

桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 昭和火口では、7日に小規模な噴火が発生した。南岳山頂火口では、今期間、噴火は観測されなかった。
 火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。桜島直下にマグマが新たに移動、上昇したことを示す地殻変動は観測されていない。
 国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いている。桜島の昭和火口の噴火活動は、2006年6月の噴火以降、長期的には次第に活発化している傾向がみられている。
 桜島では、引き続き南岳山頂火口及び昭和火口の周辺に大きな噴石2)を飛散させる程度の噴火が発生すると予想されるので、これらの火口周辺では噴火に伴う大きな噴石2)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石2)(火山れき3))にも注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に注意が必要である。

3)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。

薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上100〜800mで推移した。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島では、硫黄岳山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口周辺では噴火に対する警戒が必要である。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 2日から4日(前期間)にかけて、振幅のやや大きな火山性地震の回数が増加したが、その後は今期間を含めて少ない状態で推移した。4日(前期間)に第十管区海上保安本部が行った観測及び6日に鹿児島県の協力を得て行った上空からの観測では、新岳及び古岳の噴気活動と地熱地帯の状況等に特段の変化は認められなかった。
 口永良部島では、火口の周辺に大きな噴石2)を飛散させる程度の噴火が発生すると予想されるので、新岳火口から約1kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石2)にも注意が必要である。



図3 口永良部島 火山性地震の日別回数(2008年7月1日〜2008年9月11日)

諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、小規模な噴火が5日に24回と多く発生し、6日及び7日にもそれぞれ小規模な噴火が1回発生した。いずれも弱い空振を伴う爆発的噴火であった。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、噴煙の高さは火口縁上800〜1,200mで推移した。8日以降は火口縁上を超える噴煙はなかった。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 諏訪之瀬島では、御岳火口から約1kmの範囲に大きな噴石2)を飛散させる程度の小規模な噴火が発生すると予想されるので、御岳火口から約1kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。


【その他の火山の活動状況】


白山 [噴火予報(平常)]

 6日07時27分及び7日04時13分に、白山付近の浅部を震源とするマグニチュード4)がそれぞれ2.4、1.5(暫定値)の地震が発生し、いずれも1時間程度地震の多い状態が続いた。白山では2005年10月にも同様な場所で地震が多発したが、今回の活動の規模はそのときと比べて小さかった。
 その後、地震活動は静穏に経過し、噴気活動などの表面現象にも異常は認められていない。
 白山では引き続き火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候はみられず、噴火予報(平常)が継続している。

4) マグニチュード(M)は地震の規模を示す。資料中のマグニチュードは暫定値で、後日変更することがある。

箱根山 [噴火予報(平常)]

 9日から10日にかけて、湖尻付近の浅部を震源とする地震がまとまって発生した。最大の地震は9日22時41分に発生したマグニチュード4)1.4(暫定値)であった。
 箱根山では、これまでにも時々地震の多発があり、最近では4月4日に一時的な多発があった。
 気象庁が湯河原に設置している体積歪計5)や神奈川県温泉地学研究所の傾斜計6)等による地殻変動観測では、今回の地震活動に関連した変化はなかった。また、環境省インターネット自然研究所の箱根・大涌谷カメラでは、大涌谷などの噴気等の表面現象にも特段の変化はみられない。
 箱根山では引き続き火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候はみられず、噴火予報(平常)が継続している。

5) センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。
6) 地面の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。



 上記以外の火山では、火山活動に特段の変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす(この範囲に入った場合は生命に危険が及ぶ)噴火の兆候はみられない。




【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード 海底火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 周辺海域警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常 平常



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