日本沿岸の海面水位の長期変化傾向

2019年2月15日発表

気象庁地球環境・海洋部

診断(2018年)

日本沿岸の海面水位は、1980年代以降、上昇傾向が見られます。1906~2018年の期間では上昇傾向は見られません。また、全期間を通して10年から20年周期の変動(十年規模の変動)があります。
海面水位変動図

日本沿岸の海面水位変化(1906~2018年)
1981~2010年の平均を0としています

検潮所地図1 検潮所地図2

日本沿岸で地盤変動の影響が小さい検潮所を選択しています。1906年から1959年までは4地点(左図)、1960年以降は16地点(右図)の検潮所を選択しています。1906年から1959年までは、地点毎に求めた年平均海面水位の平年差を4地点で平均した値の推移を示しています。
1960年以降については、日本周辺をⅠ:北海道・東北地方の沿岸、Ⅱ:関東・東海地方沿岸、Ⅲ:近畿~九州地方の太平洋側沿岸、Ⅳ:北陸~九州地方東シナ海側沿岸の4海域に分類(右図)し、海域毎に求めた年平均海面水位の平年差の平均値の推移を示しています。グラフは、1981年から2010年までの期間で求めた平年値を基準としています。青実線は4地点平均の平年差の5年移動平均値、赤実線は4海域平均の平年差の5年移動平均値を示します。青破線は4地点平均の平年差の5年移動平均値を後半の期間について求めた値で、参考として示しています。
忍路、柏崎、輪島、細島は国土地理院の所管です。
東京は1968年以降のデータを使用しています。
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の影響を受けた函館、深浦、柏崎、東京、八戸は、2011年以降のデータを使用していません。

データの見直し等により、年あたりの上昇率および数値データが変更される場合があります。

(2016年診断から解析に利用するデータを歴史的潮位資料に変更し、併せて過去の潮位データの見直しを行いました。)


解説

日本沿岸の海面水位は、1980年代以降、上昇傾向が見られます。1906~2018年の期間では上昇傾向は見られません。また、全期間を通して10年から20年周期の変動(十年規模の変動)があります。2018年の日本沿岸の海面水位は、平年値(1981~2010年平均)と比べて44mm高い値でした。
また、1960~2018年までの海面水位の変化を海域別に見た場合、北陸~九州の東シナ海側で他の海域に比べて大きな上昇傾向がみられます。

十年規模の変動については、主に北太平洋の偏西風の強弱や南北移動を原因としていることが数値モデルを用いた解析により明らかになっています。 また、海面水位の変動と表層水温の変動には良い対応がみられ、特に南西諸島で良く一致しています。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)第5次評価報告書(2013年)は 「世界平均海面水位の平均上昇率は、1901~2010年の期間で1年あたり1.7[1.5~1.9]mm、1971~2010年の期間で1年あたり2.0[1.7~2.3]mm、1993~2010年の期間で1年あたり3.2[2.8~3.6]mmであった可能性が非常に高い。」としています。
IPCC第5次評価報告書とほぼ同じ期間で日本沿岸の海面水位の変化を求めると、1906~2010年の期間では明瞭な上昇傾向は見られませんでした。一方、1971~2010年の期間で1年あたり1.1[0.6~1.6]mmの割合で上昇し、1993~2010年の期間で1年あたり2.8[1.3~4.3]mmの割合で上昇しました。近年だけで見ると、日本沿岸の海面水位の上昇率は、世界平均の海面水位の上昇率と同程度になっています。
ただし、日本沿岸の海面水位は、地球温暖化のほか地盤変動や海洋の十年規模の変動など様々な要因で変動しているため、地球温暖化の影響がどの程度現れているのかは明らかではありません。地球温暖化に伴う海面水位の上昇を検出するためには、地盤変動の影響も含めて引き続き監視が必要です。

ここで、大括弧[ ]内に示した数値は、解析の誤差を考慮した見積もりを表します。


参考文献

  • IPCC, 2013: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change.

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