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1.4 海洋の温室効果ガス

平成25年12月20日

1 海洋の温室効果ガスの基礎知識

(1)地球温暖化と海洋の温室効果ガス

図1.4-1 過去10,000年(大きい図)および1750年以降(挿入された図)の二酸化炭素、メタンおよび一酸化二窒素の大気中濃度(IPCC, 2007)

図1.4-1 過去10,000年(大きい図)および1750年以降(挿入された図)の二酸化炭素、メタンおよび一酸化二窒素の大気中濃度(IPCC, 2007)

測定値は氷床コア(異なる色の印は異なる研究を示す)と大気中のサンプル(線)によるもの。大きいパネルの右軸は対応する放射強制力(大気中の温室効果ガスなどにより、放射のやり取りのバランスを変える働きを表す量)。ppm(100万分の1)もしくはppb(10億分の1)は、乾燥空気中の全分子数に占める温室効果ガスの分子数の割合。

大気中の二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハロカーボン類などの気体は、地表から赤外線の形で宇宙に逃げていくエネルギーを吸収して大気を暖め、地球の平均気温を上げる働きをする。このような働きは温室効果と呼ばれ、この効果をもつ気体を温室効果ガス※1と呼んでいる 。20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人間活動によって大気中へ放出された温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が非常に高いとされている(IPCC, 2007)。
大気中の温室効果ガス濃度の増加は、化石燃料の大量消費や森林の消失など人間活動に由来するものであり、19世紀以降増加し続けている(図1.4-1)。人為的な温室効果ガスの放出が続くと地球温暖化が進行し、気温の上昇とともに、世界各地の異常気象の頻発や、海面の水位の上昇などが懸念されている。
図1.4-2に、主な温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハロカーボン類)の地球温暖化に対する寄与※2の割合を示す。二酸化炭素は、温室効果ガスのなかでも大気中に最も多く存在し、地球温暖化への寄与は温室効果ガス全体のうち約63%を占めており最も大きいとされている。
大気中の二酸化炭素は、海洋圏や陸上生物圏に取り込まれると、種々の炭素化合物の形態に変わるので、地球全体では、炭素循環と呼ばれる循環として理解する必要がある。これを模式的に表したものが図1.4-3である。1990年代の平均では、大気中には炭素換算量(二酸化炭素の中に含まれる炭素の重量)にして7,620億トン炭素の二酸化炭素が貯えられている。人類は毎年、化石燃料の燃焼やセメント製造などによって、64億トン炭素の二酸化炭素を、また、土地利用変化によって、16億トン炭素の二酸化炭素を放出しており(合わせて80億トン炭素)、そのうち約半分の32億トン炭素が大気中に残存する。残り48億トン炭素のうちの22億トン炭素が海洋に、26億トン炭素が陸上生物圏に吸収されると見積もられている。また、2000~2005年の平均では化石燃料の燃焼などの放出が年間72億トン炭素と増加したのに対し、海洋と陸上での吸収は合わせて31億トン炭素とほとんど変化しなかった(海洋への吸収は、年間22億トン炭素、 土地利用変化による放出と陸上生物圏への吸収の収支は9億トン炭素の吸収)。その結果、大気中への蓄積は年間41億トン炭素に増加したと見積もられている(IPCC,2007)。
しかし、二酸化炭素の海洋や陸上生物圏への吸収量の見積もりには、4~6億トン炭素の不確実性がある。また、大気中の二酸化炭素濃度には、大きな年々変動がみられることから、海洋や陸上生物圏の吸収量も大きく年々変動していることが推測される。将来の大気中の二酸化炭素濃度、ひいては地球温暖化における不確実性を低減させるためには、大気・海洋・陸上生物圏における炭素蓄積量の長期的な変化や、それら相互の二酸化炭素の交換量を正確に評価する必要がある。また、それらの年々変動の大きさや、これを引き起こす原因を解明するなど、炭素循環に関する理解を向上させる必要がある。このために組織的で持続的な観測、気候モデルや気候の諸過程に関する研究のいっそうの進展が望まれる。ここでは温室効果ガスのなかでも地球温暖化への影響が最も大きく、従来から多くの観測や研究が行われてきた、海洋の二酸化炭素について診断する。

※1:大気中に含まれる水蒸気にも温室効果はあるが、その濃度変化は、ほとんど気候の変化に応じたものであり、人間活動による排出量は自然に発生する水蒸気量に比べわずかなため、地球温暖化問題で対象とする温室効果ガスには含めない。

※2:放射強制力とは地球全体と宇宙とのエネルギーのやり取りを変化させる影響度の尺度であり、正値であれば地表面を暖める効果が、負値であれば冷やす効果がある。温室効果ガスは前者の効果を持つ。

図1.4-2 地球温暖化への各温室効果ガスの寄与

図1.4-2 地球温暖化への各温室効果ガスの寄与

二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハロカーボン類の放射強制力(IPCC, 2007)の割合。

図1.4-3 炭素循環の模式図(1990年代)

図1.4-3 炭素循環の模式図(1990年代)

IPCC(2007)をもとに作成。各数値は炭素重量に換算したもので、蓄積量(箱の中の数値、億トン炭素)あるいは交換量(矢印に添えられた数値、億トン炭素/年)を表している。黒は自然の循環で収支がゼロであり、赤は人間活動により大気中へ放出された炭素の循環を表している。


参考文献

  • IPCC, 2007: Climate Change 2007: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Fourth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Solomon, S., D. Qin, M. Manning, Z. Chen, M. Marquis, K.B. Averyt, M. Tignor and H.L. Miller (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 996 pp


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