日本沿岸の海面水位の長期変化傾向

平成19年2月13日発表

気象庁地球環境・海洋部

診断(2006年)

ここ100年の日本沿岸の海面水位には、全球の海面水位のような単調な上昇はみられません。1950年ころに極大がみられ、また約20年周期の変動が顕著です。一方で、1980年代半ば以降(1985~2006年)については大きな上昇率(3.3mm/年)となっています。



海面水位変動図

海面水位変動(1906~2006年)

検潮所地図1検潮所地図2

検潮所地図

日本沿岸で地盤変動の影響が小さい検潮所を選択しています。1906年から1959年までは4地点(左図)、1960年以降は16地点(右図)の検潮所を選択しています。1906年から1959年までは、地点毎に求めた年平均海面水位偏差を4地点で平均した値の推移を示しています。1960年以降については、日本周辺をⅠ:北海道・東北地方の沿岸、Ⅱ:関東~東海地方沿岸、Ⅲ:近畿~九州地方の太平洋側沿岸、Ⅳ:北陸~九州地方東シナ海側沿岸の4海域に分類(右図)し、海域毎に求めた年平均海面水位偏差の平均値の推移を示しています。グラフは、1971年から2000年までの期間で求めた平年値を基準としています。青線は4地点平年偏差の5年移動平均値、赤線は4海域平均偏差の5年移動平均値を示します。
忍路、柏崎、輪島、細島は国土地理院、東京(芝浦)は海上保安庁の所管です。

解説

2007年2月に発表された、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)第4次評価報告書の政策者向け要約では、「世界平均海面水位は1961年から2003年にかけて、年平均1.8[1.3~2.3]mmの割合で上昇した。1993年から2003年にかけての上昇率はさらに大きく、年3.1[2.4~3.8]mmの割合であった。」と結論づけられています。しかし、ここ100年の日本沿岸の海面水位には、全球の海面水位のような単調な上昇はみられません。1950年ころに極大がみられ、また約20年周期の変動が顕著です。一方で、1980年代半ば以降(1985~2006年)については大きな上昇率(3.3mm/年)となっています。上記のIPCC第4次報告書で大きな上昇を示したとされる1993年から2003年をみると年あたりの上昇率は5.0mmであり、世界平均の平均上昇率3.1[2.4~3.8]mm/年より大きくなっています。ここで、大括弧[ ]内に示した数値は、解析の誤差範囲を表します。
 約20年周期の変動については、主に北太平洋の偏西風の強弱や南北移動を原因としていることが数値モデルを用いた解析により明らかになっています。また、東シナ海では表層水温の上昇にともなう海水の膨張量と沿岸の海面水位の上昇に良い対応がみられます。
 なお、昨年までの本診断では忍路、輪島、浜田、串本、細島の5地点の観測データを平均して海面水位変動の指標としていましたが、ここでは、1906年から1959年については忍路、輪島、浜田、細島の4地点を、1960年以降については稚内、忍路、函館、深浦、八戸、輪島、柏崎、浜田、東京(芝浦)、内浦、和歌山、松山、長崎、土佐清水、油津、枕崎の16地点の観測データを使用し、解析精度の向上をはかっています。

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