2006年 No.1 火山の概況 (平成17年12月30日 〜 平成18年1月5日)

【噴火が観測された火山】

諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
1月1日に噴火が2回観測され、その内1回は爆発的噴火であった。

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動の活発な状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いている。3日に地震が一時的に増加した。
福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
2日に変色水が確認された。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
火山性連続微動の振幅のやや大きくなる状態が繰り返し観測されるなど、火山活動はやや活発な状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
火口縁を超える噴気が時折観測されており、火山活動はやや活発な状態が続いている。
桜 島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
比較的静穏な噴火活動が続いているが、今期間、噴火は観測されなかった。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。

【静穏な状態であるが、観測データに変化のあった火山】

伊豆大島 [静穏な状況(レベル1)
29〜30日に西方沖で小さな地震が一時増加した。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)


注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態にある火山
 ◇:静穏な状態にあるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。今期間は天候不良の日が多かったこともあり、山麓の高感度カメラ1)で火映は観測されなかった。
 火山性地震は1日あたり9〜19回とやや少ない状態であった。火山性微動は時々観測されている。

1) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。


◇ 伊豆大島  [静穏な状況] (レベル1)]

 29日23時(前期間)から30日05時にかけて、島の西方海域の深さ約4〜6kmを震源とする地震がややまとまって発生した。最大地震は03時20分に発生したM(マグニチュード)0.9(暫定)であった。震度1以上が観測された地震はなかった。その後、地震活動は落ち着いた状態に戻っている。その他の観測データには特段の変化はなかった。
 伊豆大島西方海域では、これまでにもしばしば地震の一時的な多発がみられており、最近では2005年11月上旬にも発生している。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙がほぼ連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。4日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は、1日あたり1,700〜3,900トンと依然として多量の火山ガスの放出が続いている(前回12月26日3,700〜5,800トン)。
 3日02時から08時にかけて、火口直下を震源とする地震が一時的に増加し(日回数140回)、02時51分、07時17分および08時16分には空振を伴う低周波地震が発生した2)。そのうち02時51分と07時17分の地震では、三宅村神着で震度1を観測した。噴煙の状況やその他観測データには特段の変化はなかった。その他の日は地震回数は少ない状態で経過した。火山性微動は観測されなかった。

2) 三宅島では、空振を伴う低周波地震が発生した時に山頂火口から火山灰噴出を伴うことがある。


● 福徳岡ノ場  [やや活発な状況]

 2日に海上保安庁が上空から行った観測によると、福徳岡ノ場付近で火山活動によると考えられる変色水が確認された。付近に浮遊物は認められなかった。変色水は福徳岡ノ場から東に長さ約1,000m、幅約50mで延びる薄い緑色のものであった。


● 阿蘇山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性連続微動の振幅のやや大きくなる状態が繰り返し観測されるなど、火山活動はやや活発な状態が続いている。
 今期間、火山性連続微動の振幅はやや小さい状態で経過した。
 5日に行った現地観測では、火口内の湯だまり3)は、量が約8割、色が乳緑色で変化なく、表面温度は52℃(赤外放射温度計4)による)とやや低い値が続いている。湯だまり内では土砂噴出は観測されず、引き続き噴湯現象が観測されている。
 孤立型微動及び火山性地震の発生状況には大きな変化はなく、噴煙活動、地殻変動等その他の観測データにも特段の変化はなかった。

3) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。

4) 赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 御鉢火口では火口縁を超える噴気が時折観測されるなど、火山活動はやや活発な状態が続いている。4日に火口縁上100mの高さの噴気が観測された。
 3日には振幅の小さな継続時間の短い火山性微動が観測された。霧島山(御鉢)で火山性微動が観測されたのは10月3日以来であった。


● 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 比較的静穏な噴火活動が続いているが、今期間、噴火は観測されなかった(前期間はごく小規模な噴火を観測)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳火口から連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されなかった。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。期間中、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。


▲ 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 1月1日に噴火が2回観測され、その内1回は爆発的噴火であった。
 十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、1月1日07〜08時頃に火山灰を含む噴煙が上がっているのが確認され、同日集落(御岳の南南西約4km)で少量の降灰があった。同日22時54分に爆発的噴火が観測されたが、噴煙の状況は不明であった。
 火山性微動も1月1日に継続時間の短いものがやや多く観測された。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
三 宅 島 火山観測情報
第609〜610号
第1〜4号
(1日1回発表)
12月30日
〜1月5日
16:30
前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。


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