キーワードを入力し検索ボタンを押下ください。

北太平洋亜熱帯モード水

 北太平洋亜熱帯モード水(以下「亜熱帯モード水」)は、北太平洋の亜熱帯循環域北西部の水深100~400mにおける等密度層(海水の密度を決める水温と塩分が鉛直方向にほぼ一定)として、広く分布しています。
 亜熱帯モード水は以下の過程を経て形成されます(図1)。冬季、黒潮・黒潮続流のすぐ南側の海域では、寒冷な北西の強い季節風によって大気よりも温度の高い海面が冷却され、海面から大気へ大量の熱が放出されます。海面付近の海水は冷却され重くなり、鉛直混合によって表層混合層が厚くなります。そして春季以降に海面付近の水温が上昇することによって、この厚い表層混合層が蓋をされ、亜熱帯モード水が形成されます(Bingham, 1992)。形成された亜熱帯モード水は、黒潮・黒潮続流によって東へ輸送されるとともに、再循環によって南西方向に輸送されて、亜熱帯循環域北西部に広がります。また、東に行くにつれて、黒潮・黒潮続流によって運ばれる熱が少なくなるため、形成される亜熱帯モード水の水温は低下し、特に伊豆海嶺付近で急激に変化します。そのほか、主水温躍層が深く、混合層の発達しやすい暖水渦内部で厚いモード水が形成されやすいことも指摘されています(Oka, 2009 ; Douglass et al., 2012 ; Kouketsu et al., 2012)。
 亜熱帯モード水形成域は、大気中から多くの二酸化炭素を吸収・蓄積している海域であり(参考:海洋中の二酸化炭素蓄積量)、亜熱帯モード水は二酸化炭素の輸送過程に重要な役割を果していると考えられます。そのため、今後もその変化の様子を長期にわたって引続き注意深く監視する必要があります。

北太平洋亜熱帯モード水の形成過程

図1 北太平洋亜熱帯モード水の形成過程の模式図

北太平洋亜熱帯モード水の変動について

 これまでの調査で亜熱帯モード水のコア水温の変動に、冬季の季節風の強弱や、暖流である黒潮の流量の増減が影響していることが知られています。また、亜熱帯モード水の厚さの変動要因について、Sugimoto and Hanawa(2010)では、その変動はアリューシャン低気圧の南北変動に伴った主水温躍層深度の変動によるものであることが示されています。即ち、アリューシャン低気圧の中心が南寄り(北寄り)になると、日付変更線付近の主水温躍層が浅くなり(深くなり)、その変動が西方伝播することによって、亜熱帯モード水の厚さ(分布量)が変動します。また、主水温躍層深度が深くなると、分布域が南へ拡大します(図2、図3)。南ほど低温の亜熱帯モード水が分布することから分布域が南へ拡大すると、コア水温は低下します(図4)。
 また、四国沖の暖水渦では高温の亜熱帯モード水が形成され(林,2008など)、黒潮大蛇行期及び非大蛇行離岸流路となる時期には、この四国沖の暖水渦が非大蛇行接岸流路となる時期に比べて西より分布することから、東経137度線付近では亜熱帯モード水の分布量が少なくなり、コア水温は低温となります。

北緯24度~北緯34度における主水温躍層深度偏差とアリューシャン低気圧の中心緯度

図2 北緯24度~北緯34度における主水温躍層深度偏差(m)とアリューシャン低気圧の中心緯度

水温12℃となる深度を主水温躍層深度とし(Uehara et. al., 2003)、冬季海面気圧の極小となる位置をアリューシャン低気圧の中心とした。Ishii and Kimoto(2009)に基づき解析した水温・塩分のデータセット及び、JRA-55再解析データ(Kobayashi et al., 2015)による。右図の太線は3年移動平均を示します。実線(破線)の矢印は亜熱帯モード水の断面積が極大(極小)になった時期をあらわします。

東経137度線における亜熱帯モード水の厚みの時系列(3年移動平均)

図3 東経137度線における亜熱帯モード水の厚さ(m)の時系列(3年移動平均)

黒潮大蛇行期及び非大蛇行離岸流路となる時期と、非大蛇行接岸流路となる時期における亜熱帯モード水の分布の模式図

図4 黒潮大蛇行期及び非大蛇行離岸流路となる時期と、非大蛇行接岸流路となる時期における亜熱帯モード水の分布の模式図

参考文献

  • Bingham, F.M., 1992 : Formation and spreading of Subtropical Mode Water in the North Pacific. J. Geophys. Res., 97, 11177-11189.
  • Douglass, E.M., S.R. Jayne, S. Peacock, F.O.Bryan and M.E. Maltrud, 2012 : Subtropical mode Water Variability in a Climatologically Forced Model in the Northwastern Pacific Ocean. J. Phys. Oceanogr., 42, 126-140.
  • 林和彦, 2008 : 東経137度線にみられる低渦位水は亜熱帯モード水なのか? 測候時報, 75特別号, S97-S103.
  • Ishii, M., and M. Kimoto, 2009: Reevaluation of historical ocean heat content variations with time-varying XBT and MBT depth bias corrections. J. Oceanogr., 65, 287-299.
  • Kobayashi, S., Y. Ota, Y. Harada, A. Ebita, M. Moriya, H. Onoda, K. Onogi, H. Kamahori, C. Kobayashi, H. Endo, K. Miyaoka, and K. Takahashi, 2015: The JRA-55 Reanalysis: General Specifications and Basic Characteristics. J. Meteor. Soc. Japan, 93(1), 5-48, doi:10.2151/jmsj.2015-001.
  • Kouketsu, S., H. Tomita, E. Oka, S. Hosoda, T. Kobayashi and K. Sato, 2012 : The role of meso-scale eddies in mixed layer deepening and mode water formation in the western North Pacific. J. Oceanogr., 68, 63-77.
  • Oka, E., 2009 : Seasonal and Interannual Variation of North Pacific Subtropical Mode Water in 2003-2006. J. Oceanogr., 65, 151-164.
  • Sugimoto, S., K. Hanawa, 2010: Impact of Aleutian Low activity on the STMW formation in the Kuroshio recirculation gyre region. Geophys. Res. Lett., 37:L03606.
  • Uehara, H., T. Suga, K. Hanawa and N. Nishikawa, 2003 : A role of eddies in formation and transport of North Pacific Subtropical Mode Water. Geophys. Res. Lett., 30, 1705.

このページのトップへ