太平洋の海面水温に見られる年~数年規模の変動

太平洋の熱帯域では年~数年規模の顕著な海面水温の変動が見られ、大気との相互作用を通して日本を含む多くの地域の天候に影響を与えています。 このページでは、太平洋の海面水温に見られる年~数年規模の変動として、気象庁でも発生状況を監視しているエルニーニョ(ラニーニャ)現象と、近年注目されている中部太平洋熱帯域を中心とする変動について示します。

エルニーニョ(ラニーニャ)現象

太平洋における主要な数年規模の変動として、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり(図1)、その状態が1年程度続くエルニーニョ現象があります。逆の状態はラニーニャ現象と呼ばれ、それぞれ数年に一度発生します。エルニーニョ(ラニーニャ)現象に対応して熱帯域における大気の循環(ウォーカー循環)も変動し、これらを合わせた一連の変動をエルニーニョ南方振動(El Niño Southern Oscillation : ENSO)と呼びます。ENSOの影響は、大気の変動を介し、全球に及びます。 エルニーニョ/ラニーニャ現象に伴う大気・海洋の変動や、天候への影響については、エルニーニョ/ラニーニャ現象に関する知識のページで詳しく解説しています。


エルニーニョ現象が発生した1997年11月の海面水温平年偏差分布図

図1:エルニーニョ現象が発生した1997年11月の海面水温平年偏差分布図。

エルニーニョ(ラニーニャ)もどき

近年、太平洋赤道域の中部(日付変更線付近)で海面水温が平年に比べて高く(低く)なり、西部と東部で低く(高く)なる変動(図2)の存在が指摘され、エルニーニョ(ラニーニャ)現象とは異なる変動としてエルニーニョ(ラニーニャ)もどきと呼ばれています(Ashok et al, 2007)。対応するウォーカー循環の変動や、全球の気候に表れる影響もENSOのそれとは異なっており、例えば熱帯域のアフリカ東部やインドではエルニーニョ現象が発生すると北半球の夏季に気温が高く、エルニーニョもどきが発生すると気温が低くなる傾向があります(Ashok et al, 2007)。

エルニーニョもどきや、それと似た変動である中部太平洋赤道域の海面水温変動(Central Pacific El Niño; Yeh et al., 2009)は地球温暖化に伴って今後発生する頻度が増す可能性がある変動として注目を集めており、研究が進められています(Ashok and Yamagata, 2009)。


エルニーニョもどきが発生したとされる2004年8月の海面水温偏差分布図

図2:エルニーニョもどきが発生したとされる2004年8月の海面水温偏差分布図。

参考文献

  • Ashok, K., S. K. Behera, S. A. Rao, H. Weng and T. Yamagata (2007) : El Niño Modoki and its possible teleconnection; J. Geophys. Res., Vol.112, C11007.
  • Ashok, K. and T. Yamagata (2009) : The El Niño with a difference; Nature, Vol.461,pp.481-484.
  • Yeh, S. W., J. S. Kug, B. Dewitte, M. H. Kwon, B. P. Lirtman and F. F. Jin (2009) : El Niño in a changing climate; Nature, Vol.461,pp.511-514.

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