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地球温暖化とオゾン層の回復

  大気中のオゾン層破壊物質の濃度は、国際的な生産や消費の規制の効果により現在緩やかに減少しており、 成層圏オゾンも徐々に回復していくと考えられています(基礎的な知識「オゾン層保護の取り組みとオゾン層の今後の見通し」参照)。 しかし、オゾン層の破壊は、オゾン層破壊物質の濃度だけでなく、成層圏の大気の状況にも依存します。 温室効果ガスの増加によって地球温暖化が進むと、大気中における熱放射バランスの関係から成層圏では気温が低下することが知られています。 オゾン層破壊の化学反応は気温が低くなると反応速度が遅くなるため、成層圏における気温の低下は成層圏のオゾン量を増加させ、オゾン層の回復が早まるように働きます。

  世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が2011年に公表した「オゾン層破壊の科学アセスメント:2010」では、 化学-気候モデル注)のシミュレーション結果から、温室効果ガスの増加に伴って成層圏の大気循環が強まることが予測されたと解説しています。 そのため、熱帯域では対流圏から成層圏への物質輸送が増えることにより熱帯下部成層圏のオゾン量が減少し、 その他の緯度帯では、上部成層圏の熱帯域で生成されたオゾンの輸送量が増えることにより下部成層圏のオゾン量が増加すると考えられます。 化学-気候モデルの予測結果によると、世界平均の大気中のオゾン層破壊物質濃度が1980年のレベルまで減少する時期は21世紀の半ば頃だと予測されていますが、 世界平均のオゾン全量の回復時期は温室効果ガスの効果によってそれよりも早くなると予測しています。 一方、オゾンホールとして知られる南極上空のオゾン層破壊については、温室効果ガスの変動による影響は小さく、オゾン層の回復は21世紀半ば以降になると考えられています。

将来のオゾン(世界) 将来のオゾン(南極)
将来のオゾン(キャプション)
図1 化学-気候モデルによるオゾン全量と成層圏塩素量の長期変化
 化学-気候モデルによって解析・予測された1960~2100年のオゾン全量と成層圏塩素量の推移を、世界平均(左上図。年平均値)および南極域(右図:10月の平均値)について示しています。 縦軸は1960年のレベルを基準とした偏差で表しており、1980年の値および将来予測における1980年代と同レベルの値を図中の●で示しています。
 なお、「成層圏塩素量」は、厳密には予測モデルの中での下部成層圏(高度21km付近)における無機塩素(Cly)と無機臭素(Bry)の混合比の和を示しています。 ただし、臭素原子の破壊効率は塩素原子よりも大きいので、無機臭素の混合比に60倍をかけて換算しています。(出典:「オゾン層破壊の科学アセスメント:2010」(WMO, 2011))

  また、2014年に公表された「オゾン層破壊の科学アセスメント:2014」によると、大気中のオゾン層破壊物質の濃度が現在よりも減少すると予想されている21世紀後半において、 二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)等の温室効果ガスがオゾン層の回復に及ぼす影響が大きくなると解説しています。 CH4やN2Oの増加は成層圏の気温の低下だけでなくオゾンの生成・消失の化学反応にも影響を与えるため、 CO2やCH4の増加はオゾン層の回復を早めますが、N2Oの増加はオゾン量を減少させ、オゾン層の回復を遅らせると説明しています。

温室効果ガスの影響
図2 温室効果ガスの増加がオゾン全量に及ぼす影響
 オゾン層破壊物質と温室効果ガスが1960~2100年の世界平均のオゾン全量に及ぼす影響について、数値モデルによって解析・予測された結果を示しています。 この数値モデルでは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のSRESシナリオ(A1B)に基づいた温室効果ガスの濃度を用いています。 縦軸は1960年のレベルを基準とした偏差で表しており、温室効果ガスの影響についてはCO2、CH4及びN2Oの各ガス種による影響についても示しています。 (出典:「オゾン層破壊の科学アセスメント:2014」(WMO, 2014))

注)化学-気候モデルでは、放射過程、化学反応過程、大気による微量気体の輸送過程などのプロセスの複雑な相互作用をコンピューター で計算することにより世界のオゾン量を求めています。オゾンの予測計算には、オゾン層破壊物質の将来シナリオと、CO2、CH4、N2O等の将来シナリオに基づいた濃度が含まれており、 オゾン層破壊物質に加えて温室効果の影響も調べることができます。 「オゾン層破壊の科学アセスメント:2010」で示されたオゾン層の将来予測は、複数の研究機関の化学-気候モデルによる結果に基づいたものです。



参考文献

  • WMO(2011), Scientific Assessment of Ozone Depletion:2010, Global Ozone Research and Monitoring Project-Report No.52.
  • WMO(2014), Scientific Assessment of Ozone Depletion:2014, Global Ozone Research and Monitoring Project-Report No.55.

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