画像特性(バンド12)

バンド12は9.6μmに中心波長を持ちます。このバンドは図1に示すように大気中の水蒸気の吸収の影響を受けにくい窓領域であるほか、成層圏に多く存在するオゾンの吸収を受けるため、通称オゾンバンドとも呼ばれています。図2の荷重関数を見ると、他の赤外窓領域バンドと同様に対流圏下層にピークがあるほか、100hPa以上の高度にも第二のピークがみられるのが特徴で、オゾンに対する感度が示唆されています。

オゾンは低緯度で生成されたのち、成層圏下部における大気循環(子午面循環)、いわゆるブリューワー・ドブソン循環によって極域へ輸送されると考えられています。例として月平均オゾン全量の世界分布図(図3)を見るとオゾン全量は季節ごとに変動があるものの、概ね極側に多く、低緯度側は少ない分布となっています。

バンド12の画像例(図4上図)を示すと、大気中の水蒸気等の影響の少ない赤外窓領域のバンド13画像(図4下図)に比べ、特に高緯度側が全体的に明るく(輝度温度が低く)見えます(輝度温度の範囲はどちらも220~300K)。ただし高緯度の輝度温度の低さは地表温度の影響なども考えられるので、オゾンによる吸収が全ての原因とは限りません。

図1 赤外バンド波長(波数)帯における大気中の気体分子による吸収特性。縦軸は透過率、横軸は波数、赤線と最上段の赤字はひまわり 8 号の観測バンドを示す(Clerbaux et al., 2011 に一部追記)。
図2 各赤外バンドの荷重関数(縦軸:気圧、横軸:荷重関数)。
図3 月平均オゾン全量(matm-cm)(上:2015年6月、下:2015年12月)(気象庁ウェブページより)
図4 バンド12の画像例(上:バンド12、下:バンド13)。輝度温度の範囲はどちらも220~300K。