画像特性(バンド11)

バンド11は8.6μmに中心波長を持ちます。図1に示したように大気中の水蒸気の吸収の影響を受けにくい窓領域ですが、従来用いられてきた10μm帯などよりも水蒸気の影響を受けるため、海外の資料などでは「汚れた(dirty)」窓領域などと表現されます。

また、バンド11は二酸化硫黄による吸収の影響を受けます。このためバンド10と同様に火山性ガス拡散の識別と追跡にも用いることができます。射出率についても他の赤外バンドに比べて小さく特徴的です(図2)(Lucey,2009)。

図3,4,5はムチャツカ半島のツパノフスキー火山の噴煙の事例です。バンド11画像で噴火に由来すると考えられる噴煙が見られます。同じく赤外窓領域のバンドであるバンド13でも比較的明瞭に噴煙が見られることから水蒸気(または水蒸気が冷却された水滴や氷晶)が含まれると考えられます。それに加えて、バンド11とバンド13の差分画像では、噴煙に対応する領域が白く(差分値が小さく)表示され(図中赤色の矢印)、噴煙の先端付近(図中黄色の矢印)は黒い(差分値が大きい)ことから、先端付近では二酸化硫黄が多く含まれると推測されます。

図1 赤外バンド波長(波数)帯における大気中の気体分子による吸収特性。縦軸は透過率、横軸は波数、赤線と最上段の赤字はひまわり 8 号の観測バンドを示す(Clerbaux et al., 2011 に一部追記)。
図2 赤外波長領域におけるケイ素および二酸化硫黄の射出率(縦軸:射出率、横軸:波長)(Lucey, 2009 より一部改変)。
図3 バンド11画像(2016年2月9日10UTCのカムチャツカ半島のツパノフスキー火山の噴煙の事例)
図4 バンド13画像(2016年2月9日10UTCのカムチャツカ半島のツパノフスキー火山の噴煙の事例)
図5 バンド13画像、バンド13とバンド11の差分画像(2016年2月9日10UTCのカムチャツカ半島のツパノフスキー火山の噴煙の事例)