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1.3.2 オホーツク海の海氷

第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化
1.3.2 オホーツク海の海氷の海氷の要約はこちら
平成25年12月20日

診断概要

診断内容

 オホーツク海の海氷の変化は、地球温暖化の影響を受けると考えられているほか、北海道の気候や親潮の水質などに影響を及ぼす。ここでは、オホーツク海の海氷について、1970年の観測開始以来43年間の長期変化傾向を診断する。

診断結果

 1970年代初めからのオホーツク海の海氷域面積は緩やかな減少傾向であり、網走で流氷が観測される期間も短くなる傾向がある。しかし、長期的な変化よりも10年程度の周期の変動や年々の変動の振幅のほうが大きい。これは、オホーツク海の海氷の大部分が、北部で生成して風や海流によって運ばれる流氷で構成されることから、年々の大気の流れに大きく支配されるためである。オホーツク海の海氷域面積は北極域のように明確な減少傾向になく、海氷域面積の変動に及ぼす気象や海洋のメカニズムについて、地球温暖化の影響の評価も含めて現在も研究が進められている。

1 オホーツク海の海氷の基礎知識

(1)オホーツク海の海氷の季節変化

図1.3.2-1 オホーツク海の平年の海氷分布

図1.3.2-1 オホーツク海の平年の海氷分布

平年値は1981年~2010年の30年平均値。

オホーツク海は海氷が存在する海としては、北半球で最も南にある海の一つである。これは、①オホーツク海は千島列島などよって外洋から隔てられた縁海であり、アムール川から流れ込む大量の淡水などによってオホーツク海の表層に低塩分の層が形成されているため、表面が冷却されたときに沈み込みにくいこと、②オホーツク海の上をシベリアから冷たい季節風が吹くこと、③オホーツク海を反時計回りに流れる海流と北西の季節風により、海氷が南部及び東部に運ばれること、による。
オホーツク海の海氷は、10月後半から11月初め頃に結氷が始まり、翌年7月頃までには融解・消失する季節海氷である。平年の分布では、海氷域が最も広がる3月上旬にオホーツク海の約74%が海氷に覆われる(図1.3.2-1)。北海道のオホーツク海沿岸では、1月下旬に海氷が到来し、2月上旬に接岸する。その後、3月中旬から下旬にかけて離岸し、4月上旬から中旬には視界外に遠ざかる。

(2)オホーツク海の海氷の影響

オホーツク海の海氷は、太陽放射の反射、海洋から大気への熱・水蒸気輸送の遮断により、北海道オホーツク海沿岸の気候に影響を与えている。例えば、海面が流氷に覆われてくると、海面からの水蒸気の補給がなくなるため雲が発生しにくくなったり、海水の熱が大気に伝わらなくなるため気温が低くなるといった影響がある。
海氷の影響は気候だけではない。海氷の底面でプランクトンが繁殖し、流氷とともに南下することで豊かな漁場を形成していることや、海氷が波浪の発達を抑えて塩害を少なくしていること、更に近年盛んになった流氷観光など、海氷は北海道のオホーツク海沿岸の各種産業や生活に深く関わっている。
また、結氷時に生成される低温で高塩分の重い海水は、オホーツク海の中層から千島列島の海峡を抜けて北太平洋の中層全域に広がり、北太平洋亜熱帯域に広く分布する北太平洋中層水の起源となっているといわれている。

2 オホーツク海の海氷の監視

(1)診断に用いるデータ

気象庁では1970年から、毎年12月から翌年5月まで、沿岸の観測地点や船舶及び航空機による目視観測の結果と、人工衛星による観測結果をもとに、オホーツク海の海氷域を解析している。解析では、5日ごとの海氷の有無及び密接度(ある海域における海氷の占める面積の割合)を求めている。本診断では1970年12月から2013年5月までのデータを使用する。

(2)オホーツク海の海氷の長期変化傾向

図1.3.2-2は、積算海氷域面積(前年12月から5月までのオホーツク海全域の5日ごとの海氷域面積を積算した面積)と、各年(前年12月から5月)の年最大海氷域面積を1971年から時系列で示したものである。積算海氷域面積は、各年の海氷勢力の指標となる。
積算海氷域面積は1979年に最大値を記録した後、増減を繰り返しながら減少し、1996年に極小となった。その後、増加に転じて1998年から2003年まで6年連続で平年を上回り、2001年の積算海氷域面積は1979年と1980年に次ぐ第3位の大きさであった。その後5年連続して減少し、2004年から2013年までは2012年を除き平年を下回っている。2006年には最小値を記録し、2009年は第2位の小ささとなった。1971年からの傾向をみると、10年で平年値の7.2%程度の割合で緩やかに減少しているが、年々の変動の振幅の方が大きく、北極域の海氷域面積(「1.3.1 全球の海氷」参照)ほど減少傾向は明瞭ではない。
年最大海氷域面積も積算海氷域面積とほぼ同様に推移しており、1978年に観測開始からの最大(オホーツク海の98%)、1984年に最小(オホーツク海の55%)を記録し、2001年は1978年に次ぐ第2位の大きさとなった。1971年からの傾向をみると、10年で平年値の3.7%程度の割合で緩やかに減少している。

図1.3.2-2 オホーツク海の海氷域面積の経年変動(1971~2013年)

図1.3.2-2 オホーツク海の海氷域面積の経年変動(1971~2013年)

積算海氷域面積は前年12月から5月までの5日ごとの海氷域面積の合計値。最大海氷域面積は前年12月から5月までの5日ごとの海氷域面積のうちの最大値。水色の線は積算海氷域面積の変化傾向、橙色の線は最大海氷域面積の変化傾向を示す。平年値は1981~2010年の30年平均値。

図1.3.2-3は、月別積算海氷域面積(オホーツク海全域の5日ごとの海氷域面積を月ごとに足し合わせた面積)の平年差を標準偏差で割った(規格化した)値を示したものである。1971年以降の傾向をみると、すべての月に減少傾向がみられるが、12月~2月の減少の割合が3~5月と比べ大きく、1月の減少の割合が最も大きい。これらは、オホーツク海が結氷する時期(11月~2月頃)に海氷の生成や広がりが遅れる傾向が顕著であることを示している。
次に、北海道のオホーツク海沿岸にある網走での流氷の推移をみる。ここでいう流氷とはオホーツク海中・北部から北海道沿岸に南下してくる海氷を指している。網走では沿岸の海水が凍結してできる海氷はわずかであり、観測される海氷の大部分は流氷である。

図1.3.2-3 月別積算海氷域面積の平年差を標準偏差で割った(規格化した)値の経年変化(1971~2013年)

図1.3.2-3 月別積算海氷域面積の平年差を標準偏差で割った(規格化した)値の経年変化(1971~2013年)

破線は各月の変化傾向を示す。

図1.3.2-4は網走の流氷期間(流氷初日(初めて流氷が観測された日)から流氷終日(最後に流氷が観測された日)までの日数)と流氷初日・終日の平年差を示したものである。流氷期間は少しずつ短くなっている(10年あたり7日程度)が、長期的な変化に比較して年々の変動の振幅が大きい。流氷初日と流氷終日の推移をみると、オホーツク海全体では海氷の拡大が遅くなる傾向があるものの、流氷初日はほとんど変わっていない。一方、流氷終日は早くなっている(10年あたり4日程度)。
オホーツク海の海氷域面積と網走沿岸の流氷の関係をみると、積算海氷域面積(12月~5月)と流氷期間の相関係数は0.61である。また、1月の月別積算海氷域面積と流氷初日の相関係数は0.35、4月の月別積算海氷域面積と流氷終日の相関係数は0.34、となっておりいずれも相関関係ははっきりしない。

図1.3.2-4 網走の流氷期間・流氷初日・流氷終日の経年変化(1971~2013年)

図1.3.2-4 網走の流氷期間・流氷初日・流氷終日の経年変化(1971~2013年)

流氷初日・流氷終日の平年差が正の値のときは平年より遅いことを、負の値のときは平年より早いことを表す。


3 診断

1970年代の観測開始以降、オホーツク海の海氷域面積には緩やかな減少傾向があり、また、網走の流氷期間には短くなるという傾向がある。しかし、これらの長期的な変化よりも、海氷域面積については10年程度の周期の変動の振幅のほうが、また網走の流氷期間については年々変動の振幅のほうが大きく、北極域の海氷域面積のような明確な減少傾向ではない。このため、現段階では地球温暖化の影響の度合いを評価することは難しい。
オホーツク海と北極域の海氷域面積の変化傾向の違いは、オホーツク海の海氷の大部分がオホーツク海北部で生成され、それが風や海流に流されて南下する流氷であることによる。オホーツク海の海氷の分布は、気温だけでなく、風の状況に大きく左右されると考えられている(Kimura and Wakatsuchi,1999,2004)。実際、厳冬の海氷拡大期であっても、発達した低気圧の東側で吹く強い南東風によって海氷が押し戻されて海氷域面積が減少することがしばしばある。また、流氷の南下はサハリンの東を南下する東樺太海流によるところが大きく、オホーツク海全体の海氷域がかなり狭くても北海道沿岸の流氷域は平年並であることもある。
オホーツク海の海氷の総量がどのように変動しているかを把握するためには、氷厚のデータが必要である。Tateyama et al.(2002)により、人工衛星のマイクロ波放射計の観測値から氷厚を推定する技術が開発されているが、その検証のために必要な氷厚の現場観測は特定の期間・場所で得られているだけであり、オホーツク海全体の海氷の総量がどう変動しているかについての共通認識は現段階では得られていない。

参考文献

  • Kimura, N. and M. Wakatsuchi, 1999: Processes controlling the advance and retreat of sea ice in the Sea of Okhotsk. J. Geophys. Res., 104, 11137-11150.
  • Kimura, N. and M. Wakatsuchi, 2004: Increase and decrease of ice area in the Sea of Okhotsk: Ice production in coastal polynyas and dynamic thickening in convergence zones. J. Geophys. Res., 109. C09S03, doi:10.1029/2003 JC001901.
  • Tateyama, K., H. Enomoto, Y. Toyota and S. Uto, 2002: Sea ice thickness estimated from passive microwave radiometers. Polar meteorology and Glaciology, 16, 15-31.


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