2006年 No.8 火山の概況 (平成18年2月17日 〜 平成18年2月23日)
【噴火が観測された火山】
【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】
- ● 雌阿寒岳 [静穏な状況→やや活発な状況]
- 18〜19日に火山性地震が多発し、火山活動はやや活発な状態となった。
- ● 十勝岳 [やや活発な状況]
- 噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
- ● 樽前山 [やや活発な状況]
- A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
- ● 浅間山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 噴煙活動は引き続きやや活発で、火山ガスの放出量や火山性地震のやや多い状態が続いている。
- ● 福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
- 23日に変色水が確認された。
- ● 霧島山(新燃岳) [やや活発な状況(レベル2)]
- 火山性地震のやや多い状態が続いている。
- ● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)]
- 火口縁を超える噴気が時折観測されており、火山活動はやや活発な状態が続いている。
- ● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
- ● 口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
【静穏な状態であるが、観測データに変化のあった火山】
図1 各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。
注2 記号の意味
▲:噴火が観測された火山
●:活動が活発もしくはやや活発な状態にある火山
◇:静穏な状態にあるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。
【各火山の活動解説】
● 雌阿寒岳 [静穏な状況→やや活発な状況]
18日から火山性地震が多発し、火山活動はやや活発な状態となった。
18日00時頃から振幅の小さな火山性地震が増加し、18日516回、19日351回と多発した。1日あたりの地震回数は、1973年に観測を開始して以来最多であった(これまでの最多は1995年11月1日の300回)。地震回数はその後減少し、20日86回、21日42回、22日41回、23日14回と推移した。また、振幅の小さな火山性微動が18日に2回、19日に2回、20日に1回発生した。
監視カメラ(火口の南南東約16kmに設置)による観測では噴煙活動に特段の変化はなく、19日に上空から行った観測1)でも噴煙の様子や火口周辺に特段の変化はみられなかった。また、地殻変動にも特段の変化はなかった。
1) 北海道消防防災ヘリの協力による。
● 十勝岳 [やや活発な状況]
62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。
● 樽前山 [やや活発な状況]
今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱活動に大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。
● 浅間山 [やや活発な状況 (レベル2)]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。今期間は天候不良の日が多かったこともあり、火映は観測されなかった。
22日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり400〜900トンと前回(2月10日700〜1,700トン)よりやや減少したものの、依然としてやや多い状態が続いている。
火山性地震はやや多い状態が続き、1日あたり32〜55回で経過した。火山性微動は19日に2回観測された。傾斜計およびGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。
◇ 伊豆東部火山群 [静穏な状況]
21日昼頃から、伊東市街の北東沖、深さ約7〜10km付近を震源とする微小な地震が発生し始め、22日夜から23日午後にかけてやや増加した。最大地震は23日05時35分に発生したM(マグニチュード)2.2(暫定)で、この地震も含め震度1以上を観測した地震はなかった。火山性微動及び低周波地震は観測されなかった。
また、21日昼頃から、東伊豆町に設置している体積歪(ひずみ)計や伊東市に設置されている防災科学技術研究所の傾斜計にわずかな変化がみられている。
この付近では過去にもしばしば地震活動が活発化しており、今年1月25〜27日にも川奈崎付近で地震がやや増加し、上記の体積歪計や傾斜計にわずかな変化がみられた。
▲ 三宅島 [やや活発な状況]
17日にごく小規模な噴火が発生し、山麓でごく微量の降灰があった。噴火が観測されたのは平成17年5月18日以来である。
17日19時から24時にかけて火口直下を震源とするやや低周波の地震が増加し、空振を伴う振幅のやや大きい低周波地震が4回発生した。そのうち22時38分及び23時34分の地震では三宅村神着で震度1を観測した。噴煙の状況に特段の変化はなかった。18日に行った現地調査で、山頂火口の東〜東南東側約3km(坪田地区)の狭い範囲でごく微量の降灰が確認された。空振を伴う振幅のやや大きな低周波地震が発生した頃に小規模な噴火が発生したと推定される2)。17日の地震回数は150回に達したが、その他の日は少ない状態で経過した。火山性微動は観測されなかった。
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は18日に火口縁上800〜1,000mとやや高かったが、その他の日は概ね火口縁上300mで推移した。
2) 三宅島では、空振を伴う低周波地震が発生した時に山頂火口から火山灰噴出を伴うことがある。
● 福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
23日に海上保安庁が上空から行った観測によると、福徳岡ノ場を中心とした半径約300mの範囲内に、火山活動によるとみられる薄い緑色の変色水が確認された。また、変色水の南端付近に、東西に延びる筋状の幅約10m、長さ約300mの白色の浮遊物らしきものが確認された。
◇ 阿蘇山 [静穏な状況 (レベル1)]
23日06時20分に、中岳火口付近を震源とするM1.8(暫定)の地震が発生し、南阿蘇村中松(山頂付近の震度観測点)で震度1を観測した。火山活動には特段の変化はなかった。
● 霧島山(新燃岳) [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間50回、前期間117回)。火山性微動は23日に1回観測されたが、振幅の小さな継続時間の短いものであった。傾斜計及びGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなく、監視カメラ(火口の南約7kmに設置)による観測でも火口縁を超える噴気は観測されなかった。
● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況 (レベル2)]
御鉢火口では火口縁を超える噴気が時折観測されるなど、火山活動はやや活発な状態が続いている。18日に火口縁上100mの高さの噴気が観測された。
19日に火山性微動が1回観測されたが、振幅の小さな継続時間の短いものであった(前期間は15日に振幅のやや大きな火山性微動を観測)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。
▲ 桜島 [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]
期間中、爆発的噴火が1回観測された(前期間は噴火なし)。18日10時25分に爆発的噴火が発生し、灰白色の噴煙が火口縁上900mまで上がった。期間中、鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で降灰は観測されなかった。
火山性地震はB型地震3)が時々やや多く発生しており、19〜20日及び22日には1日あたり33〜36回観測された。火山性微動は観測されなかった。地殻変動には特段の変化はなかった。
3) 火山性地震には、通常の構造性地震と同じようなP波、S波が明瞭で高周波の波動からなるA型地震と、位相が不明瞭な低周波のB型地震がある。桜島のA型地震はマグマ等の貫入に伴い地殻が破壊されるために発生していると考えられ、B型地震はマグマ内の火山ガスの発泡等によって火道内で発生する地震とされている。