北海道駒ヶ岳 有史以降の火山活動

有史以降の火山活動(▲は噴火年を示す)

年代 現象 活動経過・被害状況等
▲1640(寛永17)年 大規模:(岩屑なだれ)→マグマ噴火 7月31日大規模噴火:山鳴り激しく、昼頃山頂部が一部崩壊し岩屑なだれが大沼と内浦湾になだれ込み津波発生、 沿岸で700余名が溺死。山体崩壊と同時に火砕流(ブラスト)発生。山体崩壊後8月2日まで軽石・火山灰を激しく噴出し、 降灰、火砕流が発生。活動は8月下旬まで続く。出来澗(できま)崎形成。大沼、小沼ほぼ現在の姿となる。
総噴出物量2.9km3、マグマ噴出量は1.1DREkm3。(VEI5)。岩屑なだれの体積は大沼側0.3km 3、鹿部側1.42~1.70km3
▲1694(元禄7)年 大規模:マグマ噴火 8月24日大規模噴火:朝より26日まで、地震・火山雷を伴う噴火。軽石降下、火砕流発生。
総噴出物量0.36km3、マグマ噴出量0.14DREkm3。(VEI4)
1765(明和2)年 小噴火? (古老伝説)。
1788(天明8)年 噴煙 (江差郷土史)。
▲1856(安政3)年 大規模:マグマ噴火 9月23日大規模噴火:鳴動あり、25日早朝 山麓で地震頻発し、9:00頃 激しい噴火始まる。東麓の鹿部・ 本別の両地域では降下軽石のため死者2名、負傷者多数、17家屋が焼失。南東麓の留ノ湯では火砕流に襲われ、 死者19~27名。噴火は当日夕方までにほとんど終わり、その後約1か月間小噴火が時々起きる。安政火口生成。
総噴出物量0.21km3、マグマ噴出量0.08DREkm3。(VEI4)
▲1888(明治21)年 水蒸気噴火 小噴火(官報、函館新聞)。
▲1905(明治38)年 水蒸気噴火→(泥流発生) 8月17日・18日の両日に鳴動があり19日朝小噴火。安政火口の南側に新爆裂火口(明治火口)が開かれる。
21~23日にかけても噴火し、22日には押出沢で大雨による二次泥流が発生、農作物に多少の被害があった。
▲1919(大正8)年 水蒸気噴火 6月16日に地震(函館測候所15:54)、鳴動あり、17日小噴火、以後7月26日まで数回の噴火。
1922(大正11)年 火山活動? 5月22日、多少火山活動に異常を呈する程度。(詳細不明)
▲1923(大正12)年 水蒸気噴火 2月27日7:00頃、突然噴火し、砂原村においては鳴動を聞き、山麓西方に少量の降灰があった。
3月15日14:10頃、遠雷のごとき音響を発すると共に黒煙をあげた。
▲1924(大正13)年 水蒸気噴火 7月31日8:00頃より度々鳴動し、8:30頃小爆音と共に黒煙を上げ、高さ約250mに達した。
▲1929(昭和4)年 大規模:マグマ噴火、(泥流発生) 6月17日0:30頃から噴火が始まり(函館測候所で、0:26から約8分間微動を記録)、次第に降灰が盛んになり 10:00頃鳴動を伴い大噴火。11:00の噴煙高度13900m。午後から火砕流流下。噴石、降下軽石、火砕流、火山 ガスによる被害は8町村に及び、家屋の焼失、全半壊、埋没など1915余り、山林耕地の被害多く、死者2名、負傷者4名、 牛馬の死136頭。同日23:00過ぎには急速に活動が衰え、19日にはほぼ平常に復し、21日活動停止。昭和4年火口、 繭(まゆ)型火口、瓢(ひさご)型火口生成。
総噴出物量0.34km3、マグマ噴出量0.14DREkm3。(VEI4)
9月6日噴煙増加。鳴動もあり。
1934(昭和9)年 鳴動 9月29日昼から夜にかけて数回鳴動。
1935(昭和10)年 鳴動・噴煙 10月14日に鳴動。15日噴煙増加。
▲1937(昭和12)年 水蒸気噴火 3月17、19日小噴火:昭和4年火口底が吹き飛ばされて桶状となる。
1938(昭和13)年 地震・噴気 2~4月、小地震頻発、噴気活動活発。
1939(昭和14)年 噴煙 4月5日、9月28日噴煙増加。
▲1942(昭和17)年 中規模:水蒸気噴火→マグマ水蒸気噴火→水蒸気噴火,(泥流発生) 火砕サージ→火砕物降下、泥流。
11月16日8:00頃、鳴動と共に噴火が始まり、噴煙高度は海抜8000m。小規模な火砕サージも発生した。 火山レキや火山灰は東南東方向に降下し、堆積物の厚さは鹿部で2cm以上に達した。山頂火口原に長さ約 1.8kmの大亀裂(割れ目)生成。18日にも小噴火。泥流は山頂火口原割れ目火口列東方で11月16~20日の間に発生した。
総噴出物量0.002~0.003km3。(マグマ噴出量は微量)(VEI2)。
1943(昭和18)年 噴煙 噴煙増加:1月30日火口上1000m。4月16日火口上1500m。
1947(昭和22)年 噴煙 噴煙増加:2月14日火口上1800m。11月9日火口上1300m。
1949(昭和24)年 噴煙 噴煙増加:4月26日火口上1200m。
1954(昭和29)年 噴煙 噴煙増加:4月3日火口上1200m。
1967(昭和42)年 地震 地震群発:横津岳周辺で群発地震、12月9日震度1:函館・大沼。12月16日震度2:鹿部、震度1:森、大野。
1969(昭和44)年~1971(昭和46)年 地震 地震群発:1969年10月~1971年5月横津岳周辺で群発地震、1970年2月8日震度3:函館。1971年5月17日震度2:函館。
1979(昭和54)年 噴煙 1月21日を最後に(1996年3月の噴火まで)森測候所からの遠望観測で噴煙が観測されなくなった。
1983(昭和58)年 地震・熱 6月13日短時間に22回の地震群発。
10月瓢形火口の地中温度やや上昇。
1987(昭和62)年 熱活動 昭和17年火口の温度が下降傾向から上昇傾向に反転。
1989(平成元)年 地震・火山性微動 12月30日駒ヶ岳の北約5kmの砂原付近で地震群発、西山麓(旧A点)で20回。最大M3.4、震度3:森、震度1:室蘭。
火山性微動と推定される震動を広範囲で観測(北大)。
1990(平成2)年 地震・火山性微動 4月3、6日に地震あり、7日には短時間に西山麓(旧A点)で49回群発。7日に低周波地震、火山性微動も観測(北大)。
▲1996(平成8)年 小規模:水蒸気噴火 3月5日噴火前に地震5回。
3月5日小規模噴火:火砕物降下。18:10頃から約6分間の火山性微動を観測。昭和4年火口内に「96年主火口」、昭和4年火口の南側火口原に延長約200mの「96年南火口列」生成。
総噴出物量12万トン。(VEI1)
3月9日噴煙増加、火口上1000m。
▲1998(平成10)年 噴気活動
熱活動
5月14日明治火口北西壁中部に新たな噴気確認(1996年3月の噴火直後以来)。繭型火口付近に新噴気孔確認。 いずれも噴出物の痕跡は認められず。
7月30~31日96年南火口列東側地熱で温度やや上昇、地熱域拡大。
小規模:水蒸気噴火 10月25日小規模噴火:火砕物降下。9時12分から約6分間の火山性微動を観測。噴火直後の噴煙高度は1200mに達し、 東南東方向約10kmの範囲まで微量の降灰。昭和4年火口内に「98年火口」生成。
総噴出物量5万トン。(VEI1)。
1999(平成11)年 火山性微動 3月1日微動:約1分間の火山性微動を観測。表面現象に異常なし。
▲2000(平成12)年
火山性微動 3月12日約1分間の火山性微動を観測。表面現象に異常なし。
噴気 7月19~21日昭和4年火口内の噴気が春の現地観測と比べて量・勢い共に増大(96年主火口、98年火口共)。
噴気 8月7~9日昭和4年火口の噴煙が通常より多くなり、高さの最高は火口上400m(白色、9日)に達したが、有色噴煙や火山性地震・微動は観測されなかった。また、9日午後に実施した臨時現地観測でも火口周辺に異常は認められなかった。
地震 8月11日22:47規模の大きな地震。森町上台町で震度3、八雲町上の湯で震度1。震源は駒ヶ岳の北北西約10kmの内浦湾。M3.4。
小規模:水蒸気噴火 9月4日小規模噴火。22:14から約10分間の火山性微動を観測。噴火直後の噴煙状況は夜間のため確認できなかったが、5日5:00には火口上500mの高さの白色噴煙を確認した。火山灰は北西方向に分布し、昭和4年火口から約11kmの範囲まで微量の降灰。火口原の火山灰・レキは最大40cm堆積、人頭大の噴石多数、長径1m以上の岩塊も見られた(道立地質研究所、森測候所)。 総噴出物量10万トン。(VEI1)
水蒸気噴火 9月12日ごく小規模な噴火。22:12から約3分間の火山性微動を観測。噴煙は白色で高さは火口上700m。聞き取り調査の結果、降灰や表面現象の異常は確認されなかった(後日森測候所により火口周辺で微量の降灰確認)。
水蒸気噴火 9月28日小規模噴火。13:56から約8分間の火山性微動を観測。噴火直後の噴煙状況は雲のため確認できなかったが、南東山麓の東大沼地区など、昭和4年火口から約10kmの範囲で微量の降灰があった。火山灰の厚さは火口近傍で2cm程度。
水蒸気噴火 10月24日ごく小規模な噴火。0:01から約3分間の火山性微動を観測。微動観測時から噴煙活動が活発となり、火口上2000m以上に達した(量、色不明)。聞き取り調査や周辺自治体の調査によると、山麓では降灰は確認されなかった。また機上観測でも火口周辺に新たな噴出物は認められなかったが、24日午後、森測候所、道立地質研究所などが実施した現地調査の結果、火口原馬ノ背付近までの範囲に新たな微量の火山灰が確認された。
小規模:水蒸気噴火 10月28日小規模噴火。2:43から約9分間の火山性微動を観測。噴煙は火口上2000m以上に達した(量、色不明)。降灰は鹿部町を中心に東方向に分布し、昭和4年火口から約17kmの南茅部町岩戸地区まで微量の降灰。29日の北大の調査によると、最大径約4.5mの噴石やサージ堆積物が認められた。噴出物量3万トン。(VEI1)
火山性微動 11月1日山頂の臨時観測点にのみ記録される程度の小さな微動が3回発生。継続時間はそれぞれ30秒程度。
火山性微動 11月4日継続時間約2分の火山性微動を観測。それ以外にも小さな類似波形あり。北大の総合観測井では同時間帯に傾斜変動を観測。表面現象に異常はなかった。
火山性微動 11月5日山頂の臨時観測点にのみ記録される程度の小さな微動。継続時間30秒程度。
水蒸気噴火 11月8日小規模噴火。7:38から約9分間の火山性微動を観測。噴火時の噴煙は火口上2000m以上に達した(量、色不明)。火山灰は東~東南東に分布し、昭和4年火口から約12kmの鹿部漁港付近までごく微量の降灰。
2001(平成13)年 微動・地殻変動 1月17日13:29から継続時間約1分の火山性微動を観測。噴煙は雲のため不明。西山麓(旧A点)の傾斜計では火山性微動と同時に山下がり→山上がりの変動を観測した。
2002(平成14)年 地震 2月19日、駒ヶ岳東麓のやや深い所でM3クラス含む地震がまとまって発生したほか、2~3月にかけ地震活動がやや活発化。
2017(平成29)年 地震 11月26日、山頂の浅い所を震源とする規模の小さな地震が増加。

日本活火山総覧(第4版)(気象庁編、2013)による。
噴火イベントの年代、噴火場所、噴火様式等については、(国研)産業技術総合研究所の活火山データベース(工藤・星住, 2006)を参考に、文献の追記を行った。
なお、噴出物量については、降下火砕物、火砕流、火砕サージ、溶岩流、溶岩ドーム等を加えた重量(単位は「ton」)またはマグマ噴出量(DRE km3)で記載しています。また、噴出物量が既知である場合については、産業技術総合研究所作成の活火山データベースから参照し、VEI(火山爆発指数)も付しています。詳しくはこちらを参照してください。



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