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1.1.3 日本近海の海面水温

第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化
1.1.3 日本近海の海面水温の要約はこちら
平成25年12月20日

診断概要

診断内容

 日本周辺には、東シナ海、日本海やオホーツク海など陸地や島で囲まれた縁辺海があり、また太平洋側においても亜熱帯循環域や亜寒帯循環域に大きく分けられ、海面水温の上昇は一様ではない。ここでは日本近海を13海域に分け、それぞれの平均海面水温について、100年間にわたる長期変化傾向を診断する。

診断結果

 日本近海の13海域平均海面水温を加重平均した全海域平均海面水温(年平均)の上昇率は+1.08℃/100年で、世界全体で平均した海面水温の上昇率(+0.51℃/100年)よりも大きな値である。海域別にみると、黄海、東シナ海、日本海南部、四国・東海沖北部では日本の気温の上昇率(+1.15℃/100年)と同程度となっている。日本海北東部では、海域平均海面水温(年平均)に統計的に有意な長期変化傾向は見出せない。

海面水温の基礎知識

海面水温の基礎知識については、「第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化」の「1.1 海面水温 1.1.1 世界の海面水温」や「第2章 気候に関連する海洋の変動」の「2.2 日本近海の海洋変動 2.2.1 日本近海の海面水温」を参照されたい。

1 日本近海の海面水温の監視

(1)100年以上の期間にわたる日本近海の海面水温の解析

気象庁は、船舶から通報された海面水温を含む海上気象観測資料を品質管理して客観解析を行うことにより、1891年から現在までの100年以上にわたる1度格子の海面水温格子点データ(COBE-SST:Centennial in situ Observation-Based Estimates of the variability of sea surface temperature and marine meteorological variables - Sea Surface Temperature。COBE-SSTの詳細ついては「1.1.1 世界の海面水温」を参照されたい)(Ishii et al., 2005) を整備した。更に、このデータを用いて日本近海における100年あたりの海面水温上昇率を、+0.97℃/100年と見積もった(倉賀野ほか,2007)。
しかし、この海面水温格子点データは全球規模の気候変動の監視や数値モデルの境界値として用いることを目的としており、大きな空間スケールで解析されている。このため、日本近海の細かい空間スケールと海域特性に起因する海域ごとの海面水温の長期変化傾向の相違を診断するためには適切ではない。そこで、日本近海を海域特性に応じて区分し、それぞれの海域における現場観測データを使って海域平均海面水温を算出し、その上昇率を求めることとした。詳細は、高槻ほか(2007)を参照されたい。

ア 解析に使用するデータ

図1.1.3-1 年ごとの海面水温の現場観測データ数の推移

図1.1.3-1 年ごとの海面水温の現場観測データ数の推移(単位:1000通/年)

上図は全期間、下図は1890-1950年の期間を拡大したもの。

解析に使用するデータは、前述の海面水温格子点データ(COBE-SST)と現場観測データである。前者の空間解像度は緯経度1度、時間解像度は月平均値となっており、「海洋の健康診断表」 の定期診断表「海面水温の長期変化傾向(全球平均)」、「全球の海面水温の変動」、及び総合診断表の「1.1.1 世界の海面水温」は、これを用いて診断している。後者は、ICOADS(International Comprehensive Ocean and Atmosphere Data Set)(Woodruff et al., 2011)及び神戸コレクション(Manabe, 1999 ; 岡田・坂井, 2003)を中心とした歴史的な観測データ及び全球通信システム(GTS)を通じて収集された海上実況気象通報などから、北緯20~50度、東経110~160度の範囲の海面水温観測値を抽出したもので、2011年までの全データ数は約2050万通である。抽出されたデータ数の年別推移を図1.1.3-1に示す。1900年以前及び1945年を除く1942~1948年は年2万通未満であるが、第二次世界大戦前の1911~1941年は年5万通以上、1953年以降は年10万通以上のデータが得られている。

イ 海域区分

図1.1.3-2 海域区分と海域名称

図1.1.3-2 海域区分と海域名称

日本周辺には、東シナ海、日本海やオホーツク海など陸地や島で囲まれた縁辺海があり、また太平洋側においても亜熱帯循環域や亜寒帯循環域に大きく分けられることから、海面水温の変動傾向が類似している海域を抽出して海域区分を設定することとした。
このため、1951~2000年の50年間の海面水温格子点データを用いてクラスター解析を行った。クラスター解析の手法はウォード法(クラスター内の各点からクラスター重心点までの距離の二乗和が最小になるようにクラスターを分類する方法)を用いた。このとき、周期が1年以下の短期変動の影響を除くために、あらかじめ海面水温格子点データに12か月移動平均を施した資料を用いた。
クラスター解析の結果と、データの分布状況を考慮して、図1.1.3-2で示す13の海域を設定した。オホーツク海域は1960年代以前のデータ数が少ないため解析の対象外とした。

ウ 月平均の海域平均海面水温の計算

図1.1.3-3 日本近海の海域平均海面水温(年平均)の長期変化傾向(℃/100年)

図1.1.3-3 日本近海の海域平均海面水温(年平均)の長期変化傾向(℃/100年)

図中の無印の上昇率は統計的に99%有意な値を、『*』および『**』を付加した値はそれぞれ95%、90%有意な値を示す。上昇率が『[#]』とあるものは、統計的に有意な長期変化傾向が見出せないことを示す。統計期間は1900年から2012年。  

前節で設定した13個の海域を対象として、1900年から2011年までの月平均海面水温平年差を次の手順によって求めた。
まず、対象海域の現場観測海面水温データそれぞれについて、その観測日及び観測位置における海面水温格子点データからの偏差を求める。次に月ごと、1度格子ごとに偏差の平均値を求める。更に1度格子の偏差の平均値を対象海域全体で平均して、月平均の海域平均偏差とする。このようにするのは、海域内の現場観測海面水温データを単純に算術平均すると、それぞれのデータの観測日や観測点の偏りによってバイアス誤差が生じる可能性があるためである。
1941年以前の現場観測海面水温データには、観測手法の違いによる系統的な誤差があるため、ここでは、Folland and Parker(1995)による補正値を加えている。また気候値からの偏差が標準偏差の3.5倍を超えている観測データは除外している。1度格子内で観測値のばらつきが極端に大きい場合は現場観測海面水温データのもととなる海上実況気象通報などに立ち戻って品質管理を行った。なお、1度格子内の観測データが2通以下の場合は海域平均を算出する際に除外している。
このようにして求めた海域平均偏差に、海面水温格子点データの海域平均値を加えることで、月平均の海域平均海面水温とした。そして1981~2010年の30年平均値からの差を、月平均の海域平均海面水温の平年差とし、小数第2位までを海域平均海面水温とした。このようにして求めた1981~2010年の30年間の各月の平均値からの差を海域平均海面水温の月平均の平年差とし、小数第2位を四捨五入して小数第1位まで求めている。
また、13の海域平均海面水温を海域の面積に応じて加重平均した全海域平均海面水温を求めた。

エ 年平均及び季節平均の海域平均海面水温

図1.1.3-4 日本近海の海域平均海面水温(季節平均)の長期変化傾向(℃/100年)

図1.1.3-4 日本近海の海域平均海面水温(季節平均)の長期変化傾向(℃/100年)

図中の無印の上昇率は統計的に99%有意な値を、『*』および『**』を付加した値はそれぞれ95%、90%有意な値を示す。上昇率が『[#]』とあるものは、統計的に有意な長期変化傾向が見出せないことを示す。統計期間は1900年から2012年。

年平均の海域平均海面水温の平年差は、当該年に含まれる月平均の海域平均海面水温の平年差を平均することで求めており、その際、月平均の平年差が5か月以上算出されていることを条件とした。
季節平均の海域平均海面水温の平年差は、当該季節に含まれる月平均の海域平均海面水温の平年差を平均することで求めており、その際、月平均の平年差が2か月以上算出されていることを条件とした。
なお、日本近海における海面水温は、南西諸島を除いて2月下旬から3月下旬に最も低くなり、8月下旬から9月上旬に最も高くなることから、1-3月を冬、4-6月を春、7-9月を夏、10-12月を秋としている。

オ 上昇率の求め方と有意性の検定方法

年平均と季節平均の海域平均海面水温の平年差を一次回帰分析することにより、100年間あたりの上昇率を求めた。もとめられた長期変化傾向が統計的に有意であるかどうかの検定は、一次回帰分析による検定と母集団から大きく外れた値が含まれている場合やデータの無い期間の影響を受けにくい方法とされているMann-Kendallトレンド検定を用いた。この2種類の検定をそれぞれ1%、5%、10%の異なる3つの危険率について行い、有意性を判定した。本文中ではその有意性に応じて以下のような表現を使用した。2種類の検定において、どちらも危険率1%で統計的に有意な場合は、「上昇(下降)している」と表現し、同様に5%、10%で有意な場合はそれぞれ、「上昇(下降)傾向が明瞭に現れている」、「上昇(下降)傾向が現れている」と表現した。また、危険率が10%より大きい場合は、「変化傾向はみられない」と表現した。

(2)日本近海の海面水温の長期変化傾向

図1.1.3-3に日本近海の海域平均海面水温(年平均)の1900年から2012年までの長期変化傾向を示す。各海域における上昇率は、+0.63~+1.72℃/100年である。世界全体で平均した海面水温の上昇率は、+0.51℃/100年であり(気象庁,2013)、日本近海の海面水温の上昇率はそれよりも大きい。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告によると世界の年平均気温の長期変化傾向 は一様でなく、アジアの内陸部などで上昇傾向が大きい(IPCC,2007)。日本の年平均気温の上昇率(+1.15℃/100年(気象庁,2013))や日本近海の海面水温の上昇率は、この影響を受けている可能性がある。
季節別の上昇率は、釧路沖、日本海中部、黄海、東シナ海北部、東シナ海南部、四国・東海沖北部、関東の南では冬季に、日本海南部、先島諸島周辺、四国東海沖南部では秋季に最も大きくなっている。日本海中・南部、黄海、東シナ海、関東の南では夏季に最も小さくなっている(図1.1.3-4)。
以下に、海域ごとの変化傾向の特徴を述べる。

ア 北海道周辺・日本東方海域の変化傾向の特徴

図1.1.3-5a 北海道・日本東方海域の海域平均海面水温平年差(年平均)の長期変化

図1.1.3-5a 北海道・日本東方海域の海域平均海面水温平年差(年平均)の長期変化

青丸は各年の値、青太線は5年移動平均値、赤線は長期変化傾向を示す。
平年値は1981年~2010年の30年間の平均値。

北海道周辺・日本東方海域における海域平均海面水温(年平均)は、釧路沖では明瞭な上昇傾向が現れ(+0.98℃/100年)三陸沖で上昇傾向が現れている(+0.63℃/100年)(図1.1.3-3)。
図1.1.3-5に北海道周辺・日本東方海域の平均海面水温平年差の長期変化を示す。どちらの海域においても十年から数十年程度の時間規模の変動が大きい。北太平洋では、約20年周期で北太平洋中部(東日本周辺まで及ぶ広い範囲)の海面水温が高く(低く)なると、北太平洋東部や 赤道域で低く(高く)なるという自然変動現象(太平洋十年規模振動:PDO)がみられる(総合診断表「2.1.1北太平洋の海面水温・表層水温」参照)。北海道周辺・日本東方海域の海域平均海面水温の十年から数十年程度の時間規模の変動には、このような変動が大きく影響していると考えられる。
三陸沖では、1940年前後の欠測期を境に水温が上昇している。この傾向は、江ノ島(宮城県)や宮古の沿岸水温観測データにもみられる(高槻ほか,2007)。
季節別では、釧路沖の冬季の海面水温は上昇しており、釧路沖の春季、三陸沖の冬季、三陸沖の秋季では、上昇傾向が明瞭に現れている。(図1.1.3-4)  

イ 関東沖海域の変化傾向の特徴

図1.1.3-5b 関東沖海域の海域平均海面水温平年差(年平均)の長期変化

図1.1.3-5b 関東沖海域の海域平均海面水温平年差(年平均)の長期変化

青丸は各年の値、青太線は5年移動平均値、赤線は長期変化傾向を示す。
平年値は1981年~2010年の30年間の平均値。

関東沖海域における海域平均海面水温(年平均)は、関東の南で上昇しており(+0.96℃/100年)、関東の東では上昇傾向が現れている(+0.67℃/100年)。
図1.1.3-5に関東沖海域の平均海面水温平年差の長期変化を示す。関東の東の海域平均海面水温の変動は、関東の南にくらべて大きくなっており、十年から数十年程度の時間規模の変動がみられる。関東の東は黒潮続流の流域にあたり、黒潮の流路が北上すると黒潮系の暖かい海水の占める割合が増大し、海面水温は上昇する。関東の東の海域平均海面水温の変動には、黒潮流路の変動や(ア)で述べた太平洋十年規模変動が大きく影響していると考えられる。
一方、関東の南では、関東の東に比べ年々の変動幅が小さく、1960年代後半から1970年代にかけて低温期がみられ、1950年代前半と1990年代後半以降に高温期がみられる。また、1940年代の欠測期をはさんで、昇温がみられる。なお、この海域内に位置する八丈島の沿岸水温は、黒潮の変動の影響が強く、海域平均海面水温の傾向と異なる(高槻ほか,2007)。
季節別では、関東の南では全ての季節において海面水温が上昇しており、冬季の上昇率が最も大きい。関東の東では、秋季の海面水温に明瞭な上昇傾向がみられ、春季には上昇傾向が現れているものの、夏季と冬季には変化傾向がみられない。

ウ 日本海の変化傾向の特徴

図1.1.3-5c 日本海の海域平均海面水温平年差(年平均)の長期変化

図1.1.3-5c 日本海の海域平均海面水温平年差(年平均)の長期変化

青丸は各年の値、青太線は5年移動平均値、赤線は長期変化傾向を示す。
平年値は1981年~2010年の30年間の平均値。

日本海における海域平均海面水温(年平均)は、日本海中部(+1.72℃/100年)及び日本海南部(+1.26℃/100年)で上昇している。これらは、世界全体で平均した海面水温の上昇率(+0.51℃/100年)のおよそ2~3倍の大きさであり、特に日本海中部の上昇率は日本近海で最も大きな上昇率となっている(図1.1.3-3)。
日本全国の年平均気温の上昇率は+1.15℃/100年で、日本海南部の海域平均海面水温の上昇率とは同程度だが、日本海中部の上昇率は気温の上昇率より大きくなっている。
日本海中部で気温より上昇率が大きい理由はよくわかっていないが、ユーラシア大陸の中国東北部では、年平均気温の上昇率は約2℃/100年、冬季の気温の上昇率は約3℃/100年であることから、大陸の気温の上昇の影響を受けている可能性がある。また、海洋の循環(対馬暖流の流路や流量など)の変化や、海洋と大気の間の熱のやり取りの変化などの影響も考えられる。
図1.1.3-5に日本海の海域平均海面水温平年差の長期変化を示す。日本海北東部では、十年から数十年の時間規模の変動が大きく、特に1920年代の水温が高いことから、冬季を除いた各季節及び年平均において統計的に有意な長期変化傾向はみられない。1920年代の高温傾向は、この海域やオホーツク海に面した沿岸水温観測点の一部にもみられる(高槻ほか,2007)。しかし、冬季の海域平均海面水温は上昇している(図1.1.3-4)。
日本海中部や南部の海域平均海面水温は、1940年代の欠測期をはさんで昇温がみられる。また、20年程度の周期の変動がみられる。日本海中部の海域の夏季の海面水温は、他の季節とは異なって年々の変動が大きい。この海域の平均海面水温は、海域に近接する地点の沿岸水温や地上気温と比較すると、夏季は相関が高く、秋季や冬季は相関が低い傾向があるが、冬季は表層の貯熱量や対馬暖流の勢力との相関が高い。これは、夏季は冬季に比べ海洋表層の混合層が浅くなり、海面水温に大気の状態が反映されやすいことの現れと考えられる(高槻ほか,2007)。
季節別では、日本海中部及び日本海南部で、夏季を除くどの季節においても海域平均海面水温が上昇しており、夏季においても上昇傾向が現れている。また、日本海中部では冬季、日本海南部では秋季に上昇率が大きくなっており、日本海中部における季節別の上昇率は冬季(+2.40℃/100年)、春季(+1.79℃/100年)、秋季(+1.99℃/100年)において、日本近海の季節別の上昇率の中で最も大きな値となっている(図1.1.3-4)。

エ 日本南方海域の変化傾向の特徴

図1.1.3-5d 日本南方海域の海域平均海面水温平年差(年平均)の長期変化

図1.1.3-5d 日本南方海域の海域平均海面水温平年差(年平均)の長期変化

青丸は各年の値、青太線は5年移動平均値、赤線は長期変化傾向を示す。
平年値は1981年~2010年の30年間の平均値。

日本南方海域における海域平均海面水温は上昇しており、上昇率は、四国・東海沖北部で+1.24℃/100年、四国・東海沖南部で+0.74℃/100年である(図1.1.3-3)。 これらは、世界全体で平均した海面水温の上昇率(+0.51℃/100年)より大きくなっている。
四国・東海沖北部の海域平均海面水温(年平均)の上昇率は、日本の気温の上昇率(+1.15℃/100年)と同程度だが、四国・東海沖南部の海域の上昇率は日本の気温より小さい。その理由はよくわかっていないが、四国・東海沖南部から低緯度のフィリピンの東にかけての海域でも、海面水温の上昇率が本州周辺海域に比べて小さい傾向にあることから、緯度帯の違いが関係している可能性がある。また、他の海域に比べると大陸から離れていることも影響している可能性がある
図1.1.3-5に日本南方海域の海域平均海面水温平年差の長期変化を示す。日本南方海域では、日本東方海域、関東の東、日本海に比べ年々の変動幅が小さい。1960年代後半から1970年代にかけて低温期がみられ、1950年代前半と1990年代後半以降に高温期がみられる。四国・東海沖北部では、1940年代の欠測期をはさんで、昇温がみられる。
季節別にみると、四国・東海沖南部の春季を除くどの季節においても海域平均海面水温が上昇しており、その上昇率は四国・東海沖北部では冬季に、四国・東海沖南部では秋季に最も大きくなっている(図1.1.3-4)。

オ 九州・沖縄海域の変化傾向の特徴

図1.1.3-5e 九州・沖縄海域の海域平均海面水温平年差(年平均)の長期変化

図1.1.3-5e 九州・沖縄海域の海域平均海面水温平年差(年平均)の長期変化

青丸は各年の値、青太線は5年移動平均値、赤線は長期変化傾向を示す。
平年値は1981年~2010年の30年間の平均値。

九州・沖縄海域における海域平均海面水温(年平均)は上昇しており、その上昇率は黄海で+1.20℃/100年、東シナ海北部で+1.22℃/100年、東シナ海南部で+1.15℃/100年、先島諸島周辺で+0.71℃/100年である(図1.1.3-3)。黄海と東シナ海の上昇率は、世界全体で平均した海面水温の上昇率(+0.51℃/100年)と比べ2倍以上大きい。
黄海と東シナ海の海域平均海面水温は日本の気温の上昇率(+1.15℃/100年)と同程度だが、先島諸島周辺では日本の気温よりも小さな上昇率となっている。先島諸島周辺で日本の気温の上昇率より小さい理由はよくわかっていないが、先述の四国・東海沖南部と同様に、先島諸島周辺からフィリピンの東にかけての海域で海面水温の上昇率が本州周辺海域に比べて小さい傾向にあることから、緯度帯の違いが関係している可能性がある。
図1.1.3-5に九州・沖縄海域の海域平均海面水温平年差の長期変化を示す。南方の海域ほど変動幅が小さい傾向があり、黄海を除く3つの海域で、1930~1940年頃に低温、1940~1950年のデータ欠損の後、1950~1960年にはかなりの変動(昇温、降温、昇温)があり、その後しばらく横ばいが続き、1990年代から高温期となる。黄海では、10~20年程度の周期が明瞭で、1910年頃に極小、1920年頃に極大、1940~1950年に昇温の後、1960年頃に極大、1970年頃に極小、1980年代以降高温期となっている。石垣島の沿岸水温は、先島諸島周辺海域と比べ、1930年以前は沿岸水温のほうがやや低いが、相関が高く、長期変化傾向もよく一致している(高槻ほか,2007)。
季節別では、黄海の夏季を除くどの季節や海域においても海面水温が上昇しており、黄海の夏季においても上昇傾向が現れている。黄海及び東シナ海では、冬季に上昇率が最も大きく、先島諸島周辺では秋季に上昇率が最も大きくなっている(図1.1.3-4)。

2 診断

日本近海における、2012年までのおよそ100年間にわたる海域平均海面水温(年平均)は上昇しており、その上昇率は+1.08℃/100年である。
北海道周辺・日本東方海域における1900年から2012年までの海域平均海面水温(年平均)は、釧路沖では明瞭な上昇傾向が現れ、三陸沖では長期的には上昇傾向が現れているが、数年から数十年の周期の変動もみられ、1950年から1980年代半ばにかけては下降傾向がみられる。
関東沖海域における海域平均海面水温(年平均)は関東の南で上昇しており、その上昇率は+0.96℃/100年である。関東の東では上昇傾向が現れている。
日本海における海域平均海面水温(年平均)は上昇しており、その上昇率は、日本海中部で+1.72℃/100年、日本海南部で+1.26℃/100年である。日本海北東部では、海域平均海面水温(年平均)に統計的に有意な長期変化傾向は見出せないが、冬季(1-3月)の海域平均海面水温は上昇しており、その上昇率は+0.79℃/100年である。
日本南方海域における100年間にわたる海域平均海面水温(年平均)は上昇しており、その上昇率は、四国・東海沖北部で+1.24℃/100年、四国・東海沖南部で+0.74℃/100年である。
九州・沖縄海域における海域平均海面水温(年平均)は上昇しており、その上昇率は、黄海で+1.20℃/100年、東シナ海北部で+1.22℃/100年、東シナ海南部で+1.15℃/100年、先島諸島周辺で+0.71℃/100年である。
日本近海における海域平均海面水温(年平均)の上昇率は、世界全体で平均した海面水温の上昇率(+0.51℃/100年)より大きく、特に日本海や四国・東海沖北部、先島諸島近海を除く九州・沖縄海域では、およそ2~3倍となっている。また、日本海中部の上昇率は日本近海で最も大きく、日本海南部、四国・東海沖北部、黄海、東シナ海の上昇率は、日本の気温の上昇率(+1.15℃/100年)と同程度となっている。
2007年2月に公表されたIPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書(IPCC,2007)は、世界全体で平均した気温や海面水温の上昇傾向は明白であり、人為起源の温室効果ガスによる地球温暖化の影響が現れている可能性が非常に高い(90%を超える確率で高い)ことを指摘している。日本周辺海域における海面水温にも地球温暖化の影響が現れている可能性があると考えられる。しかし、評価している領域が狭いことから、自然変動の影響を受けやすく、海面水温の上昇が必ずしも全て温暖化の影響といえる訳ではない。

参考文献

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  • 気象庁,2013 : 気候変動監視レポート2012.93pp
  • 倉賀野連・楳田貴郁・栗原幸雄・桜井敏之,2007:歴史的データを用いた日本近海の海面水温の長期変化傾向の把握:測候時報,第74巻特別号,S19-S31
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